上原は巨人の救世主となれるか!? メジャーでのピッチングの秘密を探る
先発、中継ぎ、抑えをすべて経験し、2013年には世界一にも輝いたメジャーリーガーの凱旋に、巨人のみならず日本のファンは大きな期待を寄せる。
メジャーでの9年を経て上原はどんな投球を見せてくれるのか。今回は、17年のカブスでの投球をトラックマンデータから分析していく。
2球種のみで勝負
MLBが運営している『baseball savant』上でデータが確認できるが、17年に投球された球種は4球種であったものの、上原自身は2シームの投球を否定しており、本稿では2シームを除いて分析を進めていく(表1)。
では、なぜ140キロの4シームが打たれないのか。回転数とボール変化量の観点から秘密を探る。
遅くても伸びる4シーム
球速とホップ成分は比例関係にあるが、140キロ付近の球速帯に一度ホップ成分の大きな山ができている。この異常な傾向を作っている投手の一人は上原に他ならない。
落差の「小さい」スプリット
しかし、上原のスプリットは意外にも平均より「落ちない」ボールなのだ。
しかしながら、高い空振り率を誇るスプリットにはある秘密がある。
「ヤンキース時代の松井秀喜さんに言われたんですが、僕のストレートとスプリットは途中まで同じ軌道なので、どうしても的を絞りきれないと」(『Sports Graphic Number』924号より)
松井氏が感じたように、上原の4シームとスプリットは、途中まで同じボールに見えるのだ。
近年、メジャーリーグでは打者が球種の違いを認識しづらいような変化球の組み合わせを意識している。上原はその意識が広まる前から自然と技術を身につけていたのだろう。
リリースポイントの位置にも注目
しかし、タイミングがつかみにくいという観点においては、エクステンションが短いフォームも武器になりうる。上原のエクステンションは、メジャーリーグ平均より約20センチも短い。上原のような「球持ち」の短いフォームは、打者からするとボールが突然投球されるように錯覚するのだ。
懸念もあるが…
一方、懸念材料が一つある。メジャーリーグでは、「球速が遅く、ホップ成分が大きい」というミスマッチで打者を困惑させていた。しかし、日本では平均球速が遅く、メジャーリーグのように「動くボール」を投球する投手が少ない。日本の打者がホップ成分の大きな4シームに慣れているとすると、メジャーリーグの打者ほど困惑させることができないかもしれない。ホップ成分が大きいボールは、フライ打球になりやすく、長打の危険性も含んでいる。
しかし、上原には4シーム以外にも武器がある。独特なフォームから繰り出されるスプリットをうまく組み合わせれば、武器である4シームも威力を増し、日本でも活躍が期待できるだろう。
昨年巨人は11年ぶりにBクラスに沈んだ。上原はメジャーでの経験を生かし、救世主になってくれるに違いない。いち野球ファンとして、上原の投球を今かと待ちわびている。
■上原浩治分析まとめ
・球速は遅いがホップ成分が大きい4シーム
・決め球スプリットは「4シームと同じ」に見えるボール
・エクステンションの短いフォームで打者を困惑させる
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