期待高まるカネロvs.ゴロフキンの再戦 因縁決着が“ミドル級世界大戦”の口火に
成長曲線と下降曲線が入れ替わる時となるか
カネロとしては下降曲線が見られるゴロフキンをここで上回りたいところ 【Getty Images】
一方、当初はアイドル的に売り出されたカネロは一戦ごとに確実に成長し、次戦ではミドル級の身体にも適応してくるはずだ。
そんな状況下で迎える再戦では、両者の描く成長と下降の曲線がどこで交わるかがポイントか。個人的には27歳のカネロは9月までリマッチ挙行を待ち、勝利の可能性を上げるべきと考えていた。しかし、結局はダイレクトでの再戦が決まったのは、GBPが“この成長度なら5月までにゴロフキンを追い抜ける”とみなしたからに違いない。
その目論見通り、今が全盛期のカネロがよりメリハリのある攻防を展開し、世代交代を果たすのか。一方、第1戦ではボディ打ちの少なさが解せなかったゴロフキンが、適切な適応を行ってくるか。両雄が戦い方にマイナーチェンジを施しそうなリマッチは、より激しい戦いになり、ドラマチックな結末を迎える可能性も十分にある。
“階級最強対決”と断言できない群雄割拠
WBO王者ビリー・ジョー・サンダース(奥)など、ミドル級は群雄割拠の時代となっている 【Getty Images】
WBO王者ビリー・ジョー・サンダース(イギリス)、元WBA王者ダニー・ジェイコブス(米国)、元IBF世界スーパーウェルター級王者ジャマール・チャーロ(米国)、WBA正規王者・村田諒太(帝拳)、元WBA、WBO世界スーパーウェルター級王者デメトリアス・アンドレイド(米国)、IBF指名挑戦権セルゲイ・デレビャンチェンコ(ウクライナ)……など。
名実ともに備えた役者がこれだけそろった階級はそれほど多くはない。そして、ゴロフキン、カネロというトップ2に迫るほどの評価を得る多くのライバルたちは、今春にそれぞれリング登場する。
昨年12月にデビッド・レミュー(カナダ)を鮮やかにアウトボクシングして見せたサンダースは、4月14日にマーティン・マレー(イギリス)と4度目の防衛戦を行う。最近は豪快なKOを連発した上でミドル級に上がってきたチャーロは、4月21日にウーゴ・センテノ・ジュニア(米国)とのWBC暫定王者決定戦に出場予定(注・この試合は当初は3月3日に組まれたが、センテノの故障で延期)。また、昨年3月にゴロフキンに大善戦したジェイコブスは、4月30日にマチェイ・スレッキ(ポーランド)とのノンタイトル戦を予定する。
この中から誰がゴロフキン対カネロ再戦の勝者への有力なチャレンジャーに浮上するか。列強たちにとって、ただ勝つだけではなく、内容が問われる大事なオーディション・ファイトであることは言うまでもあるまい。
日本の期待を一身に背負う村田が、4月15日にエマヌエーレ・ブランダムラ(イタリア)と初防衛戦を行うことも忘れてはいけない。WBA正規王者というタイトルに突っ込みを入れたがるファンも存在するが、この王座獲得で“ムラタ”の名前がミドル級の勢力地図に載ったのは紛れもない事実。今はまだ実力証明の時間だが、今後にエキサイティングな形で防衛を重ねれば、今年末〜来春あたりに世界的な注目を集めるテストマッチの声がかかっても驚くべきではない。
前記通り、ゴロフキン対カネロ再戦はもはや“階級最強対決”とは断言できないのかもしれない。ただ、少なくともビジネス面で、現時点で彼らこそが太陽のような存在であり、周囲の惑星たちを明るく照らしているのは間違いない。そして、第2グループの中から誰が最も大きな輝きを放ち、次のメガイベントにコマを進めるか。米国、メキシコ、イギリス、カザフスタン、日本……。国際色豊かな強豪たちによる“ミドル級世界大戦”がまもなく本格的に始まる。そのビッグファイトシリーズが、ファンを歓喜させるものになる予感が確実に漂っている。