“レブロン時代”を印象付けた夢の球宴 息詰まる攻防戦、久々に戻ってきた興奮

杉浦大介

変化をもたらしたのはシステム変更ではなく……

システムの変化は選手たちに意識の改革を促したが、あくまでそれはきっかけにすぎない 【Getty Images】

 一風違ったやり方で選手たちの意気込みをあおる試みが成功したのか、オールスターゲームは明らかに内容が向上した。アデトクンボ、ジョエル・エンビード(フィラデルフィア・76ers)の強烈なブロック、レブロンとデュラントの精力的なディフェンスを始め、守備面のハイライトも頻発。去年まで4年連続で合計得点記録を更新中だったが、今年は前年比で計111点も減少したことがその変化を物語っている。

「僕とステフ(カリー)がキャプテンになってドラフトを実施するなんて、これまでにはなかったこと。僕たちのコミッショナー(アダム・シルバー)は新しい試みを受け入れてくれる。それが彼の素晴らしいところ。新フォーマットは選手やリーグにとってだけでなく、ファン、関わる全員にとってうまく機能したと思う」

 そう語ったレブロンをはじめ、オールスター後には多くの選手たちが新たなフォーマットの導入を称賛した。この抜本的な変化と、勝利チームへの配当金が昨季までより1人あたり5万ドル(約530万円)もアップしたことが、ゲーム内容に影響した部分は確かにあったのかもしれない。しかし、これはあくまで筆者個人の意見だが、今戦に関してはシステム変更そのものが決定的な違いを生み出しただとは思わない。

 制度刷新は選手たちに意識改革を促すきっかけになったにすぎない。今回の最大の変化は、レブロン、デュラント、カイリー・アービング(ボストン・セルティックス)をはじめとするトッププレーヤーたちの意気込みが、当初から違っていたこと。特にレブロンはイベント開始前から“好ゲームを見せたい”という気持ちを隠さずに語り、ゲーム中もチームメートを盛んに鼓舞していた。勝利を目指す思いの強さが本物だったことは、まるでプレーオフで勝ったかのようだった試合終了直後の喜び方に象徴されている。

レブロンのコート内外での影響力は今がピーク!?

レブロンは今回の活躍で、選手としても全盛期に近い支配力を保っていることをアピールした 【Getty Images】

“常にスーパースターを中心に動く”と言われるNBAでは、リーグを代表する選手の動きに周囲は確実に追随する。ナンバーワンプレーヤーが必死で走り、勝利を目指せば、チームメートも続かずにはいられなかった。他ならぬレブロンがそんな流れを作ったがゆえに、NBAオールスターの興奮は久々に戻ってきたのだろう。

 今季のNBAでは、デュラント、カリー、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンという“ビッグ4”を擁するウォリアーズが4年間で3度目の優勝に最も近いところにいることに変わりはない。シーズンMVPはジェームズ・ハーデン(ヒューストン・ロケッツ)が最右翼とされ、アービング、アンソニー・デイビス(ニューオリンズ・ペリカンズ)といった新たな主役たちも台頭している。

 また、アデトクンボ、エンビードのような次代のベストプレーヤーたちも順調に成長し、ファンを楽しませている。このように、時代の移り変わりを感じさせる要素は少なからずある。ただ、例えそうだとしても、少なくとも現時点で、NBAがやはりレブロンを中心に動いていることに異論のある関係者は少ないだろう。

 オールスター直前にはレブロンのドナルド・トランプ大統領への批判的な発言がFOXニュースのアンカーに酷評され、球宴前日に「僕と家族にとっても重要だから黙ってはいない」と冷静に応戦するシーンもあった。このようなやり取りは、レブロンの社会的な存在感の大きさを物語る。それと同時に、今回のオールスターでの活躍で、選手としても全盛期に近い支配力を保っていることを、あらためてアピールしてみせた。

 いつしか32歳になったレブロンだが、コート内外での影響力は現在がピークかもしれない。今も昔もオールスターは“世代を映す鏡”だと言われる。だとすれば、18年の球宴は、NBAは依然として“レブロンの時代”の中にいることをあらためて印象付けたイベントだったと言っても大げさでなかったはずだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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