“レブロン時代”を印象付けた夢の球宴 息詰まる攻防戦、久々に戻ってきた興奮

杉浦大介

レブロンの存在感が浮き彫りになったゲーム

自身3度目のMVPを受賞したレブロン。息詰まる攻防戦に終止符を打ち、チームを勝利に導いた 【Getty Images】

「ロサンゼルス(LA)はオールスターを開催するには完璧な場所だ。200カ国以上からメディアが集まり、世界中の人たちがこの週末の一部になり、試合を観るためにやって来る。みんなが良い週末を過ごせたのならうれしいよ。僕と僕の家族も楽しみ、最高の週末になった」

 2018年のNBAオールスターゲームを終え、レブロン・ジェームズ(クリーブランド・キャバリアーズ)は晴れやかな笑顔でそう振り返った。その言葉と佇まいはリーグナンバーワンプレーヤーの貫禄が十分。エンターテインメントの都であるLAでのオールスターは、実際に大都会らしい華やかな盛り上がりを見せた。同時に今回の“夢の球宴”は、レブロンの存在の大きさがあらためて浮き彫りになった舞台でもあった。

 現地時間2月18日。ステイプルス・センターで行われたオールスター本戦は、近年まれに見る好ゲームとなった。最終クオーターの最後の4分半は、常に5点差以内の大接戦。勝者が読めず、ファンも席から立てない緊張感のある展開は、今年のオールスターに向けてNBAがまさに待望した流れでもあった。

 そんな中でも、目立ったのはやはりレブロンだった。自らがキャプテンを務めるチーム・レブロンが115−122とビハインドを負っていた残り9分でコートに戻ると、“選ばれし男”はゲーム最終盤の6分36秒で28−12のランを演出する。

 残り1分30秒で同点のスリーを沈めると、その約1分後には今度は逆転のレイアップに成功。ついに3点のリードを奪うと、最後はケビン・デュラントとのキラー・ディフェンスでステフィン・カリー(共にゴールデンステイト・ウォリアーズ)にショットを打たせなかった。エキジビションとは思えないほどの息詰まる攻防戦に終止符を打ち、チームを148−145の勝利に導いた。

今年は「ドラフト制」の新システムを導入

今季から「ドラフト制」が導入され、カリー(写真)とレブロンがそれぞれのキャプテンに就任 【Getty Images】

 29得点、10リバウンド、8アシストというオールラウンドゲームで魅了したレブロンは、2006年以来、3度目のオールスターMVPを受賞。特に勝負どころでのプレーには、攻守両面でゲームを支配できる怪物の魅力が散りばめられていた。

「嫉妬させられるよ。レブロンのような選手を指導できるタイ(キャブズのタロン・ルーHCの愛称)に嫉妬してしまう。彼の素晴らしさは誰もが知っている。トロントに戻ったら、できるだけ彼に勝てるよう努力するつもりだ。だが今夜はわれわれのチームの選手だった。彼を指導できるのは喜びだ」

 チーム・レブロンを率いたドウェイン・ケイシーHC(トロント・ラプターズ)のそんな言葉も、この日は大げさには聞こえなかった。普段はライバルチームの大黒柱である選手を率いている60歳のコーチも、そのすごさをあらためて思い知らされたのだろう。

 ここまで読んできて、今回のオールスターが両カンファレンスの選手が入り乱れたチーム構成で行なわれたことを怪訝(けげん)に思った人もいるかもしれない。

 近年のオールスターの内容悪化に業を煮やし、NBAは今季からイースタン・カンファレンス対ウェスタン・カンファレンスという従来の方式を撤廃。代わりにファン投票で1位になった2人がキャプテンになり、選出された24人の中からカンファレンスを考慮せずに選手を指名していくという「ドラフト制」が採用された。

 今年はレブロンとカリーがキャプテンに就任。この新システム導入の結果として、レブロンとデュラント、カリーとヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)といったカンファレンスを超えたドリームデュオが実現するに至った。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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