羽生結弦がSP後に語った“感謝” ファンや仲間、スケートを滑れる幸せに

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皆が待ちわびていた羽生の演技

羽生の見事な演技後、会場は感動のスタンディングオベーションが沸き起こった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 会場が揺れるくらいの大歓声に、張り詰める緊張感。羽生結弦(ANA)の演技直前、場内は異様な空気に包まれた。前回のソチ五輪王者にして、現世界チャンピオン。負傷からの復帰戦となる羽生の演技を皆が待ちわびていた。

 ショートプログラム(SP)『ショパン バラード第1番ト短調』の美しい旋律に乗り、羽生はゆっくりと動き出す。冒頭のジャンプは4回転サルコウ。GOE(出来栄え点)で2.71点がつくクリーンなジャンプだった。スピンを経て、演技後半に入るとトリプルアクセル、4回転+3回転トウループもきれいに着氷する。特にトリプルアクセルはGOEで満点となる3.00点がつく見事なジャンプだった。最後のスピンこそレベル3だったが、演技が終わる前から拍手が鳴り響き、フィニッシュポーズを決めた瞬間にスタンディングオベーションが沸き起こった。無数の『くまのプーさん』人形が投げ入れられる中、羽生は手をたたきながら、リンクをおりていった。

 電光掲示板に表示された得点は自己ベストに迫る111.68点。両手でガッツポーズをした羽生は、連覇が懸かる平昌五輪の男子SPを首位で終えた。

柔和な笑みを浮かべることも多く

「自分の体が覚えている」羽生は3つのジャンプを全て成功 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 演技後、ミックスゾーンに現れた羽生は「ようやく日本語を喋れる」と笑顔を見せた。それまで多くの外国メディアに囲まれ、そのたびに英語で答えてきたことで、脳内が少し疲れたのだという。まずは自身の演技を振り返る。

「今朝、曲かけのときに(4回転)サルコウを失敗してしまって、若干の不安はありました。でもその調整法も含めて、ケガで練習できない間に論文などでいろいろ勉強してきたので、そういうものが出せてよかったと思います。今日はブライアン(・オーサーコーチ)やジスラン(・ブリアンコーチ)もいたし、何より久しぶりに皆さんの声援を聞くことができて、やっぱり帰ってきたんだなと思いました。スケートを滑れる幸せを試合で味わえたのが良かったです」

 現地入りして以降、羽生はつき物が落ちたかのように、柔和な笑みを浮かべることが多かった。質問に答える口調も穏やかで、優しく語りかけるかのように話す。「スケートを滑れるのが楽しい」。それはやはり昨年11月のNHK杯直前に負ったケガも影響しているのだろう。そこから試合はもちろん、リンクにさえ立てない日々が続き、スケートは見ることしかできなかった。年明けに氷上練習を始め、トリプルアクセルを跳び始めたのが、今からわずか3週間ほど前。4回転ジャンプはさらにその後だった。

 そうした状態でも、SPでは3つのジャンプすべてを成功させた。羽生はその要因を「(練習で本数を跳べていなくても)自分の体が覚えていると思いましたし、サルコウもトウループもアクセルも何年間も付き合ってきたジャンプなので、感謝しながら跳んでいました」と語る。

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