巨人・野上の“せっこいピッチャー”願望 「投手って実はやることが多いんです」
移籍1年目の目標は「2ケタ勝利&優勝」
けん制やフィールディングなど、日産自動車時代に培われた技術が今も生きているという 【写真=BBM】
──ジャイアンツは3年間、リーグ優勝から遠ざかっています。V奪回、日本一返り咲きは唯一にして最大のターゲットですが、野上選手が請われた理由、求められる役割をどうとらえていますか。
僕は1年間先発ローテーションを守ることだと考えています。守っていれば、結果もついてくると思っているので。エース・菅野(智之)がいて、田口(麗斗)がいて……、僕は4〜6番手で1年間頑張ります。3〜6番手をしっかりしておけば、そのチームは強いですから。その一角をしっかり守りたいと思います。
──ちょっと控えめにも感じますが、確かに重要なポジションですね。「1年間、ローテーションを守る」ということでは、野上選手は12年から6年連続で20試合以上に登板し、先発では18試合以上に投げています。野上選手を語る上で外せない特徴ではないでしょうか。
ローテーションを守るということは、ライオンズ時代もずっと意識していた部分ではあります。でも、僕は普通のピッチャー。特にこれといって誇れる特徴はありません。ただ、僕ね、“せっこいピッチャー”になりたいんですよ。
──せっこいピッチャーですか?
守備だったり、けん制だったり、ピッチングの方で調子が悪くてもできることはあるので、そういうことをちゃんとやりたいんです。
──ただ投げるだけではない、と。
そうなんです。いいボールを投げるだけがいいピッチャーではないと思うので。嫌なタイミングでけん制を入れてみたり、それを繰り返したり。“間”とか、ゲームの中での駆け引きもそう。実はやることが多いんですよ、ピッチャーって。いろいろな技術を駆使して、最終的にゼロで抑えればいい。そうやってトータルで勝負できるピッチャーが理想です。
──それが“せっこいピッチャー”に込められた意味ですね。まるで精密機械のように当たり前のことを確実にこなす。
日産自動車(社会人時代の所属チーム)がそういう教えなんです。例えばテンポを速くしろとか、練習ではけん制とフィールディングを徹底的にやる。
── 一発勝負の社会人ですから、ある意味、プロ以上に勝利にシビアな世界です。
勝つためにどうするか、厳しいチームでした。ほかのチームの人には、「日産とは練習試合もやりたくない」とよく言われました。「グラウンドに入ると空気が違う」と。実際、強いチームで、高いレベルで細かな技術をたたき込まれました。高卒で日産に入っているので、その年齢のときに身に付けられたのは大きい。プロに入っても生きていますし、今も大切にしているスタイルというか、日産時代があったから、今があると思っています。
──交流戦などでの経験から、セとパの野球の違いをどう考えていますか。
セ・リーグの方が、変化球が多いように感じます。
──となると、攻め方、考え方も変わる。
変化球が必要だからそういう特徴が出ているんだと思うので、やっていく中で適応はしていかなきゃいけないんですが、でも、あんまり変えたくないですね。真っすぐあっての変化球なので。変化球、変化球の攻めでは少しキツイ。そのあたりの配分は、キャンプが進む中で、キャッチャーやコーチとコミュニケーションを取りながら、対応していきたいと思います。
──あらためて新天地1年目でのターゲットを教えてください。
2ケタ勝ちたいですね。先発をしているピッチャーならみんな、目標にすると思いますが、とにかく勝ちたい。そして優勝したいです。
──このオフ、キャンプはどのようなテーマを持って臨んでいるのですか。
何か新しいことに取り組んでいるわけではありません。今持っているもののレベルアップですね。何年か前に球種を増やそうと思ってシュートを練習したんですが、結局ダメで。今ある力を伸ばしたほうが良いという結論に至ったので、ベースアップがテーマです。
(取材・構成=坂本匠)