W杯で見せてほしい吉田豊の“ケツ力” 日本代表にこの選手を呼べ!<鳥栖編>

サカクラゲン

新シーズンはキャプテンに任命、必要不可欠な選手に

18年シーズンは鳥栖のキャプテンに任命された吉田。常にサッカーに対して前向きで努力を怠らない 【(C)J.LEAGUE】

 彼にこの企画の話をすれば「いやー、自分はまだまだです!」と答えるに違いない。続けて「でも、とてもうれしいですし、そうなるように頑張ります」と言うだろう。吉田豊は謙虚ではあるが、常にサッカーに対して前向きで努力を怠らない選手なのである。

 2018年シーズンは、サガン鳥栖のチームキャプテンに任命された。それだけ責任感を持ち合わせているし、プレーでそれを見せてきたので当然のことかもしれない。ある取材で、「今年のチームをまとめるにあたってのポイントは?」と聞かれて、答えを発するまでに5分間の沈黙を作ったことでも吉田の慎重さが分かる。

 プレーは熱く、人望もあり、冷静さを持つ彼を「日本代表に推薦したい選手」だと思っているのは、筆者だけではないはずだ。鳥栖サポーターならば、誰もが感じていることだろう。

 それだけではない。筆者が吉田を強く推したい理由の1つに、左右のどちらでも正確なキックを蹴れるということがある。2015年に清水エスパルスからの完全移籍が決定した際には「ときどきミスキックをするサイドの選手」だと教えてもらったが、鳥栖に加入後はそれを一切感じさせることなく、ひたすらサイドの役割をこなす選手に成長。今や鳥栖には欠かせない存在になっている。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ日本代表監督には、ぜひ彼のプレーを見てもらいたい。惜しみない運動量でサイドを走り続け、奥深くまで切り込んでクロスを上げるかと思えば、切り返してゴールに向かい、猛然とドリブルを仕掛ける選手がこれからの代表では必要だと思う。大柄な選手が多い世界の強豪を相手にした時、吉田のプレースタイルが有効であることは間違いない。ワールドカップ(W杯)ロシア大会の左サイドは、吉田に任せてもいいはずである。

鳥栖サポーターしか知らない!? 吉田の持つ“ケツ力”

小柄な吉田が大柄な相手選手に立ち向かえるのは、鳥栖サポーターしか知らない“ある力”によるところが大きい 【(C)J.LEAGUE】

 170センチに満たない身長(168センチ)ながら、大柄な相手に立ち向かえる実力があるというのは、キック精度に左右差がないことも大きな理由だが、もう1つ鳥栖のサポーターしか知らないパワーを持っていることが挙げられる。

 それは“ケツ力”(筆者は勝手にそう呼んでいる)を持っているからである。吉田の腰から大腿二頭筋にかけての部分は、とにかく硬い。それは筋力トレーニングで鍛え上げているのではなく、サッカーのスポーツ特性から作り上げられた“ケツ力”である。

 身長の低い選手が大柄の選手を相手に体を張る場合は、重心を低くして相手選手のプレーエリアに潜り込んでしまうことが望ましい。そのためには、体全体を支えるバランスと相手のパワーを受け止める“ケツ力”が必要となるが、常日頃からのトレーニングの中で鍛え上げられた吉田の“ケツ力“は、日本人プレーヤーが世界を相手に戦うために必要な要素ともいえる。

 繰り返すが、どんなに鍛えても“ケツ力”だけが強くなるわけではなく、常日頃から相手のプレーエリアを意識してトレーニングすることで強化される“チカラ”なのである。吉田のこれまでの努力の賜物(たまもの)であり、サッカー選手の勲章でもある。この努力の賜物を、サッカー界最高峰の舞台であるW杯で誇示してほしい。

 日本代表は、コロンビア代表との初戦を皮切りにセネガル、ポーランドと予選を戦い決勝トーナメント進出を目指す。高くて強くてうまい選手がそろっている対戦相手だが、吉田のプレースタイルならば、間違いなく相手の自由を奪い日本に流れを引き寄せることができるだろう。パワー対パワー、テクニック対テクニックの戦いでは、これまでの日本サッカーは結果を出せていない。必ず勝てる戦術もあるはずがない。ならば、個人対個人で相手の自由を奪い、優位な時間帯をできるだけ多く作って、少ないチャンスを決めて勝つしかないだろう。

 吉田のプレースタイルには、これからの日本サッカーをけん引する大事なものが詰まっているはずだ。
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著者プロフィール

サッカーライター・サッカー解説者。中学1年生よりサッカーを始める。福岡市社会人リーグでは、主にFWとして活躍。その後、社会人リーグのチーム監督を務め、2001年に福岡市長杯3位の成績を収める。日本サッカー協会公認コーチ資格、審判資格も取得し選手育成に力を注ぐ。これまでに福岡県協会女子連盟トレセンU-12、U-15を指導。2004年には福岡県U-18女子代表コーチに就任。2010年には福岡Jアンクラス(Lリーグ)のサテライトチーム監督に就任。2011年からは、福岡県社会人サッカーリーグ選抜監督に就任し、福岡県社会人リーグの強化に努める。ライターとしてJリーグ公式サイト「J ’sGOAL」や「週刊サッカーダイジェスト」「週刊サッカーマガジン」「EL GOLAZO」など多数の専門誌に寄稿。スカパーでの中継ではサガン鳥栖やアビスパ福岡ホーム戦解説を担当するなど多才に活躍中。

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