“湘南スタイル”を象徴する4選手 日本代表にこの選手を呼べ!<湘南編>

隈元大吾

攻守にわたって存在感を示す秋野と岡本

今季から背番号10をまとう秋野。昨季は攻守にわたって存在感を示した 【(C)J.LEAGUE】

 曹貴裁(チョウ・キジェ)監督の指揮の下、湘南ベルマーレは昨季、2014年に次ぐ2度目のJ2リーグ優勝を果たした。曹監督体制で4季目のJ1を戦う湘南からは4選手をハリルジャパンに推薦したい。

 昨シーズンに柏レイソルから期限付き移籍で加入した秋野央樹は、序盤こそ先発を外れる経験をしたものの、それを糧とし、1年を通して中盤で攻撃の手綱を取った。成長したい、前への推進力を高めたいと志し、低い位置でゲームをコントロールするのみならず、機を捉えた攻撃参加でリーグ戦4ゴールをマークした。さらに成長は攻撃面だけにとどまらない。ハードなトレーニングと仲間との切磋琢磨(せっさたくま)を通じて球際を鍛え、1対1でボールを奪ったり、自陣ゴール前で体を張ったりと、その存在感は攻守にわたって増した。今季は背番号10を纏(まと)う。

CBだけでなくウイングバックとしてもプレーした岡本。昨季を通してチームの勝利に貢献した 【(C)J.LEAGUE】

 16年シーズンに浦和レッズから期限付き移籍で加入した岡本拓也は、その年のJ2降格の責任を胸に昨季、湘南で2年目のシーズンを迎えていた。ディフェンスでの1対1の強さに加え、後ろから仲間を動かし、チームで守る術(すべ)を深め、攻撃面でのプレーの幅も広がった。時に味方を追い越し、時にドリブルで持ち上がるなど、チームのゴールへの推進力を加速させた。合わせてポジションの幅も広げ、センターバック(CB)だけでなく、ウイングバックを担い、得点やアシストを記録するなど攻撃の仕上げにも加わった。何より、けがでなかなか全メンバーがそろわぬ苦しい台所事情の中で、チームの勝利に対する責任感を、よりいっそうたくましくした。

高い戦術眼を持つ菊地、U−18日本代表でも活躍した齊藤

けがによる長期離脱もあった菊地だが、その決定力は年月を重ねるごとにすごみを増している 【(C)J.LEAGUE】

 J2降格を経験した16年、トレーニング中に右膝前十字靭帯を損傷し、シーズンの大半をリハビリに費やした菊地俊介は、昨季主将を務めた高山薫がけがで離脱すると、キャプテンマークを巻いてピッチに立った。やがて肉離れを負い、およそ5カ月戦列を離れたが、それでもチーム2位の8得点をマークしたように、その決定力は年月を重ねるごとにすごみを増している。走力を備え、CBやボランチ、近年はシャドーを担う機会も増えた。ポジションを幅広くカバーする柔軟性は、元来備える高い戦術眼の裏付けといえよう。チームを第一に考えるマインドとともに、的確にポジショニングを取り、シンプルかつ最善のプレーを選び取る判断力も得難い。

U−18日本代表では背番号10を託された齊藤。物おじしない性格で、世界で戦う資質を持っている 【(C)J.LEAGUE】

 この1月に19歳になったばかりの齊藤未月は昨季、シーズンを通してゲームに関わりリーグ戦30試合に出場した。豊富な運動量を備え、球際に強くボール奪取に秀でる。昨秋モンゴルで開催されたAFC U−19選手権予選ではU−18日本代表のキャプテンを託され、10番を背負った。チームでタイトルを獲得した経験や、年代別日本代表で得たものは小さくないだろう。まだまだ粗削りながら、今季は相手の懐(ふところ)でボールを持った時にも落ち着きを漂わせている。年齢に関係なく、言うべきことは臆せずに発する、良い意味で物おじしない内面を含め、世界に伍するうえで欠かせぬ資質を携えている。

紹介した選手たちがトップ4というわけではない

“湘南スタイル”の象徴として挙げた4人のプレーをぜひ、その目で見てほしい 【(C)J.LEAGUE】

 ここに挙げた彼らが優れた選手であることは間違いないが、湘南のトップ4という意味ではない。“湘南スタイル”と呼ばれる、攻守にアグレッシブな姿勢の奥に息づくサッカー選手として向き合うべきベースの部分――球際や切り替え、走ること――を曹監督の指導の下、湘南の選手たちは皆等しく、日々育んでいる。

「試合に多く出ている人たちと、あまり試合に出てない人たちの実力の差はないと思うし、紅白戦をやっていても差が出ない。気を抜くと、すぐに足をすくわれることは試合に出ている選手も分かっている。出ていない選手も、自分が良ければチャンスが回ってくることが分かっているから、練習の温度は毎日すごく高い」

 ある時、岡本がそう口にしたように、すなわちチームとして大切にしているスタイルや成長の象徴として、彼ら4選手をここに挙げた。湘南のサッカーと、自分たちのスタイルを織りなす1人1人の躍動を、日本代表監督にはぜひその目で見てほしいものだ。
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著者プロフィール

湘南ベルマーレを中心に取材・執筆。クラブオフィシャルの刊行物をはじめ、サッカー専門誌や一般誌等に幅広く寄稿。

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