スノボとフィギュアのジャンプを語る 【対談】藤森由香×小塚崇彦 後編
スノーボードとフィギュアの共通点でもあるジャンプについて、藤森由香と小塚崇彦さんが語り合った 【坂本清】
対談の後編は、ジャンプに関するややマニアックなトークから、競技の魅力や未来についてまでお届けする。特に後者については、2人が熱い思いを語ってくれた。
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ジャンプの高さはビルの上の方まで!?
ジャンプの滞空時間は約2秒。藤森も慣れるまでは怖かったという 【Photo by Laurent Salino/Agence Zoom/Getty Images】
藤森 ダイナミックに大きなジャンプを跳ぶところですかね。先日、大会があって、それは街中でやるビッグエアという、一つのジャンプ台で採点して、点数を競うものなんですけれど、その街中でやるジャンプというのは普通のスキー場と形状が違うのでけっこう難しいんです。上から落ちていく感じがすごく恐いんですけど、慣れたら気持ちよく跳べるので、それがこの競技の楽しいところだと思います。
小塚 すごく高いですよね。
藤森 そうですね。ホテルのビルの上の方まで上るんですよ。そこから一直線に降りてジャンプするので、最初は怖いです。
小塚 滞空時間はどれくらいあるのですか?
藤森 大きくて2秒とか。
小塚 2秒もあるんだ!
藤森 その中で何回転もします。
小塚 フィギュアは跳んでいるのが0.6秒〜0.7秒くらい。
藤森 その短さの中であれだけ回るというのはすごいですよね。
小塚 でも2秒跳んでいる恐怖心に比べたら……。それこそジェットコースターのふわっと落ちていくあれが何もない状態で行われる。プラス回転しながらとか……。
藤森 上がって下がるから、両方で1秒1秒くらいですかね。
小塚 なんか想像するとぞっとします(笑)。
0.6秒〜0.7秒の間に体が反応する
フィギュアの滞空時間は0.6秒から0.7秒ほど。その間に「体が勝手に反応する」と小塚さんは語る 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
小塚 もう怖さはないですけど、跳んだら降りているという感じですね。もちろん軸が歪んだら、少し戻したりはしますけど。
藤森 えっ、空中でできるんですか?
小塚 頑張って、体をひねったりしながら体勢を戻すんですけど、ほとんどもう跳ぶ瞬間には決まっていますね。
藤森 ですよね。スノーボードも一緒です。
小塚 タイミングが合わなかったりすると、回転不足で降りてしまうとか、または逆に力が入り過ぎると回り過ぎるので、0.6秒とか0.7秒の間にいろいろと体が勝手に反応している感じですね。何か考えている余裕はないです。軸が左に曲がったから右に戻そうとか瞬間的に戻している。
藤森 私はちゃんとしたジャンプを跳べているときは何も考えてないんですけど、ちょっとテイクオフで力が逃げてしまったときに「うわぁ、届くかな」とか、「跳び過ぎた」とか、「どうしよう」と思いながら着地でのリカバリーのことを考えたりします。
小塚 回転数を少なくしたりはしますか? 「これは高さが足りないだろうな」という感覚があったときに、無理やりそのまま回して行っちゃうか、それとも演技変更したり。
藤森 しますね。たとえばビッグエアの場合は、1つのジャンプだからいいんですけど、スロープスタイルはだいたい3つくらいあって、その間にレールと呼ばれる手すりのようなものがあるんですね。そういう小さなジャンプも入ってくるので、予定が狂うし、そのときはとっさにやるしかないです。回転数が余ってしまったときが一番怖くて、回してしまえばいいんですけど、回したらだいたい軸が違うんですよ。1周回るのと1周半回るのとのでは軸が全然違います。ですから、オーバーさせるとほとんど転ぶ。だから止める方がいいかな。
小塚 そういうときは体を締めている状態?
藤森 もう腹筋で止める(笑)。
小塚 えっ、腹筋で止める?
藤森 そう、腹筋で回転と違う方向にひねって止める、という感じで止めています。
小塚 ひねり戻すという感じ?
藤森 そう! 戻す。
小塚 足だけ戻す?
藤森 うんうん、それもやります!
――その感覚は分かるんですね。
小塚 なんとなく分かるような気がします(笑)。
藤森 逆の方向に力を働かせて打ち消す感じです。