ウインタースポーツを普及させるために 【対談】皆川賢太郎×小塚崇彦・前編
現在は全日本スキー連盟の競技本部長を務める皆川賢太郎さん(左)と、元フィギュアスケーターの小塚崇彦さんが、ウインタースポーツの普及について語り合った 【赤坂直人/スポーツナビ】
一方、元フィギュアスケーターの小塚崇彦さんは、2010年のバンクーバー五輪で8位入賞、11年の世界選手権で銀メダルを獲得するなどトップ選手として名を馳せた。15年の全日本選手権を最後に競技生活から退いたあとは、プロスケーターとして活躍するかたわら、所属するトヨタ自動車や日本オリンピック委員会(JOC)の活動に参加するなど、スポーツの普及に取り組んでいる。
立場は違えど、ウインタースポーツを普及させたいという気持ちは一緒。平昌五輪が間近に迫った今、2人に競技が抱える課題について語ってもらった。
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2人が考える普及活動の重要性
「スキー連盟でも普及は重要だと考えている」という皆川さん。全競技の管理を行っている 【赤坂直人/スポーツナビ】
皆川 スノーボードも含め6競技14種目ありますが、全競技を自分が管理しています。予算管理や人事も僕の仕事になります。
――小塚さんは競技を引退されてから2年近くたちます。現在メーンにしている活動は何でしょうか?
小塚 今はスケート教室などの普及活動をメーンにやっています。ただ、フィギュアスケートだけではなく、今後はスポーツ全体の普及活動に携わっていければいいなと考えています。一つの競技だけでは人気の波があると思うので、いろいろな競技と手を組んでやっていきたいです。
先日は、パラ卓球やボッチャなどを体験してきました。今、2020年に向けて、パラリンピック競技の体験会がけっこう行われていて、そういうところに顔を出して、実際に自分も経験をしています。僕はJOCのオリンピックムーブメントアンバサダーもしていますので、まずは競技を知ることによって、その選手たちがどういうふうに競技に向かっているのかを知るところからがスタートだと思っています。
皆川 普及という意味では、スキー連盟には競技というグループ体と、教育というグループ体があります。教育のグループ体は人に資格を渡すということをやっていて、8万5000人以上の会員にはもっと分かりやすい資格制度や普及を促進できるように、マーケティングとしてもスキー連盟の普及分野に携わらせてもらっています。
小塚 やはり普及をしないと競技人口が減っていき、トップ選手が出にくくなる。フィギュアスケートも現在は注目されているので、今のうちに見てもらうだけでなく、やってもらうことがすごく大事だと思っています。
通年化という課題
フィギュアスケートはシーズンオフにアイスショーがあるため、夏にも興行ができている 【坂本清】
皆川 減っていますね。冬にウインタースポーツをやるのは以前はブームでしたが、文化にはならなかった。要は定着人口じゃない人まで昔はやってくれましたが、その人たちがいなくなったという感じです。僕らはなるべく定着人口を増やしたいのですが、なかなかバブルのときのようにはいかないです。
――ウインタースポーツは通年化が課題になると思います。
皆川 スケートは通年化できますよね。
小塚 できます。室内競技なので不可能ではないのですが、リンクの数で言うと少しずつ減ってきている。それこそ同じように定着していないですね。今はブームなので来てくれていますけど、その人たちが今は小学生や中学生で、ある程度、滑れるようになっていたら、大人になったときに、子どもを連れてまた来てくれると思うんです。それが一周ぐるっと回るまで待たないといけないと思います。
皆川 お互いあるものとないものがあって、僕らはどちらかというとやっている人は多いけど、見るスポーツにはなってはいない。でもフィギュアスケートは完全に興業として成り立っている。一方で、リンクの数と皆さんが滑るかどうかというのは同じハードルなのだろうなと思います。
小塚 どの競技を見ても、そういう得手不得手なところは絶対あると思うので、それをうまく手をつないでやっていくべきだと個人的には考えています。
皆川 スケートは夏も普通に興行ができますよね。
小塚 アイスショーはけっこう週末ごとに行われていて、そこにもたくさんのお客さんが来てくれます。本当に興業として成り立っていますね。見に来てくれた人がついでに氷の上に乗ってくれたらいいなと僕は思っています。スケート教室をそのまま開催しているアイスショーもあります。
皆川 日本ではどこがメジャーな地域なのですか?
小塚 東京、大阪、名古屋はすごくメジャーですね。あとは荒川静香さんや本田武史さん、羽生結弦くんが拠点としていた仙台もメジャーです。安定して福岡や岡山もスケートリンクがあります。やはり滑れる環境のあるところがメジャーになりやすいです。