注目の清宮は新人王争いの大穴候補 パ・リーグ注目のルーキーを探る

永松欣也

昨秋のドラフトでは7球団が指名した日本ハム・清宮。1年目からどれぐらいの数値を残すのだろうか!? 【写真は共同】

 2018年のペナントレースへ向けて、いよいよ2月1日からプロ野球キャンプが各地で始まる。今回は、チーム力を底上げするルーキーたちに注目した。

 ドラフトの超目玉・清宮幸太郎(早稲田実)に7球団の指名が集中した昨年のドラフト会議。指名された全114名(育成指名32名含む)の中から今年のペナントレースで使える選手は誰なのか? 新人王候補は一体誰なのか? 昨秋と同じく、お馴染みのお三方、西尾典文氏(野球ライター)、福田豊氏(日刊スポーツ所属)、小関順二氏(野球ライター)に集まっていただき、各球団の指名などを振り返ってもらった。

 まずは見事に清宮を引き当てた北海道日本ハムはもちろん、2球団競合の田嶋大樹(JR東日本)を引き当てたオリックス、清宮を外しながらも外れ1位で3球団競合した安田尚憲(履正社)を引き当てた千葉ロッテなど、注目選手が集まったパ・リーグの指名から。

ソフトB、吉住1位は育成に自信

ソフトバンクの1位は長身右腕の吉住。育成に自信があるソフトバンクらしい指名となった 【写真は共同】

――まずは昨年のドラフト会議を振り返っていただき、簡単な総括をお願いします。

西尾 やっぱりパ・リーグの方がいいですね。毎年そんな気がしてるんですが(笑)。注目は高校生の野手3人、清宮、中村奨成(広陵)、安田だったと思うんですけど、清宮は日ハム、安田はロッテに行きましたし。他の候補を見ても、社会人ナンバーワン左腕の田嶋もオリックスですし、やっぱりパ・リーグはどこも攻めた、いい指名をしたなという印象です。

小関 「超Aクラス」という選手がいたのでそこに指名が集中して、抽選で外すとその後遺症が残るなという印象です。福岡ソフトバンクの指名などはそれが顕著ですけど。外れ、外れ、外れ1位の吉住晴斗(鶴岡東)の投球も動画サイトで見たんですけど、投げ方は2年の時よりも良くなっていますけど、右バッターの内角に全く投げられないピッチャーなので、投手としてまだ幼い。あれは時間がかかると思いますね。「超Aクラス」の清宮を獲れた日本ハムと、外れ1位で競合の末に安田を獲れたロッテは、その後の2位指名以降も迷いなく指名ができたと思いますね。やっぱり抽選で外し続けた球団はかなり苦しい指名だったなという感じです。

福田 やっぱり清宮を獲れた日本ハムですね。1位で彼を獲れたか獲れなかったかで天と地のようなドラフトでしたからね。7球団競合でしたよね? やっぱりどこもそれくらい彼を欲しかったんだなと。

――ではここからは球団別に伺います。まずはパ・リーグの上位球団から。優勝したソフトバンクからお願いします。清宮を外し、安田、馬場(皐輔/仙台大)と外しての1位指名が吉住ですが、この1位指名をどのように見ていますか?

小関 完成度も伴ってこその順位だと思いますので、やはり1位ではないなと思いますね。3位くらいだったら「うん、わかるわかる」という感じだったと思うんですけど。かなり未完成だし。球は速いですけどね。でも球が速いなんて……今はどこにでもいますからね。

――前回のドラフト前に行われたこの座談会でも吉住投手は全く名前が出てきませんでしたね。

西尾 1位指名を聞いてびっくりしましたけどね。一瞬ポカンとしちゃいましたけど、しばらくして「あーあの!?」って思い出しました(笑)。吉住は正直、指名があっても下位か育成かなと思ってました。

福田 スポーツ新聞の場合、大体事前にどこの球団が誰を1位指名して、外れ指名の予想は誰かって載せるんですけど、吉住はどこの新聞も予想してなかったですね。

西尾 村上宗隆(九州学院)、馬場とかは1位候補で名前が出てましたけどね。

福田 ソフトバンクは育てる力に自信があるのかどうかわかりませんけど、こういう未完成のピッチャーを獲得して育ててみようじゃないかという、一種のチャンレジというか。これですごいピッチャーになったらソフトバンクの育成力、スカウトの見る目はすごいなってなるだろうし。それだけの自信があるっていうことなんでしょうね。

小関 ソフトバンクはこの10年で、結構1位、2位の指名失敗してるんですよね。成功してるのは東浜巨(12年1位/亜細亜大)、武田翔太(11年1位/宮崎日大)、森唯斗(13年2位/三菱自動車倉敷オーシャンズ)くらいなんですよ。巽真悟(08年1位/近畿大)から始まり、加治屋蓮(13年1位/JR九州)、高橋純平(15年1位/県立岐阜商)、田中正義も(16年1位/創価大)もまだ出てきませんしね。意外と千賀滉大(10年育成4位/蒲郡)や石川柊太(13年育成1位/創価大)といった育成指名の選手が頑張って投手陣の底上げをしてるんですよね。あとは外国人投手の人選を間違えてないというのも大きいですね。だからこんなドラフト指名をしていても、あんな強力な投手陣が作れるんだなって逆に思ってしまいますね。これでドラフト上位指名も失敗しなかったらとんでもないチームになりますよ(笑)。

西尾 ソフトバンクは吉住を普通に3位くらいで獲るつもりだったんじゃないですかね?

小関 担当スカウトの作山(和英/東北地区担当スカウト)さんが1位指名に驚いたって言ってたくらいですからね(笑)。

田浦は早い1軍登板もある!?

今年のソフトバンクのルーキーの中では、左上手からのチェンジアップを武器に1番早い1軍デビューがあるかもしれない田浦。 【写真は共同】

――2位以下の指名はどうでしょうか? 2位の高橋礼(専修大学)、4位の椎野新(国士舘大)といった大学球界の実力派投手も獲得していますが。

西尾 この2人もどちらかというと未完の大器といった部類の選手たちですよね。高橋は変則型で、椎野も時間がかかると思いますね。スケール重視の指名のような、即戦力とは全然考えてないんじゃないですかね。現状のチームに即戦力はいらないから、いないタイプの投手をということで獲ったんじゃないですかね。5位の田浦文丸(秀岳館)も含めて。

小関 高橋は昨秋に見て良くなっているなと思いましたね。それまでは全然ダメで、もう自分の中ではドラフト候補の対象から捨ててたんです。変に人気だけあるなっていう選手で(笑)。でも昨年の秋に見たときに、これはもう確実に指名されるなって思いましたね。

福田 秋に評価を上げましたよね。大学が二部に落ちてなかなか目立たなかったんですけど、スカウトも最後までマークしてて、良くなって手応えがあったっていうね。

――ということは2位という指名順位は妥当な評価といっていいですかね?

西尾 ちょっと高いかな(笑)

福田 アンダースローという希少価値も込みでじゃないですか。

小関 牧田(和久/サンディエゴ・パドレス)みたいにカーブがあればいいんですけどね。

福田 遅い球で空振りがとれるようになればいいんですけどね。別に140キロとか投げなくていいと思うんですよ。

小関 最速141キロとかですよね?

福田 アンダースローにしては早い方ですよね。そんなにいらないと思うんですよね。130キロくらい出れば十分だと思うんですよね。

小関 スピード云々はちょっと違うなって思いますよね。

福田 前はそういうピッチングでしたよね、下級生の頃は。空振りとかよくとっていましたよね。

西尾 2年の春がすごく良かったですよね。大学ジャパンにも選ばれて。あれからどんどん悪くなっていって、最後に復活して。

福田 ジャパンの合宿の時はすごかったよね? みんな三振して。

西尾 全然打てなかったですよね。

小関 フォアボールが多いですけどね。

西尾 外に引っ掛けるようなボールが多いですよね。右バッターの内に来ないっていう。

――他に育成も含めて、これはという選手はいますか?

小関 田浦は面白いんじゃないですかね。結構球も速いでしょ? なんとなくチェンジアップに逃げている感じがすると思うんですけど、もともと148キロくらい投げてるし。緩急がうまく使えるようになれば、意外と一番早く出てくるのは田浦じゃないですかね?

西尾 チェンジアップは魔球ですよね。U−18の時は三振とりまくってすごかったですよね。タイプ的には濱口(遥大/横浜DeNA)に通じるものがあると思います。背は大きくないですけど、ボールも早くて馬力もあって。こっちの方がよく5位まで残ってたなと思いますね。3位くらいでどこかに指名されると思ってましたけど。

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著者プロフィール

1976年、大分県速見郡生まれ。サラリーマン生活を経て30歳からWEBスポーツ界へ。多くのスポーツサイトの企画・編集、ディレクションなどを経てフリーランスに。現在はWEBディレクションと並行して、少年野球、高校野球関連サイトの企画・編集・監修も務めている。

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