Vリーグの新たな潮流を感じた金曜の夜 サントリーがホームゲームイベントを開催

月刊バレーボール

担当者が語る、ナイトゲームの狙い

多くの観客が見守ったこのナイトゲームの狙いとは? 【月刊バレーボール】

 この日がサントリーにとっては、17−18シーズン最後のホームゲームだったため、“集大成”と位置づけ、構想は進められたという。発案から企画、そして実現に至るまで中心となって尽力した、サントリーサンバーズ事務局の佐別當賢治氏が振り返る。

「ナイトゲームに関しては、昨シーズンの序盤から熱望しており、試合前のライブ実施は昨シーズンの終わりごろから、実現したいと思っていました。今シーズンに向けては、昨年の3月くらいから動き出し、4月にはアンリミによるライブが決定、そのほかの企画実現に向けても着々と進めていました」

 チーム単位で音楽アーティストとコラボし、試合会場でライブを実施すること自体が新鮮だ。佐別當氏は「アンリミをきっかけに足を運んでいただき、バレーボールを好きになってもらう。その逆があっても、うれしいですね」と話す。

 また、Vリーグの試合は「週末の昼間」に催されるのが通例。今回は「平日の晩」に開催されたわけだが、それは「休日に来られない方でも、仕事帰りに職場関係の友人を誘って気軽に足を運んでいただき、お酒を飲みながら楽しんでもらう」(佐別當氏)ことが狙いだった。会場を訪れた方たちの声から伺えるように、狙いは的中したといえるだろう。

 ほかにも、プロジェクションマッピングによる選手紹介の演出は、通常のVリーグの会場では味わえない「異空間」を演出し、観客をよりワクワクさせるものだった。現在、サントリーのホームゲームに関するトータルプロデュースを行い、今回のナイトゲームでも現場で各種イベントに携わったOFFICE IGNITION代表取締役の高森てつ氏は、このように語る。

「お客さんの数はもちろんのこと、演出も含めて、今シーズン行ったショーの中では1番のものでした」

まわりの人たちの理解と協力があってこそ

試合後には、サントリーの選手やアンリミがお見送り。最後までお客さんを喜ばせた 【月刊バレーボール】

 高森氏は、昨年9月のグラチャン(ワールドグランドチャンピオンズカップ)でコートMCを務めたことでも知られている。今回は、アンリミのライブやプロジェクションマッピングの演出に加え、「SUNTORY SUNBIRDS SPECIAL COUNTDOWN」のDJや試合中のアナウンス実況を行い、会場を多いに盛り上げた。

「ショー自体を、ひとつの“パッケージ(作品)”として考えると、時間にして合計1時間20分ほど。1本の映画を観ようという感覚で味わっていただけたらと思いますね」(高森氏)

 チームにはさまざまな企画や演出を提案し、ゴーサインが出れば実現に移すわけだが、高森氏は「サントリーの『やってみなはれ』という精神があってこそ」と言ってやまない。そして、佐別當氏も実現にあたり、多くの人たちへの感謝を語った。

「試合前の選手には、試合に集中したいという気持ちもあるでしょう。それでも、たくさんの人に見てほしいという思いで理解を示してくれている。また、イベント実施に伴い、(アウェーのチームは)通常とは異なるレギュレーションでの時間の使い方や、試合前の練習などへの理解と協力をいただいた。その結果、実現できていることに心から感謝したいです」

 これまでのVリーグとは異なる、スポーツエンターテインメントとしての要素が全面に出た1月12日の大田区総合体育館。そこには、裏で支えたホームチームの関係者だけでなく、相手チームも含めたたくさんの思いがあった。

 もっともっと多くの人にバレーボールに触れてもらいたい。そんな純粋な願いだ。

「楽しいことがあるから会場に行ってみよう。そこでバレーボールを見ようという人を増やしたいですね。これまでのファンの方を大事にすることはもちろん、新しいお客さんをいかに呼べるかを今後も考えていきたいと思います」(佐別當氏)

 Vリーグの現場でやれることはまだまだある。そう実感した夜だった。

(坂口功将/月刊バレーボール)

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著者プロフィール

1947年創刊。バレーボールの専門誌として、その黎明期から今日まで、日本のバレーボールを取り上げ、その報道内容は、全日本、Vリーグはもちろん、小・中・高・大学生、ママさんまで、多岐に渡る。

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