兄弟で出場、夢をかなえた福田湧矢と翔生 無失点試合を続ける東福岡が2回戦に進出

江藤高志

東福岡が3−0で2回戦進出を決める

東福岡はG大阪内定の福田湧(10番)の活躍もあり、3−0で尚志に勝利 【写真は共同】

 第96回高校サッカー選手権の1回戦、キャプテンでガンバ大阪加入内定の福田湧矢が落ち着いてPKを沈め、後半34分に東福岡(福岡)がリードを2点に広げる。結果的に3−0で尚志(福島)を下した東福岡にとって試合を決定づける貴重な追加点となった。

 PKを決めた福田湧は自らの得点はさておき、その直前のプレーで決めてほしかったと振り返る。後半24分に交代出場した福田翔生がカウンターでドリブル突破、相手GKと1対1に持ち込んだ場面だった。

 福田翔のシュートは尚志のGK宗像利公のファインセーブに阻まれてゴールならず。ただ、このこぼれ球を福田湧が回収してドリブルで仕掛け、GKのファウルを誘っていた。自ら奪ったPKを決めたのだから悪い話ではないのだが、それでもカウンターを決めてほしかったと福田湧が話すのは、外した福田翔が実弟だからだ。

「決めて、輝いてほしかった」と振り返る兄は弟のカウンターについて「いい抜け出しだったんですけれどね」と苦笑い。「(試合前に)出たら決めろよとは言っていました。あれを決めてくれたら最高でした(笑)」と話すが、「(兄弟そろって選手権で同じピッチに立つことが)小さい頃からの夢だったので、うれしかったです」と笑顔を見せた。

無失点試合を続ける中で生まれた自信

 期せずして兄弟が力を合わせて奪った2点目が決まるまでは一進一退の試合展開だった。特に前半は尚志の仲村浩二監督が「この試合が決勝だと思って戦いました」と話すように、尚志がペースを握る展開だった。尚志が先制点を奪ってもおかしくない状況の中、東福岡の選手たちは冷静だった。福田湧は前半について「決められる気はしませんでした」と断言。それは県予選から無失点試合を続けてきたからだ。

「5年連続で選手権に出ていますが、(県予選無失点の)守備の固さは今までになかったと思う。それは自分たちの持ち味だと思います」と福田湧は胸を張る。そうした守備面での自信を背景に、尚志ペースの前半も臆することなく試合を進められたのだという。

 東福岡が先制点を奪った前半33分の得点は、福田湧の崩しのパスから生まれている。

「けっこうギリギリのパスだったんですが、9番の守田怜司が頑張って残してくれたからこそのゴールだと思います。よく粘ってくれました」

 ペナルティーエリアの外から福田湧が入れた縦パスを守田が残して木橋朋暉につなげると、木橋が早いクロスを選択。沖野直哉がこれを押し込んで東福岡の先制点となった。

翔生の双子の弟、凌生とはインターハイ予選で対戦

 内容の悪かった前半を踏まえ、東福岡はハーフタイムに森重潤也監督が檄(げき)を飛ばしたという。福田湧がガツンと来ました(笑)」と振り返る通り、後半の東福岡が内容的に盛り返したのは、ロッカールームでの出来事も一因として上げられるだろう。

 この日の東福岡の試合運びを考えると、PKによる2点目でほぼ決着したと言っていいが、後半アディショナルタイムの44分に木橋が直接FKで3点目を奪いダメ押しに成功。結局、東福岡が尚志を3−0で下し1月2日の2回戦に駒を進めた。

 なお、福田翔には双子で凌生という弟がおり、今も北九州高校でサッカーを続けている。双子の弟2人は未熟児として生まれており、翔生、凌生の2人には「生」の文字が付けられたと福田湧はいう。その北九州とは夏の高校総体(インターハイ)で対戦している。

「インターハイの県予選で対戦したんですが、3人同時にピッチに立ててよかったです」と、弟との試合を振り返る福田湧は兄の顔を見せた。ちなみにその北九州戦は「9−0で勝ってしまいました(笑)」と笑顔だった。
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著者プロフィール

1972年、大分県中津市生まれ。工学院大学大学院中退。99年コパ・アメリカ観戦を機にサッカーライターに転身。J2大分を足がかりに2001年から川崎の取材を開始。04年より番記者に。それまでの取材経験を元に15年よりウエブマガジン「川崎フットボールアディクト」を開設し、編集長として取材活動を続けている。

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