サッカーを通して培う「リスペクト」 徳山大学女子サッカー部が目指すチーム像

岩本勝暁
 2020年東京五輪そして世界に向けて、それぞれの地元から羽ばたくアスリートたちを紹介する連載企画「未来に輝け! ニッポンのアスリートたち」。第5回は山口県の徳山大女子サッカー部を紹介する。

部員2人からのスタート

2007年、部員2人からスタートした徳山大女子サッカー部。「ハードワーク」と「リスペクト」を大事に、チームは成長している 【写真:坂本清】

 サッカーは、好きですか?
 そう問いかけると、とびきりの笑顔で答えてくれるチームがある。
 工場夜景で有名な山口県周南市。きらびやかな景色と瀬戸内海を一望できる高台にキャンパスを持つ、徳山大の女子サッカー部だ。

 モットーは「ハードワーク」と「リスペクト」。チームを率いる田中龍哉監督は、この2つの言葉を大切にしている。

「サッカーが上手い、下手というのは関係ありません。人間として尊敬されるようになることが大事だと思っています」

 仲間を思い、仲間を信じ、仲間のために全力で走る。全員で攻め、全員で守り、全員でハードワークする。それが、徳山大のプレースタイルだ。そこに上下関係はない。大切なのは、仲間と一緒にサッカーができるこの時間、そして、この空間である。

「チームワークの良さが一番の持ち味です。同じ目的――、“徳山大の女子サッカー部でサッカーをする”ことを目的に集まった同士。チームが掲げる目的は、優勝するとか、試合に勝つとか、レギュラーになるというものではありません。そうではなく、“サッカーをする”という目的を共有しています」

尊敬し合うことの大切さを話す田中龍哉監督 【写真:坂本清】

 若いチームだ。創部は07年。11年の山口国体に向けた強化の一環としてスタートした。指揮を託されたのが、帝京高出身で徳山大のOB、当時は男子チームのコーチだった田中監督である。覚悟を伴う挑戦だった。
 初年度は、1年生の部員が2人しか入ってこなかった。田中監督の積極的なスカウティングによって、翌年は11人が加わった。計13人になり、ようやく本格的に始動した。

「せっかく入部してくれるなら、『ウェルカムで迎え入れよう』『サッカーを楽しんでもらえる環境を整えよう』と、当時の部員たちと話していました。上下関係をなくしたのはその頃です。サッカーの実力は二の次。大切なのは、お互いを尊敬し合うこと。そうした風習が今も続いていて、練習前の準備は4年生が率先して行います。最初にグラウンドに来るのが4年生で、最後に帰るのも4年生。その姿を見て育った1年生は、4年生になった時に同じことをする。いい伝統が受け継がれていますね」

 地元の中学や高校にも視線を広げ、徳山大女子サッカー部のメソッドを惜しげもなく伝えていった。地道な努力は、すぐに実を結ぶことになる。10年度の全日本大学女子選手権に初出場。その後もコンスタントに出場権を獲得し、15年度の同大会ではチーム最高位のベスト4に入った。

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著者プロフィール

1972年、大阪府出身。大学卒業後、編集職を経て2002年からフリーランスのスポーツライターとして活動する。サッカーは日本代表、Jリーグから第4種まで、カテゴリーを問わず取材。また、バレーボールやビーチバレー、競泳、セパタクローなど数々のスポーツの現場に足を運ぶ。

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