活況を呈した17年のボクシング界 話題の激闘、新旧交代劇などを振り返る

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 今年も残りわずかとなったタイミングで、今回は17年のボクシング界を総括してみよう。賑わいをみせた階級、活躍した選手、記憶に残る試合などを再チェックしてみると、今年もなかなか活況だったことが分かる。

9万人の前でダウンの応酬を繰り広げた激闘

WBC王者のワイルダーはジョシュアとの頂上決戦が待たれる 【(C)NAOKI FUKUDA】

 階級別に見ていくと、まず最重量級のヘビー級が大きな話題を提供した。特に4月にイギリスで行われたアンソニー・ジョシュア(28=英国)対ウラディミール・クリチコ(41=ウクライナ)のWBA(スーパー王座決定戦)、IBFタイトルマッチはヘビー級では珍しいダウンの応酬となる激闘だった。最初にダウンを奪ったのは王者のジョシュアだが、続く6回に返り咲きを狙うクリチコが右ストレートで倒し返す。これで勝負は決したかと思われたが、終盤になってジョシュアが息を吹き返し、11回に2度のダウンを奪い返してレフェリー・ストップに持ち込んだ。若く勢いのあるジョシュアは戦いながら経験値を上げ、価値ある勝利をもぎ取った。再戦が期待されたが、クリチコは引退の道を選んだ。ジョシュアは10月、カルロス・タカム(37=カメルーン/フランス)に10回TKO勝ちを収め、防衛回数を4に伸ばすとともにプロデビューからの連続KO勝ちも20に伸ばしている。

 そのジョシュアと近い将来に対戦が期待されるWBC王者、デオンテイ・ワイルダー(32=米国)も存在感を示した。2月にジェラルド・ワシントン(35=米国)を5回TKOで下すと、11月には指名挑戦者の前王者、バーメイン・スティバーン(39=ハイチ)を初回KOで一蹴した。179秒の間に3度のダウンを奪う圧勝だった。6連続KO防衛を果たしたワイルダーの戦績は39戦全勝(38KO)。ジョシュアとの頂上対決は瞬きも許されないスリリングなものになりそうだ。

日本での注目度も高いミドル級

ミドル級3団体王者のゴロフキンは、カネロとの再戦が計画されている 【(C)NAOKI FUKUDA】

 村田諒太(31=帝拳)がWBA王座についたミドル級はもともと人気のある階級だが、村田の戴冠によって日本での注目度も格段にアップした。世界的視野で見た場合、このクラスの主役がWBA(スーパー)、WBC、IBF3団体王者のゲンナディ・ゴロフキン(35=カザフスタン)と、2階級制覇の実績を持つサウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)であることに異論はあるまい。

 この両者の戦いは9月に実現し、12回引き分けという結果に終わった。ややゴロフキン優勢という見方が多いが、接戦だったことは事実だ。再戦が来年5月に計画されている。

 この両雄を追ってジャーマル・チャーロ(27=米国)、デメトリアス・アンドレイド(29=米国)がスーパーウェルター級王座を返上してミドル級に転向してきた。特に挑戦者決定戦を制したチャーロはWBC1位にランクされており、ゴロフキン、アルバレスを脅かす存在といえる。WBA王者の村田とWBO王者のビリー・ジョー・サンダース(28=米国)、3月にゴロフキンと互角に近い戦いを演じた元WBA王者のダニエル・ジェイコブス(30=米国)、さらにIBF1位のセルゲイ・デレビャンチェンコ(32=ウクライナ)らタレントは豊富だ。

賑わいをみせたS・フェザー級、S・フライ級

 WBO王者のワシル・ロマチェンコ(29=ウクライナ)を軸にしたスーパーフェザー級戦線も活況を呈した。ロマチェンコは4月に前WBA王者のジェイソン・ソーサ(29=米国)を9回、8月にタフなミゲール・マリアガ(31=コロンビア)を7回、そして12月には五輪連覇対決として注目されたギジェルモ・リゴンドー(37=キューバ)戦も6回、いずれも相手を棄権に追い込んでTKO勝ちを収めた。俊敏な動きで立ち位置を変え、スピードとスキルで相手を圧倒するボクシングを確立した印象だ。

 このクラスにはWBC王者としてミゲール・ベルチェルト(26=メキシコ)が君臨。WBA王者として19戦全勝(16KO)の長身サウスポー、アルベルト・マチャド(27=プエルトリコ)がおり、そして12月に戴冠を果たしたIBF王者、尾川堅一(29=帝拳)もいる。統一戦を狙うのか、それともライト級進出を狙うのか、ロマチェンコの動きが注目される。

 スーパーフライ級も賑わいをみせた。1年前までの主役は4階級制覇のローマン・ゴンサレス(30=ニカラグア)だったが、3月にそのゴンサレスを微妙な判定で破ったシーサケット・ソールンビサイ(31=タイ)が、9月の再戦で4回KO勝ちを収めて一気に主役の座に躍り出た。このほか9月に米国進出を果たしたWBO王者の井上尚弥(24=大橋)、WBA王座を2度防衛したカリド・ヤファイ(28=英国)、年間3KO防衛を果たしたIBF王者、ジェルウィン・アンカハス(25=フィリピン)も存在感を示した。

新旧交代が顕著だった17年

ジョシュアらのロンドン五輪組が新しい波を起こしている 【写真:ロイター/アフロ】

 17年は5年前のロンドン五輪組が活躍した年でもあった。既出のジョシュア(スーパーヘビー級金メダリスト)、ロマチェンコ(ライト級金メダリスト)に加えWBOクルーザー級王者のオレクサンデル・ウシク(30=ウクライナ)が王座を守り、ミドル級では村田が戴冠を果たした。その一方、五輪2大会連覇のゾウ・シミン(36=中国)は7月に木村翔(29=青木)に11回TKO負けを喫し、16年11月に獲得したWBCフライ級王座を失った。また、ロンドン五輪バンタム級金メダリストのルーク・キャンベル(30=英国)は9月、ホルヘ・リナレス(32=ベネズエラ/帝拳)の持つWBAライト級王座に挑んだが、12回判定負けという結果に終わった。

 ロンドン五輪組が結果を出すなか、16年リオデジャネイロ五輪組のプロ転向が相次いだ。特に米国で大きな期待をかけられているのがフェザー級のシャクール・スティーブンソン(20)だ。4月にプロデビューしたサウスポーは4戦全勝(2KO)と順調な船出といえる。このほか5戦全勝(4KO)のマイケル・コンラン(26=イギリス)、同じく5戦全勝(4KO)のライト級金メダリスト、ロブソン・コンセイサオ(29=ブラジル)、さらに3戦全勝(1KO)のライトウェルター級金メダリスト、ファツリディン・ガイブナザロフ(26=ウズベキスタン)、スーパーヘビー級金メダリストのトニー・ヨカ(25=フランス)も3戦全勝(2KO)を収めている。このヨカに至っては2戦した時点でWBO15位にランクされており、青田買いとはいえ期待の大きさがうかがい知れる。

 こうした新しい波が押し寄せてきた一方、リングを去った大物もいた。前出のクリチコのほか、6月にセルゲイ・コバレフ(34=ロシア)を8回TKOで返り討ちにしたアンドレ・ウォード(33=米国)は、WBA、IBF、WBO3団体のライトヘビー級王者のまま引退した。ちなみに、コバレフが収集してウォードに引き継がれた3つの王座は再びバラバラになったが、いずれも年内には別の持ち主が見つかった。また、4階級制覇の実績を持つミゲール・コット(37=プエルトリコ)も「勝っても負けても引退」と公言してサダム・アリ(29=米国)とのWBOスーパーウェルター級王座の初防衛戦に臨んだ。

 このほかパッキャオと3戦した(1勝2敗)元2階級制覇王者のティモシー・ブラッドリー(34=米国)、3階級制覇の実績を持つシェーン・モズリー(46=米国)、4階級を制覇したロバート・ゲレロ(34=米国)もグローブを壁に吊るした。

 数多くの激闘が展開され、新旧交代が顕著だった17年がまもなく終わるが、「世界一」の称号を巡るドラマは来年以降も続く。

Written by ボクシングライター原功

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