韓国代表が見せた大会に懸ける“本気度” E−1優勝で成功したW杯への土台作り
歴史的だった決勝戦での“圧勝”
4−1で日本を下し、E−1選手権優勝を果たした韓国。歴史的とも言っていい“圧勝”だった 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
「この韓日戦には絶対に勝とうと、みんなが強い思いを持って臨んだから、勝利できたのだと思います。結果を出すことができてうれしいです。本当に、これまで苦労が多かった」
物静かで落ち着いた口調に安堵(あんど)がにじむ。韓国代表が経験してきた苦労の大きさが伝わってくる言葉だった。イ・ジェソンがそう語るのも無理はないだろう。というのも、韓国代表は長らく低迷が続いていたからだ。
ロシアワールドカップ(W杯)アジア最終予選では、中国に7年ぶりに敗れるなど予選敗退も現実味を帯び、6月にはウリ・シュテューリケ監督を解任。代わりにシン・テヨン監督が指揮官に就任し、なんとかロシア行きこそ決めたものの、10月の欧州遠征では合計で7失点と、2連敗を喫するなど苦しい戦いが続いた。
それゆえシン・テヨン監督の評価もなかなか上がらず、国内では“フース・ヒディンク再登板説”まで浮上。ファンやメディアの大炎上を受け、韓国サッカー協会のチョン・モンギュ会長が謝罪会見まで行った。韓国代表は、それほど国民の信頼を失っていた。
その後、11月にホームで開催した国際Aマッチでコロンビアを相手にシン・テヨン監督体制での初勝利を挙げ、続くセルビア戦も1−1で引き分けたが、この2戦の結果だけでは、国民の不信感をぬぐうことはできなかった。韓国でもっとも有名なフリーのサッカージャーナリストとして知られるソ・ホジョン記者は、日韓戦直後に味の素スタジアムのメディア控室でこう振り返った。
「国内メディアの間では、このE−1選手権はシン・テヨン監督にとって“最大の危機”であると言われていました。本当にチームが上向いていることを示さなければいけなかったからです。まして相手は、最終予選で苦戦した中国、勝ってもともとの北朝鮮、そして、絶対に負けるわけにはいかない日本。代表チームが信頼を回復するためには、優勝以外に道は残されていませんでした」
相次ぐ失点と決定力不足に悩まされる
大会でも不安定な守備を露呈した韓国代表。中国代表との一戦は2−2の引き分けに終わった 【写真:アフロスポーツ】
ただ、E−1選手権でも、韓国代表にはさまざまな問題が浮上した。例えば、不安定な守備だ。初戦の中国戦では、前半9分に失点。一時は逆転したものの、後半31分には同点ゴールを奪われ、2−2で試合を終えた。
中国戦後、主将を務めるチャン・ヒョンスは言った。
「シン・テヨン監督は、コンパクトな守備を強調しています。今日の試合では、僕たちがそれを実践できなかった。サイドからボールが入ってきたときに、僕やクォン・ギョンウォンがしっかり反応できませんでした」
振り返れば韓国代表は、この中国戦まで4試合連続で失点を喫していた。大会前から抱えていた問題が、初戦で露呈してしまったわけだ。また、決定力不足も指摘された。中国戦では逆転ゴールを挙げた後に追加点を決められず、続く北朝鮮戦でも相手のオウンゴールの1点しか得点を挙げられなかった。北朝鮮戦で代表デビューを果たしたチン・ソンウクもミックスゾーンでは反省しきりだった。
「北朝鮮が守備を固めてカウンターを狙っているから、慌てずに攻撃を展開しようと話し合いました。ただ、自分のプレーに点数を付けるなら、10点満点中5点くらいです。チャンスはたくさん作れましたが、ゴールにつなげられませんでした」
セットプレーからの得点力を課題に挙げた選手もいる。キム・ジンスだ。北朝鮮戦後、韓国記者から「今日はセットプレーから1つもシュートが生まれなかったね」と話を振られると、キッカーを務めるレフティーは、少し口を尖らせて語った。
「もちろん悔しいですよ。北朝鮮のプレーもビデオを見て研究して、いろいろなパターンを練習してきましたから。セットプレーの度にうまくやろうとは思いますが、今日は結果につながらなかった。これからまたしっかり準備したいです」
不安定な守備に決定力不足……。韓国代表はこうした問題を抱えたまま、日韓戦を迎えたのだった。