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「日韓戦を戦っていなかった」日本
1−4というスコア以上に深刻な問題

日韓戦をめぐる日本と韓国それぞれの事情

8試合の日韓戦を経験している今野(右から2番目)。「間違いなく苦労する相手」と韓国を警戒していた
8試合の日韓戦を経験している今野(右から2番目)。「間違いなく苦労する相手」と韓国を警戒していた【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

「韓国は技術があるし、もともと気持ちの入った選手も多い。間違いなく苦労する相手だと思います。最初から飛ばして90分間を戦わないと難しいですね」


 EAFF E−1サッカー選手権の第3戦、2大会ぶりの優勝が懸かる韓国戦を翌日に控えて、今野泰幸は対戦相手についてこのように語っている。代表経験に乏しい国内の選手で構成された今回の日本代表。その中で今野は、最年長の34歳でキャップ数も「91」と飛び抜けて高い。そんなベテランがA代表デビューを果たしたのが、2005年に韓国で開催された東アジア選手権(E−1の前身)。そして途中出場となったA代表3試合目が、彼にとって初めての日韓戦であった。以来、サブで出場していない2試合を含めて、今野は8試合の日韓戦を経験している。


 あらためて過去の日韓戦を振り返ってみると、日本が最後に韓国に敗れたのが岡田武史監督時代の10年5月24日(0−2)。ちょうどワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の直前で、親善試合で敗戦を重ねる日本代表への悲観論がピークに達していた。しかしその後、5回対戦しての戦績は日本の2勝3分け(1PK勝ち)の無敗。こうした戦績を反映してか、あるいはW杯予選で顔を合わせる機会がなくなったからか、最近の日韓戦にかつてのような熱量を感じることが少なくなったように感じる。


 一方の韓国もまた、近年は「対日本」よりも自分たちのことで頭がいっぱいの時期が続いた。国民が自国の代表に夢を見ることができたのは、準優勝にまで上り詰めた15年のアジアカップまで。一時は「ゴッド(神)」とあがめられたウリ・シュティーリケ監督は、W杯アジア最終予選で中国とカタールに敗れる失態を演じて解任。後任には、A代表の監督代行やU−23代表の監督経験があるシン・テヨン氏が選ばれ、予選最終戦でようやくW杯出場を果たした。だが、国民の代表チームへのまなざしは、かつてないくらい冷ややかなものとなって今に至っている。


 国内のKリーグはスタンドに空席が目立ち、若いタレントがJリーグを目指すようになり、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)でもラウンド16止まり。加えてW杯本大会のファイナルドローでは、ドイツ、メキシコ、スウェーデンという絶望的なグループに振り分けられてしまった。韓国サッカー界にとって、近年まれに見る残念な年となった17年。それだけに、今年を締めくくるラストマッチは何としても勝利したいはずだ。しかも相手は日本で、大会2連覇が懸かる一戦となれば、彼らのテンションが上がらないはずがない。

PKで先制するも、その後は何もできなかった日本

日本はPKで先制するも、その後は何もできず1−4の大敗を喫した
日本はPKで先制するも、その後は何もできず1−4の大敗を喫した【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 この日の日本のスターティングイレブンは以下のとおり。GKは中村航輔。DFは右から植田直通、三浦弦太、昌子源、車屋紳太郎。中盤はボランチに井手口陽介と今野、トップ下に倉田秋。FWは右に伊東純也、左に土居聖真、センターに小林悠。全体的に先の北朝鮮戦と中国戦で、評価の高かった選手を中心にチョイスした印象である。そして試合は、日本の楽勝ムードから始まった。伊東の右からの果敢な突破から日本はPKを獲得。これを小林がゴール左隅にきっちり決めて、開始3分で先制する。


 だが日本のリードは10分しか持続しなかった。前半13分、韓国はキム・ジンスが左サイドからクロスを供給。昌子がクリアしようとジャンプするも届かず、背後のキム・シヌクが196センチの長身を生かした強烈なヘディングシュートでネットを揺らす。キム・シヌクはこの直前に2回、決定的なチャンスに絡んでいる。にもかかわらず、日本は警戒すべき相手にやすやすと同点ゴールを許してしまった。


 これ以降も日本は、試合のペースを相手に握られ続ける。23分には、車屋の不用意なファウルから与えたFKをチョン・ウヨンに直接決められて、ついに逆転を許してしまう。チョン・ウヨンのゴールは、日本の6枚の壁をものともせず、GK中村も反応できないほどのブレ球による見事なものであった。さらに35分、韓国はイ・ジェソンが車屋を引きずりながら、右サイドからカットインしてラストパス。これをフリーで受けたキム・シヌクが、GKとの1対1の場面から冷静に左足で流し込む。日本は何もできないまま、前半を1−3で折り返した。


 ハーフタイム、果たしてヴァイッド・ハリルホジッチ監督はどんなソリューションを選手に授けるのだろう。だが後半の日本は、戦い方も顔ぶれも変化なし。キム・シヌクの高さに対抗すべく、三浦と植田のポジションを入れ替えるかと思ったが、それさえもなし。後半21分、日本は最初の交代カードを切る。井手口を下げて三竿健斗。三竿は確かにいい選手だが、何しろ代表初キャップである。この厳しい状況で、劇的な変化をもたらしてくれるとは思えない。指揮官はこの試合を、単なるテストと割り切ることにしたのだろうか。


 後半24分、その三竿がペナルティーボックス左でハンドを取られ、韓国にFKのチャンスが与えられる。キッカーは途中出場のヨム・ギフン。さほど危ない場面とは思えなかったが、背番号19の左足から放たれた低い弾道は、ニアサイドで守っていた小林の足に当ってコースが変わり、決定的な4点目となる。日本はその後、川又堅碁と阿部浩之を投入(OUTは伊東と倉田)。しかし、最終ラインを5枚に増やした韓国の固い守備を崩すことはできず。そのままタイムアップとなり、韓国が2大会連続4回目のE−1優勝を果たした。

宇都宮徹壱
宇都宮徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著はスポーツナビでの連載をまとめた『J2&J3 フットボール漫遊記』(東邦出版)

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