弱いとファンが集まる“奇特”なクラブ フェイエノールトを支えるファンの存在

中田徹

U−19チームは決勝トーナメント進出を決める

ファン・ブロンクホルスト監督(左)は「フェイエノールトにとって素晴らしい夜になった」と勝利を祝福 【Getty Images】

 ナポリ戦後の記者会見では『フォルクスクラント』紙のビーレム・フィッサー記者が、「左サイドバックを務めたマ・ラ・シ・ア? 発音は合っているかな。彼についてコメントがほしい」と質問した。ミケル・ネロムが負傷したため、急遽U−19から引き上げられたティレル・マラシア(18)はナポリ戦がトップチームの公式戦デビューとなった。

 そのせいか、少し硬さが取れるのに時間がかかったが、どんどんエンジンがかかっていき、攻守で合格点を与えられる出来を見せた。試合後の場内一周では、スティーブン・ベルフハイスに背中を押されて1人、サポーターの前に立ち万歳三唱を繰り返す姿が初々しかった。

 ファン・ブロンクホルスト監督は「マラシアで合っているよ」と言ってから続けた。

「ティレルは夏の準備期間でもトップチームにいたが、実戦経験を積ませるためU−19でプレーしている。本当なら今日はUEFAユースリーグに出るはずだったが、急きょ昨日トップチームに合流した。先発すると告げたのは今日。素晴らしいインターセプトがいくつかあった。良いクロスもあった。私は彼のプレーをとても楽しんだ」

 この日の夕方には、同じロッテルダムにあるエクセルシオールのスタジアムで、UEFAユースリーグが行われ、4−3という激闘の末、フェイエノールトがナポリを下し、決勝トーナメントに進出した。

「2月、フェイエノールトU−19が決勝トーナメントを戦うということは、彼らの成長にとってとても貴重なこと。トップチームが勝ち、U−19が決勝トーナメント進出を決めて、今日はフェイエノールトにとって素晴らしい夜になった」(ファン・ブロンクホルスト監督)

オランダサッカーの現状が厳しいのは間違いないが……

ユーロに続きW杯出場を逃したオランダ。現状は厳しいが…… 【写真:ロイター/アフロ】

 オランダサッカーの現実が厳しいのは間違いない。オランダ代表は欧州選手権(ユーロ)に続きワールドカップ(W杯)出場を逃し、クラブチームもすでに全チームが欧州カップ戦から姿を消した。フランク・デ・ブール、ロナルド・クーマン、ピーター・ボスに続き、アルベルト・スタウフェンベルフがヘンクを解雇され、今や海外で活躍するトップ指導者はFIFAクラブW杯でアル・ジャジーラを率いるヘンク・テン・カテだけになってしまった。

「タレントが出てこない」と嘆く声も聞くが、実際にはいる。アヤックスのジャスティン・クライファートは第13節のローダ戦で試合の雰囲気を一気に変える活躍を見せ、ハットトリックを記録した。MFフレンキー・デ・ヨングは10日のPSV戦でリベロを務め、広い視野と優れた戦術眼、勇気溢れるドリブルでの攻撃参加、一気に展開を打開するミドルパスで3−0の快勝に貢献した。

 来季からアヤックスでプレーすることが決まっているフォルトゥナ・シッタートのセンターバック、ペル・スフールス(18)は、若くしてキャプテンを務める優れたパーソナリティーを持ち、2部リーグとはいえ、先日のRKC戦ではスーパーゴールを2つ決めた。

「タレントがいないという意見もあるが、タレントはいる。徹、ポジティブだ。ポジティブ!」

 逆に私がオランダ人記者から励まされているのである。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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