ラ・リーガは「世界最高」なのか? 再考すべきテクノロジーの導入と経営状況

バックスタンドが埋まらず、罰金を科せられたセルタ

バックスタンドが埋まっていないという理由で、セルタは罰金を科された 【Getty Images】

 ラ・リーガが各スタジアムの観客動員数を増やすことに熱心に取り組んでいるのも、テレビ放映権料の増収と無関係ではない。例えば今季セルタ・デ・ビーゴはレアル・ソシエダ、アラベスを迎えたホームゲームの2試合で、テレビ放送でよく映るバックスタンドが70パーセント以上埋まっていなかったため、ラ・リーガから罰金を課された。スペインではスタジアムが満員にならないというイメージを世界中に発信してしまったからだ。

 この2試合の観客動員数が低かったわけではない。レアル・ソシエダ戦の動員数は1万6961人、アラベス戦は1万7384人だった。それはラ・リーガの中堅クラブの試合においては悪くない数字であり、16−17シーズンの平均を上回っている。

 しかし、ラ・リーガにとって最も重要なのは具体的な数字ではなく、この2試合がテレビ放送を通して世界各国の視聴者に伝えるイメージなのだ。

 セルタにとってその数字が許容範囲のものなのか、改善すべきものなのかはさておき、これが昇格したてのジローナやレバンテ、レガネスといったクラブであればどうか。ラ・リーガが求めるノルマをコンスタントにクリアすることは間違いなく難しいだろう。

 バックスタンドの集客率70パーセントという条件は、経済的にゆとりのある中堅以上のクラブを基準に考えられており、経済力の限られた小規模クラブには困難なノルマである。それは資金力の差に関わらず、より良いチームが評価されるべきフットボールという競技において、公平な基準だと言えるだろうか。

ビッグクラブ以外の経営状況は安定せず

レアル・マドリー(写真)やバルセロナなど、ビッグクラブ以外の経営状況は安定していない 【写真:ロイター/アフロ】

 ラ・リーガはまた、各クラブの経営状態についても再考する必要がある。トップリーグに所属するクラブの多くは、長年にわたって負債の未払いに目をつぶってきた地方自治体や税務署による特別な待遇のおかげで経営を維持することができていた。練習場やスタジアムのあった土地を地方自治体に高額で買い取ってもらったことで経営難を乗り越えたケースも少なくない。

 このような現状を踏まえた上で、それでもラ・リーガを「世界最高」とみなす意見を耳にするのは、この国を代表する2、3のビッグクラブが国際舞台でタイトル争いの常連となっているからだろう。だが組織としてのラ・リーガはプレミアリーグのみならず、ブンデスリーガにも遠く及ばないのが現実だ。

 このままテクノロジーの導入に踏み切らなければ、ラ・リーガは評判とリスペクトを失っていくことになるだろう。たとえ5度のバロンドール受賞者を擁していても、肉眼に頼り続けるジャッジが不当にゴールを取り消してしまうようであれば、宝の持ち腐れにしかならない。

 ラ・リーガが再考すべき課題は山積みだ。

(翻訳/工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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