メッシとロナウドに移籍の可能性はあるか 無視できない金銭問題とクラブとの関係

両クラブとも退団を望んではいないが……

ほんの数カ月前には馬鹿げたことだと言われていたメッシ、C・ロナウドの移籍が確かな可能性として受け止められるようになっている 【写真:ロイター/アフロ】

 リオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドによるフットボール界最高の争いが、2018−19シーズンのラ・リーガでは見られなくなるかもしれない。ほんの数カ月前まで、そんなことを考えること自体がばかげていると思われていた。それが今では、ひとつの確かな可能性として受け止められるようになっているのだ。

 もちろんレアル・マドリーもバルセロナも彼らの退団を望んではいない。だが過去10年にわたって世界最高の称号を二分してきた2人の“怪物”にとって、来年6月に行われるワールドカップ(W杯)を境にキャリアのターニングポイントを迎えることを予感させる要素がいくつかある。

 2人がそろってスペイン政府から脱税容疑をかけられていることも無関係ではない。当初メッシは父親に任せていた金銭の管理状況を把握していなかったと主張していたが、最終的には自身の過失を認め、追加徴税を受け入れることで問題解決に至った。だがC・ロナウドは専門家の助言とは裏腹に、一切の非を認めず徹底抗戦の姿勢を貫いている。

 金銭絡みの問題は両者の移籍を占う上で最も重要な要素の1つだ。脱税問題に加え、メッシはカタルーニャの独立問題にも巻き込まれる恐れがある。カタルーニャ州議会がスペインからの独立を強行する中で、すでに2500以上の企業や大手銀行がカタルーニャ外に本社を移した。

 今後カタルーニャでは10年以上のスパンで深刻な経済危機が生じることが予想されており、バルセロナも確実にその影響を受けることになる。そうなれば、現時点ではフィリペ・コウチーニョらの獲得に動く余裕があっても、いずれは現在の戦力を維持することができなくなるだろう。

メッシはキャリアの終わりを母国で迎えたい?

メッシはいまだにバルセロナとの契約延長に正式なサインをしていない 【写真:ロイター/アフロ】

 カタルーニャ出身の人気歌手であり、バルセロナとアルゼンチン代表のファンとしても有名なジョアン・マヌエル・セラートは先週、バルセロナのジョセップ・マリア・バルトメウ会長に向けた手紙を公表した。その中で彼は、メッシが契約満了まで半年を切る18年1月から他クラブと自由に契約交渉できることに触れ、メッシとの契約更新をこれ以上先延ばしにしないよう懇願していた。

 メッシがバルセロナと深くつながっていることは間違いない。だがすでに契約更新は合意済みとクラブは伝え、ラ・リーガのハビエル・テバス会長もサイン済みだと公言しているにもかかわらず、いまだに正式サインが先延ばしにされている裏には何らかの理由があるはずだ。そう考えると、カタルーニャの不安定な政情と、先行きの見えない経済問題が重要な要因となっているように思えてならない。

 また先日行われたインタビューを聞いた限りでは、今もメッシはプロとしてプレーしたことがないアルゼンチンの地元クラブ、ニューウェルス・オールドボーイズでキャリアを終えたいという考えを持っているようだ。本人は実現するかどうかについては明言していないものの、いつかその日が訪れる可能性はある。若くして大西洋を渡り、母国から遠く離れた国でベテランの域に達するまでプレーし続けてきたメッシの願望については、バルセロナのファンも理解を示している。

 いずれにせよ、メッシについては1月までに新契約を結ぶはずだと信じている人が大多数を占めている。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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