チームスタイルで占うJ1昇格PO決勝 最多得点の名古屋、最少失点の福岡を分析

「セットプレー」の回数が多く、精度の高い福岡

【データおよび画像提供:データスタジアム】

 対する福岡の攻撃スタイルで偏差値が高いのは「セットプレー」。頻度が多いだけではなく、シュート率はリーグ1位、ゴール率は3位と、多くの得点をセットプレーからもぎ取っている。得点ランキング3位タイのウェリントンは、今季の19得点のうち5点がセットプレーからで、7点はクロスから。右サイドの駒野友一が蹴る精度の高いボールに、ゴール前のウェリントンらが合わせる形が必勝パターンだ。

「ポゼッション」「カウンター」ともに攻撃回数はJ2平均かそれを下回るが、総じてシュート率が高いのも特徴のひとつ。特に「ショートカウンター」からは4位、「ロングカウンター」からは3位と、就任3年目を迎えた井原正巳監督のもと、カウンターを仕掛けたら最後はシュートで終わる形が徹底されている。

 守備面では、最少失点チームらしくどの項目も相手の攻撃機会が少ない。特にカウンターでもポゼッションでも、相手陣内から始まる攻撃には強い傾向が出ている。ただし、自陣に押し込まれ、ポゼッションされた状況からのゴール率は6位。これは福岡が受けた各攻撃のゴール率の中で最も高い。堅守のチームながらシュートを打たれると決まりやすいという意外な特徴も見られた。エリア別では福岡から見て右サイドをドリブルやコンビネーションで崩される攻撃をやや苦手としている。

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それぞれが抱える相性の悪さ

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 両チームの攻撃スタイルを鑑みると、PO決勝はポゼッションしながら中央をコンビネーションで崩しにかかる名古屋に対し、福岡がカウンターやセットプレーから好機をうかがう展開になるだろう。試合の主導権は名古屋が握ることになるかもしれないが、福岡としてもそれ自体はまったく悪いことではない。ただし、福岡からすると「打ったシュートが決まりやすい名古屋」と、ポゼッションで押し込まれた状況では「シュートが決まりやすい福岡」という相性の悪さは気がかりだ。名古屋は積極的にシュートを打った方が得策かもしれない。

 さらに名古屋はカウンターに警戒しつつ、不用意なファウルは避けてなるべく福岡陣内で試合を進めるのが理想だろう。名古屋としても、「カウンターからシュートを打たれやすい名古屋」と、「カウンターからのシュート率が高い福岡」という相性の悪さを抱えている。福岡は何度か訪れるであろうシュートチャンスをいかに決め切るかという決定力が命運を左右することになりそうだ。

 また、J1昇格POでは引き分けの場合は年間順位が上位のクラブが勝者となるため、この試合は引き分けでも名古屋の昇格が決まる。勝利が絶対条件の福岡としては、早い時間帯に得点を奪えないと、徐々に焦りが出てくる。序盤から積極的に仕掛けたいところだが、主導権を名古屋に握られた中でどれだけチャンスを作ることができるか。

 キックオフ直後から、両チームが仕掛ける駆け引きに注目だ。

(テキスト:豊田真大/スポーツナビ、グラフィックデザイン:相河俊介)

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