代表監督が目指す「日本流」バスケとは? W杯予選を直前にラマスHCの狙いを聞く

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ラマス「篠山、富樫、田中、比江島、古川は代表愛を感じさせる選手」

ラマスHCが言う「代表愛を見せてくれる5名」の中に名前が挙がった田中 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――PGのポジションは4人いますが、それぞれタイプが違います。宇都選手が新しく入って、辻直人選手(川崎ブレイブサンダース)もピック&ロールからからスキップパスを扱えるという意味ではPG的な役割をすることができます。それぞれの個性として感じている部分と、「日本流を探す」中で、確信が持てているPGは誰になるのでしょうか?

 チームとして機能するためにはバランスが必要です。全選手が同じことをやるのではなくて、良いピック&ロールをするためには良いスクリーンのできる選手も必要ですよね。そういった、いろいろな特長を持った選手を組み合わせて良いチームを作ることが必要不可欠になってきます。代表のチーム作りはクラブチームと違って、選手個人個人の特長をうまく利用して良いチームを作るべきだと考えています。

 強豪国と国際レベルの競争をするチームを作るためには、メンタル面の強い選手も必要です。代表に来るときは「何かを求めに来る」のでなく、何かを出す、自分の何かを削って代表のために尽くすという気持ちを出してほしい。12分しか出られない選手、8分しか出られない選手、もっとプレータイムが少ない選手もいますけれど、短時間の中でチームの勝利につながるプレーができる選手が必要です。

 篠山竜青(川崎)、富樫勇樹(千葉ジェッツ)、田中大貴(アルバルク東京)、比江島慎(シーホース三河)、古川孝敏(琉球ゴールデンキングス)といった選手たちは、「代表愛」をコート内で見せてくれていると思っています。彼らは代表のために、代表にいるために全力を尽くしてくれるタイプの選手たちです。一緒に練習をした中で名前を挙げられるのはこの5人です。

――もう少し目指す「スタイル」をファンに向けて解き明かしたいと思います。リバウンドの話はすでに出ましたがもう一つ、前回のアジアカップはペイントタッチ(ペイントエリアにボールを運ぶプレー)に課題がありました。何かシステム的に変えたところはありますか?

 オフェンスタクティクス(攻撃戦術)には少し修正がありました。ディフェンス面は何も変わっていなくて、アジアカップと同じです。もちろん少しずつ質を上げたいという考えはありますが、タクティクスは変えていません。

 ボックスアウト、リバウンドに関しては緻密さ、強度を高める練習に取り組んでいます。オフ・ザ・スクリーンの回数も戦術の中で増やしているところです。2番(SG)と3番(SF)がもっと得点につながるプレーができるように、オプションを加えています。この2つのポジションは、代表の中でもレベルの高い選手が多いので、うまく利用して2番と3番が得点につながるプレーができるように修正しています。

フィリピン戦で求めるのは「勝利」「良いプレー」「競争力」

代表とBリーグの両輪が機能しなければ、日本バスケの発展はない。両者からそんな思いが感じられる対談となった 【スポーツナビ】

――11月24日には2019年のW杯に向けたアジア地区1次予選の初戦があります。フィリピンを相手に何を成し遂げたいと思っていますか? それからBリーグでの日々の戦いに期待することは何ですか?

 フィリピン戦で成し遂げたいこと――。それはシンプルに、「勝利」「良いプレー」「競争力を高めること」の3つです。もちろんフィリピンは03年から日本が勝てていない相手なので、勝利が簡単でないことは分かっています。一方で自分たちのプレーをうまくできれば、十分に勝てる可能性のある相手だと思っています。

 鍵になるのはディフェンス、特に試合の序盤でしっかりディフェンスをすることです。フィリピン代表はラン&ガンのスタイルで、カウンターから得点を決めるとすごく士気が上がります。そこをうまく対応し、相手がランできないよう試合をコントロールすることでリズムに乗らせないようにすれば、勝つ可能性は十分にあると思っています。

 11月の2試合を終えてレギュラーシーズンに戻りますが、選手たちにはこんなことを伝えています。それは「もっと練習のレベルを上げて、プロ基準のレベル、国際標準レベルで準備をする」ということ。それは代表活動中だけでなく、1年を通してずっとやらないといけないことです。プロフェッショナルとして生活をプロレベルにしないといけません。

 この5年間、バスケ界で食事の管理は大きく改善されている部分です。フィジカル面の改善は各トレーナーにも関わってもらうのですが、選手自身が「変わるためにはこれをやった方がいい」という自覚をもたなければいけない。

 代表にはそれを実現するための世界基準のトレーナーがいます。その中でも佐藤晃一スポーツパフォーマンス部会長は世界のトップレベルのフィジカルコーチです。彼はNBAで7年間仕事をしましたが、それは努力と実力の証明です。比江島、田中といった選手がもっとレベルを上げたいのなら、そういうトレーナーがいることは重要で、レベルを上げてもらう大きなチャンスだと思います。

 われわれは今、成長に向けた新しいスタートを切ろうとしています。このスタートラインにわれわれ(=現体制の代表コーチ陣)が立っていることは「たまたま」かもしれません。しかし使命感を持って、やらないといけないと思って取り組んでいます。

(リード・構成:大島和人)

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