熾烈極まるフィギュア五輪代表争い GPシリーズで見えた候補者たちの現状

スポーツナビ

樋口が2戦連続で表彰台入り

演技の安定感が増した樋口は、GPシリーズで2戦連続表彰台と好調だ 【写真:ロイター/アフロ】

 一方、出場枠が2つの女子は、まさに熾烈(しれつ)を極めた争いになっている。現在のところポールポジションに立っているのが、GPシリーズの2試合で表彰台に立っている樋口新葉(日本橋女学館高)。樋口は今年4月の国別対抗戦で大幅に自己ベストを更新して以降、演技に安定感が増し、大きなミスなく2試合を終えている。三原舞依(シスメックス)、本田真凜(関西大中・高スケート部)との直接対決で注目された中国杯も、樋口が最上位(2位)だった。スピードやジャンプの切れという自身の持ち味を生かせるプログラムもマッチしており、GPファイナル進出も見えている。

 同じ中国杯に出場した三原は、GPシリーズ初戦とあって、SPはやや硬さが目立ち、7位スタート。FSで4位に巻き返したものの、まだプログラムを自分のモノにしていないように感じられた。ただ、裏を返せばそれだけ伸びしろがあるということ。「大人っぽさを出したい」と語っているように、プログラムの完成度が高まるにつれて、また違った魅力が表れてきそうだ。フランス杯の結果次第ではGPファイナル進出の可能性も残されている。

 GPシリーズデビューを果たした本田、坂本花織(シスメックス)、白岩優奈(関西大KFSC)はシニアの洗礼を受けた。本田は2戦とも5位。ロシア杯に出場した坂本はSPこそ自己ベストを更新し4位につけたが、フリーでは本来の演技ができず、5位に順位を落とした。白岩はNHK杯で8位に終わり、「怖くなってしまう部分があったし、精神面の反省が多かった」と課題を挙げている。坂本、白岩はもう1戦残されており、どこまでシニアの雰囲気に慣れることができるか。

 GPシリーズに参戦している日本女子の中では21歳と最年長の本郷理華(邦和スポーツランド)は、2戦で6位、7位と不本意な結果に終わった。演技内容は悪くないものの、細かい取りこぼしが多く、得点が伸びてこない。

宮原の復帰戦は「まずまず」の出来

復帰戦で一定の手応えを得た宮原だが、GPファイナル進出は厳しく、全日本選手権に懸けることになりそうだ 【写真:坂本清】

 平昌五輪の出場権争いで、大きなカギを握っているのが、女子のエース宮原知子(関西大)の状態だろう。今年1月に疲労骨折が判明して以来、初の実戦となったNHK杯では日本人最上位の5位。11カ月ぶりの試合ということを考えれば、合計191.80点の5位という成績は、本人の言葉を借りれば「まずまず」だ。それでも、3回転の予定が2回転になったり、回転不足が見られるなど、ジャンプとそれに伴うスタミナ面に不安が残ったのは事実。いかに早く、以前の状態に戻せるかが今後へのカギとなる。GPファイナル進出は厳しいため、全日本選手権での一発回答が求められそうだ。

 もっとも宮原は手応えも感じている。「今はもう違和感や痛みもなくて、体は元気なので、あとはスケートの状態を上げていくだけです。力も入り過ぎず、うまく体も動いたので、この段階では悪くない演技だったと思うし、不安はあまりないです」。試合後の表情には充実感が浮かんでいた。

 平昌五輪の代表選考会を兼ねた全日本選手権まで、残り1カ月半。現時点で女子には絶対的な選手がいないため、誰が出場権を勝ち得ても不思議ではない。ただ、五輪の切符を獲得することがゴールではない。重要なのは平昌でどのような結果を残すか。

 GPシリーズ4戦を消化し、優勝はロシア3回(うち2回はエフゲーニャ・メドベージェワ)、カナダ1回。五輪に出場する2人は、ロシアを始めとする外国勢との争いにも伍していかなければならない。全日本選手権以上に厳しい戦いが、その先には待ち受けている。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント