圧巻の滑り、転倒…小平奈緒が得た教訓 平昌へ“自然体”が結果を出すカギに

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500メートルは4人が37秒台を記録

500メートルでは2位の郷亜里砂(左)、3位の辻麻希(右)も37秒台の好タイムをマークした 【写真は共同】

 こうしたオランダでの経験が実を結んだのが、16−17シーズンだった。小平は500メートルでW杯や世界距離別選手権などを含む15レースを全勝。当然、海外からのマークも厳しくなってきているが、小平の活躍によって、他の日本選手たちの意識もまた変わりつつある。今回の距離別選手権では、2位の郷亜里砂(イヨテツスピードクラブ)が37秒73、3位の辻が37秒84、4位の神谷衣理那(高堂建設)が37秒87と、小平を含む上位4人が五輪のメダル圏内と言える37秒台をマークした。

 郷が「まだまだ課題が多いので、W杯のレースを通じて克服して、奈緒さんに少しでも近づきたい」と話せば、同走した辻も「100メートルまでは先行することができたし、思った以上に良い滑りができた」と、小平への対抗心をのぞかせた。

 昨年の同大会で37秒台をマークしたのは小平のみ。それを考えると、シーズン初戦からレベルの高さがうかがえる。小平自身も「海外勢が徐々に調子を上げてきていますけど、日本のレベルも高まってきているので、私自身も背中を押されているように感じます」と語っていた。

 ただ、そうした中でも「後ろを見るのではなく、私は自分が見たい光景を見るためのスケートを高めていきたい」と、小平はあくまで意識を自身に向けている。日本全体のレベルの向上は歓迎しつつも、もう一段高い場所を見据える。頂点にいるからと言って、力みもない。プレッシャーはあるだろうが、それに動じない強さも兼ね備えている。

「転倒と良い記録は紙一重」

1000メートルでは転倒するも、レース後には「課題が出ることは大切」と前を向いた 【写真は共同】

 一方、大会最終日の1000メートルでは、最後の直線で転倒し、失格となってしまった。600メートル時点でトップのタイム(45秒21)だっただけに悔やまれるが、小平はそのミスを前向きに捉えている。

「海外での試合に向けて、新しいことを試したからこそ生まれた失敗です。転倒と良い記録というのは本当に紙一重だと思うので、引け目に感じることなく、チャレンジしていける方がいいですし、あまり守りに入らず、自分がやってきていることに自信を持っていきたいと思います」

 転倒の要因としては、高木美帆(日本体育大)が直前に好タイムをマーク(1分14秒89)したことにより、「わくわくしすぎて、『私もやってやろう』という感じになってしまった」から。そういう意味では、最終日だけは自然体でいられなかったとも言える。小平にとっても「教訓になった」ようだ。

「今大会は初日の1500メートルで自己ベストをマーク(1分57秒87で2位)して、良い滑り出しになりました。2日目の500メートルも無難に滑り終えましたが、最後の1000メートルで痛めの課題をいただきました。ただ、こうした課題が出ることは大切なので、シーズン初めにしては収穫があったと思います」

 平昌五輪まであと3カ月半。小平はこれからW杯を戦うために、海外を転戦する。今大会で得た教訓を胸に、12月の五輪選考会ではさらに進化した姿を見せるつもりだ。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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