圧巻の滑り、転倒…小平奈緒が得た教訓 平昌へ“自然体”が結果を出すカギに
国内最高記録も「抑えている感じがする」
平昌五輪シーズン開幕戦。得意の500メートルを制した女王・小平奈緒はあくまで自然体だった 【写真は共同】
スピードスケートのシーズン開幕戦となる全日本距離別選手権の女子500メートルを、国内最高記録の37秒25で制した小平奈緒(相澤病院)は、レース後に涼しい顔でそう語った。昨季は国内外で15連勝を飾った同種目。最初の100メートルは同走の辻麻希(開西病院)に先行を許しながらも、全体2位の10秒33で通過すると、中盤から加速し、最終カーブで一気に突き放した。圧巻の滑りに会場内は大きくどよめいた。
「キレはいまいち足りなかったかなと思います。でも終盤は難なく抜けてこられたので、あとは流れに任せて気持ちよく滑っていました」
国内最高、かつリンク記録を出しながら、反省の弁を口にする。昨季の快進撃により注目度が高まる中で迎えた今季初戦でも、女王は自然体だった。ワールドカップ(W杯)の選考会も兼ねている同大会で「緊張した」と話す選手もいたが、小平は表情を変えることなく、淡々と自身の滑りを完遂した。
「逆にもう少し緊張しないといけないなと感じました。良い集中力ではあったのですが、燃えてくるものがそこまでなかったというか、抑えている感じがするので、徐々にアクセルを踏んでいければと思っています」
小平を変えたオランダでの2年間
オランダでの武者修行で、小平は技術的にもメンタル的にも大きく成長した 【写真は共同】
「世界は急激に進歩しているので、日本にとどまっていてはダメだなと思いました。チャンスがあれば海外に行ってみたいです」
ソチ五輪の競技終了後にそう語った小平は、同年4月からオランダに拠点を移す。同国はソチ五輪のスピードスケートで23個のメダルを獲得したスケート大国。トップ選手たちと練習を共にすることで、技術的にもメンタル的にも磨かれた。特に大きかったのは精神面での変化だった。
「日本人が誰もいないチームに入れたのが良かったですね。すべて自分で何とかしなくてはいけないから、真面目すぎたら気持ちが持たない。良い意味で適当さが身につきました。以前は『頑張らなくちゃ』という感じでしたが、今は『なんとかなる』という心構えで、待てばそのうち良くなるという考えになりました」
オランダでの2年間を経て、小平は“自然体”でいられるすべを見いだした。これまでは大舞台で力を発揮できないことも多かったが、今は変に力が入ることもなく、冷静に自身の滑りに集中している。