U-17日本、最高の相手に最高のプレーを! イングランド攻略の鍵は速攻と心理面

川端暁彦

国際大会はここからが本当の戦い

グループステージを2位で突破した日本は、ノックアウトステージ初戦で強豪・イングランドと対戦する 【佐藤博之】

 日本時間の10月17日23時30分から、U−17日本代表“00ジャパン”はU−17ワールドカップ(W杯)ノックアウトステージの戦いを開始する。誤解を恐れずに言えば、国際大会のグループステージは前座のようなもの。ここからが本当の戦いであり、ここからが本当に面白い。そのための第一関門となるのは、サッカーの母国として知られる欧州の伝統国、イングランドである。

 日本の指揮官・森山佳郎監督は、この試合を前にした記者会見で眼前の難敵をこんな言葉で表現した。

「(U−17イングランド代表とU−17日本代表を比べると)市場価値で言ったら200億円対10億円。だが、いい選手がそろった方が勝つとか、『1+1』みたいな足し算ではないのがサッカーの面白いところでしょう」

 6月のU−20W杯でもチャンピオンとなるなど若手の台頭が著しいイングランドだが、U−17代表もオールスターのようなチームに仕上がっている。ドルトムントの新星ジェイドン・サンチョこそ所属クラブの事情でチームを離れたが、プレミアリーグへの出場経験を持つ選手やトップチームに帯同している選手も少なくなく、試合を見ていてもすがすがしいまでにゴールへの突撃を繰り返し、球際で激しく戦い、ゴール前では徹底して体を張ってくる好チームだ。

 日本が苦手としている南米勢がしてくるような小細工はゼロに近いが、間違いなく容易ならざる相手である。GK谷晃生(G大阪ユース)の「この大会で出ているチームの中でも“個”は1番か2番を争うくらいの強さだと思う」という見方を否定する者はいないだろう。ピカイチのタレント軍団である。

 日本とは2年前のバル・ド・マルヌU−16国際親善トーナメントで対戦済みなのだが、このときはサンチョのゴールなどもありながら、日本に3−4の乱打戦で敗れるという屈辱的な経験もしている。この試合、日本は2点を先行されながら、FW棚橋尭士(横浜FMユース)の2得点、久保建英(FC東京U−18)のゴールで追い付くと、最後は終了間際にMF鈴木冬一(C大阪U−18)のスルーパスからFW宮代大聖(川崎U−18)が決勝点。殴られたら殴り返すという真っ向勝負で勝ち切った。こういう経緯もあるので心理的な気後れはせずに済みそうだが、逆に油断は期待できそうにない。

本来はカウンターを得意とする日本

チーム結成以来初の非公開練習を行った日本。イングランド戦は森山監督の手腕が問われる大一番となる 【佐藤博之】

 この相手に対する「ゲームプランは話せない」とした森山監督は、チーム結成以来、初めてとなる非公開練習を試合前日に敢行。延長戦のないレギュレーションのため通常より可能性が高いPK戦の練習を見せたくなかったこともあるだろうが、先発メンバー自体をベールに隠す意図もあっただろう。またインドのメディアが殺到していて練習場の雰囲気がだいぶ騒がしくなっており、トレーニングに集中させたかったということもありそうだ。

 よって、指揮官のゲームプランについては推測するしかないが、グループステージの逆バージョンが一つの理想形になるかもしれない。グループステージの3試合で日本はボール支配率で相手を上回っているのだが、特にフランス戦などは「持たされた」印象も強い。相手にカウンターを狙われて苦しい試合となって自ら袋小路にハマってしまったが、このイングランド戦は逆にカウンターを仕掛けることができれば、勝機も見えてくる。決して付け焼き刃のカウンターアタックではない。元よりそこに特長のあるチームだ。FW久保は、こう言って言葉に力を込めた。

「このチームは多少相手に(ボールを)持たれる時間が長くても、奪ったあとのカウンターというのが強力だと思いますし、個だけではなくて連係でカウンターを作れるチーム。そこを出さないことにはいい勝負はできないし、そこは絶対に出したい」(久保)

 中盤の要であるMF平川怜(FC東京U−18)も「やることはハッキリしていて、(自分たちが)やることも共有できているので、どちらかと言えばやりやすいと思う」と語る。グループステージでは相手にリスペクトを受ける中で難しい試合運びを余儀なくされたが、誇り高い突撃精神にあふれた「騎士団」のようなスタイルのイングランドは、日本の守備網に真っ向から挑んでくるはず。その網を単騎で食い破るような精鋭ぞろいではあるものの、うまくしのいで速攻につなげられれば、ゴールは決して遠くない。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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