雨も味方ディアドラ3連勝で一気の下克上 大胆イン突き、ルメールさすがの達人技だ
ハービンジャーの血、そして成長力
ハービンジャーから受け継いだ重馬場適性、そしてタフな成長力が秋の頂点へとディアドラを押し上げた 【スポーツナビ】
「ディアドラのお父さんはハービンジャーです。ハービンジャーもこういう馬場が得意でしたし、返し馬のディアドラのトビがこの馬場によく合ってました。だから、自信が高まりました」
天も運も味方につけたディアドラ。と言って、もちろん、それだけでGIを勝てるほど甘い世界ではない。実力の壁を痛感させられた春二冠から、この秋での下克上へ――陣営は綿密に計画を練り、それを実行し、見事に大輪へとつなげたのだ。2007年にスズカフェニックスで高松宮記念を制して以来10年ぶりのGI・11勝目となった橋田調教師が、オークス4着からこの秋華賞獲りへのプランをこう解説した。
「秋華賞を目標に絞って、それに対応できるようにとレースを使っていきました。そもそも(獲得賞金が不足しており)秋華賞出走の権利がなかったのと、内回りに対応するために4つのコーナーがあるレースを経験させたかったので、まずは札幌へ。同じようにトライアルは2つのコーナーのローズステークスではなくて、中山を選びました。今日のレースはルメールも上手でしたが、ディアドラが器用に立ち回ることができたのは、その成果が出たかなと思いますね。成功しました」
ソウルスターリングとの比較、ルメールのジャッジは?
順調ならば次走はエリザベス女王杯へ、古馬相手でも叩き上げの末脚が炸裂するか 【スポーツナビ】
「春はまだ子供っぽかった馬ですけど、夏、秋になってどんどん良くなって、トップコンディションになりました。古馬が相手でも問題ないと思います。エリザベス女王杯でもチャンスがあるかもしれないですね」
“かもしれない”と曖昧な言葉で濁したのは、エリザベス女王杯ではルメールはヴィブロスに騎乗するため。内心は「厄介なライバルがまた増えた」と、それこそ思っている“かもしれない”。
また、3歳牝馬とルメールと言えば、やはりオークス馬のソウルスターリングだ。この愛馬とディアドラとの比較についても「うーん、難しいね(笑)」と語るにとどまったが、それでもディアドラが秋華賞で2、3着に負かした馬が桜花賞2着・オークス5着のリスグラシュー、オークス2着のモズカッチャンであることを挙げながら、「本当に強くなっている」と新たなライバルの急成長を認めた。
ソウルスターリング不在となった分、この秋華賞が3歳女王決定戦と断定することはできない。だからこそ、再戦が待ち遠しい。ディアドラは順調ならば次走はエリザベス女王杯になりそう。まずはそこで、叩き上げの3歳牝馬の末脚が古馬相手にどこまで通用するのか楽しみだ。
(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)