雨も味方ディアドラ3連勝で一気の下克上 大胆イン突き、ルメールさすがの達人技だ

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ハービンジャーの血、そして成長力

ハービンジャーから受け継いだ重馬場適性、そしてタフな成長力が秋の頂点へとディアドラを押し上げた 【スポーツナビ】

 ルメールの大胆な進路取りの判断と、それに応えたディアドラの脚。そして、もう1つ、勝因としてルメールが「ラッキーだった」と挙げたのは、この日の天気と馬場だった。前日の土曜日よりもさらに強さを増した雨の影響で、淀の芝はメインレースを前にして「重」にまで悪化。22回の歴史を数える秋華賞で初めて重馬場での開催となったのだが、これがヨーロッパ競馬のチャンピオンホース・ハービンジャーを父に持つディアドラに大きく味方したのだ。

「ディアドラのお父さんはハービンジャーです。ハービンジャーもこういう馬場が得意でしたし、返し馬のディアドラのトビがこの馬場によく合ってました。だから、自信が高まりました」

 天も運も味方につけたディアドラ。と言って、もちろん、それだけでGIを勝てるほど甘い世界ではない。実力の壁を痛感させられた春二冠から、この秋での下克上へ――陣営は綿密に計画を練り、それを実行し、見事に大輪へとつなげたのだ。2007年にスズカフェニックスで高松宮記念を制して以来10年ぶりのGI・11勝目となった橋田調教師が、オークス4着からこの秋華賞獲りへのプランをこう解説した。

「秋華賞を目標に絞って、それに対応できるようにとレースを使っていきました。そもそも(獲得賞金が不足しており)秋華賞出走の権利がなかったのと、内回りに対応するために4つのコーナーがあるレースを経験させたかったので、まずは札幌へ。同じようにトライアルは2つのコーナーのローズステークスではなくて、中山を選びました。今日のレースはルメールも上手でしたが、ディアドラが器用に立ち回ることができたのは、その成果が出たかなと思いますね。成功しました」

ソウルスターリングとの比較、ルメールのジャッジは?

順調ならば次走はエリザベス女王杯へ、古馬相手でも叩き上げの末脚が炸裂するか 【スポーツナビ】

 昨年7月のデビューから14戦目。これだけの出走数がある3歳牝馬も珍しい。しかも、レースを使うごとに目に見えて強く、たくましくなった。「普通の馬だったら、こういう風には使えない。でも、ディアドラはすごくタフな馬。レースや調教を重ねるごとにプラス面を作っていける馬なんです」と橋田調教師。ルメールもこのレースがテン乗りながら、春はライバル馬の背に騎乗しながらディアドラを観察していたのだろう、目を丸くしてその成長力を絶賛している。

「春はまだ子供っぽかった馬ですけど、夏、秋になってどんどん良くなって、トップコンディションになりました。古馬が相手でも問題ないと思います。エリザベス女王杯でもチャンスがあるかもしれないですね」

“かもしれない”と曖昧な言葉で濁したのは、エリザベス女王杯ではルメールはヴィブロスに騎乗するため。内心は「厄介なライバルがまた増えた」と、それこそ思っている“かもしれない”。

 また、3歳牝馬とルメールと言えば、やはりオークス馬のソウルスターリングだ。この愛馬とディアドラとの比較についても「うーん、難しいね(笑)」と語るにとどまったが、それでもディアドラが秋華賞で2、3着に負かした馬が桜花賞2着・オークス5着のリスグラシュー、オークス2着のモズカッチャンであることを挙げながら、「本当に強くなっている」と新たなライバルの急成長を認めた。

 ソウルスターリング不在となった分、この秋華賞が3歳女王決定戦と断定することはできない。だからこそ、再戦が待ち遠しい。ディアドラは順調ならば次走はエリザベス女王杯になりそう。まずはそこで、叩き上げの3歳牝馬の末脚が古馬相手にどこまで通用するのか楽しみだ。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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