U-17日本、第3戦は“らしくない”試合に 必要なのはチャレンジャーとしての心意気

川端暁彦

勝って当然という空気の中、躍動感を見せられず

ミスが続ければ、ミスが怖くなる。日本はそんな悪循環に陥ってしまった 【佐藤博之】

 対して日本の様子は対照的だ。グループステージ突破はノルマと位置付けていたし、目標はファイナリストである。グループステージでつまずくわけにはいかない。勝って当然という空気もあった。それが最も力の落ちる相手との第3戦で、指揮官が「僕も2年半このチームと歩んできて、こんなゲームは覚えがない。躍動感のない試合になってしまった」と肩を落とすしかないほどの低パフォーマンスを見せることになってしまった。

 もちろん、第2戦から先発9名を入れ替え、第3戦は主力を休ませることを優先させたラインナップであり、これが苦戦を強いられた最大の原因であることは間違いない。特に連係面では「チームの中のイメージが合っていなくて、ドリブルしたいやつもいれば、受けたいやつもいるという感じにバラバラになっていた」とMF椿直起(横浜FMユース)が振り返ったように、どうにもかみ合わないシーンが相次いだ。「ミスが続いてくると、みんながイライラしてしまい、修正しきれなかった」(椿)という悪循環にも陥り、ムードが悪いまま時計の針が進んでいった。

 ミスが続くとミスが怖くなるという悪循環もあるのだろうが、あえて悪い言葉を使わせてもらえば、率直に言って「ビビっている」ように見える選手が多すぎた。フランス戦でもあった傾向だが、日本はあくまでチャレンジャーとしてこの大会に臨んでいるチームであるのに、何故か守りのマインドに支配されているようなプレーが出てしまう。この2試合のプレーぶりはまったく“らしい”ものではなかったし、2年半にわたって見せてきたサッカーからほど遠いものだった。無難で落ち着いたサッカーが“00ジャパン”の特長だっただろうか? 躍動感のある、チャレンジする姿勢がこのチームの色だったはずで、それを世界大会で見せないで終わるつもりだろうか。

ラウンド16は「世界を驚かすための好機」

イングランドを相手にしたときに必要なのは、あくまでチャレンジャーとしての心意気だ 【佐藤博之】

 何も怖がる必要はない。次のラウンド16の相手はイングランド。恐らく今大会で最も強いチームの1つであり、ハッキリいってこのチームに日本が負けても、誰も驚かないだろう。そして、だからこそチャレンジするチャンスであり、ずっと夢見てきた世界を驚かすための好機である。この欧州の伝統国を相手にしたときに必要なのは、守りのマインドではない。あくまでチャレンジャーとしての心意気だ。

 数万人の大観衆にあおられながら、選手たちは「国」を背負って戦うことの重みをあらためて実感しているようにも見える。だが、本来これほど幸せな舞台もない。選手たちに大舞台の幸せを感じてほしいし、思いっきり培ってきたサッカーをぶつけてもらいたい。元より弱いチームが実力どおりの力を見せているというなら何も言わないが、このチームは決して弱くない。いや、十分に強いのだ。初合宿のときからずっと見てきたからこそ言うが、このW杯という夢舞台で縮こまって戦う必要などまるでない。

 中2日で迎えるラウンド16のイングランド戦に望むのは、この強者を向こうに回す幸せ極まる舞台を存分に「エンジョイ」すること。見守ってきた側として期待しているのは何よりそういうことであるし、“00ジャパン”はこういった大舞台でこそ、それができるチームのはずだ。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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