U−17日本、初戦大勝も目指すはその先 準備と地力、タレントがかみ合った完勝劇

川端暁彦

“00ジャパン”はU−17W杯の初戦に6−1で大勝。重要な初戦を白星で飾った 【佐藤博之】

 紅茶の名産地として有名ながら、行ったことのある人は少ないインド北東部のアッサム州。その州都であるグワハティを舞台に、U−17日本代表“00ジャパン”の戦いが始まった。2000年以降に生まれた選手たちの中で「世界最強サッカー国」を決するための大舞台、U−17ワールドカップである。

 10月8日(現地時間、以下同)、森山佳郎監督率いる日本代表は、北中米カリブ海地区代表のホンジュラスと、市の中心部から少し離れた場所に位置するインディラ・ガンディー陸上競技場にて対戦。右MFとして先発した中村敬斗(三菱養和SCユース)のハットトリック、FW久保建英(FC東京U−18)の1得点1アシストなどで、6−1の大勝を収めた。「思ってもいなかった点差」(森山監督)で、日本は重要な初戦を白星で飾った。

セットプレーから先制、前半でほぼ勝負を決める

日本のスターティングイレブン。序盤は少し硬さもあったが、最初の15分を大過なくやり切った 【スポーツナビ】

 高名なインドの女性首相の名前を冠したスタジアムで始まった日本のファーストマッチ。インドの観衆が作り出す独特の雰囲気の中だったが、「わくわくしていた」(中村)という日本の選手たちに過度の緊張は見られない。もちろん、序盤は少し硬さもあったのだが、それも織り込み済み。ボール回しで無駄なリスクを背負うのではなく、シンプルに蹴り込む選択肢も入れながら、最初の15分を大過なくやり切った。元よりチーム力で劣る相手ではなく、この時間帯での“事故”を未然に防げたのは勝因の1つだった。

 戦術的にもスカウティング通りだった。ホンジュラスは日本の「心臓と肺」と言うべきボランチの2枚、平川怜(FC東京U−18)と福岡慎平(京都U−18)にマンツーマンマークを付けて呼吸を止めにきたのだが、これは想定内。変に“自分たちのサッカー”を意識して、いつもの感覚でこの2人にボールを集めていたら相手の思うツボになった可能性もあるが、「(ボランチのところを)ハメようとしてきたけれど、FWの前のスペースが空いていた」(福岡)と冷静に相手の対応を見ながら、ロングボールも選択。センターバック(CB)に左足の名手であるDF小林友希(神戸U−18)のような選手を置いている強みも生かし、シンプルな展開を使ってホンジュラスの狙いを外した。

 そして何より大きな勝因は、やはり先制点だろう。リスクを避ける流れの中で、攻撃に関しては「あまりいい時間帯ではなかった」(久保)が、サッカーにはそういうときにこそ重要になるシチュエーションがある。セットプレーだ。前半22分、右サイドからのCKで久保が狙ったのは、ゾーンディフェンスで守るホンジュラスの隙間。高速低弾道から落ちてくるボールに対し、うまくポジションに入り込んだ中村がヘッドで合わせる。180センチの長身ながら「あまりヘディングで決めることがないのに」と笑った中村だが、速いボールへ巧みに合わせたこのヘッドはパーフェクトで、日本に待望の先制点がもたらされた。

日本は前半終了間際にも久保(中央)が「得意なコース」であるニアハイへ目の覚めるような左足シュートを突き刺す 【佐藤博之】

 こうなると、試合は完全な日本ペース。30分には久保のループパスを起点に右サイドを抜け出した中村がフィジカルコンタクトで寄せてきたDFをはね飛ばし、「パスしようかと思ったけれど、GKが出てきていたので」と冷静に相手の様子を見ながら、GKもかわして左足シュートを流し込んだ。

 その後、36分にGKの不用意なキックミスからホンジュラスに与えたCKを決められてしまったものの、43分にMF上月壮一郎(京都U−18)のスルーパスを受けた中村が3度目のゴール。FIFA(国際サッカー連盟)主催の男子国際サッカー大会で日本人初のハットトリックを完成させ、試合の流れを渡さない。日本は終了間際の45分にも中村のパスから久保が「得意なコース」であるニアハイへ目の覚めるような左足シュートを突き刺し、日本が前半でほぼ勝負を決めてみせた。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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