U-17日本、フランス戦はスコア以上の完敗 ほろ苦い経験を“いいレッスン”に

川端暁彦

くじかれた日本のゲームプラン

「高温多湿」のグワハティ。日本のゲームプランはこれを利用して相手を追い詰めるというものだったが…… 【佐藤博之】

 2000年以降に生まれた選手たちの「世界一」を決するU−17ワールドカップ(W杯)インド大会は、グループステージの2巡目を迎えている。日本の属するE組では、10月11日に第2戦を実施。開幕前からグループ最強と目されていた欧州の伝統国フランスと対峙(たいじ)した日本は、1−2とスコアこそ僅差ながら、試合内容としては完敗に近い、ホロ苦い「レッスン」を受けることとなった。

 E組の第2戦までの会場であるインド北東部の都市グワハティは、東南アジアにも近い気候で、その様を一言で表してしまうと「高温多湿」。汗がまるで蒸発してくれないため、プレス席でじっとしているだけの記者陣もシャツがびっしょりと濡れていく嫌な感覚を味わいながらの観戦となる。とにかく暑い。記録上の湿度は78パーセントながら、風もないため、体感湿度はもっと高い。ピッチ上で激しく動いて戦う選手たちにとっては、当然ながら小さからぬ負荷だった。

 日本のゲームプランはこれを利用してフランスを追い詰めようというもの。「前半からボールを動かして相手を疲れさせる」(MF奥野耕平=ガンバ大阪ユース)という狙いで、ボールをしっかり保持することを意識しながらの試合運びであった。だが、これに対してフランスは強度のメリハリを付けながらのプレッシングで、日本の意図をくじきにかかる。奥野と平川怜(FC東京U−18)の両ボランチを厳しくケアして自由を与えず、中盤で日本のパスワークを引っ掛けての高速カウンターからゴールを狙い続けた。「回させられていた」とはFW宮代大聖(川崎フロンターレU−18)の弁だが、ボールは支配していても、試合を支配している感覚は持てない45分だったのは否めない。

前半は攻守でリズムが作れぬまま終了

前半13分、これまで多くのチャンスを作っていたU−17欧州選手権得点王のグイリ(9番)に先制点を許す 【佐藤博之】

 フランスは開始1分にU−17欧州選手権得点王のFWアミーヌ・グイリがスピーディーかつテクニカルな突破から決定的なシュートを放つなど、速攻がさえる。「前半の立ち上がりから相手のペースにのまれてしまった」と宮代が振り返ったとおり。前半9分にもグイリは決定機を迎え、ついに前半13分に3度目の正直でゴールネットを揺らす。得意のドリブルでDF馬場晴也(東京ヴェルディユース)をぶっちぎると、右足アウトサイドの意表をついたシュートでGK谷晃生(ガンバ大阪ユース)を破り、貴重な先制点を奪い取った。

 以降もフランスは日本にボールを持たせつつも、気持ち良く動かすことは許さない。日本を侮る空気感は皆無で、最大限に日本をリスペクトしながら、こちらの長所を消しにきた。15年にフランスホームの試合(バル・ド・マルヌU−16国際親善トーナメント)で日本が3−2と勝利したことは、日本側に自信というアドバンテージをもたらしたが、フランスが己を引き締める材料となった印象もある。堅実に分厚いフランスの対応を前にして、日本の打つ手は乏しかった。

 加えて、フランスが素早い攻守の切り替えから繰り出す速攻は、確実に日本の体力を削り取った。フィジカル的な強さやサイズに優る相手との競り合いを連続してこなすことでも体力は奪われていく。「こんなに強度の高い試合は初めて」と漏らしたボランチの奥野は、「相手のカウンターで縦に走らされて、疲れさせられてしまった」と振り返る。前半は攻守でまるでリズムがつかめぬまま、ハーフタイムを迎えることとなった。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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