Bリーグ2年目はよりハードでタフに!? 東の激化で勢力図が崩れる17-18シーズン

大島和人

初年度は「予想通り」の結果だったが……

Bリーグ2シーズン目が開幕。これまでの勢力図に変化が表れるシーズンとなるかもしれない 【(C)B.LEAGUE】

 言ってしまえば「予想通り」の結果に終わった、Bリーグ1年目だった。B1の2016−17シーズンのチャンピオンシップ(CS)で4強に残ったのは川崎ブレイブサンダース、栃木ブレックス、シーホース三河、アルバルク東京という顔ぶれ。ちょうどNBL2015−16のレギュラーシーズンにおける上位4チームと重なる。

 NBL勢の優位を脅かす動きがゼロだったわけではない。例えば1月のオールジャパン(第92回天皇杯・第83回皇后杯)を制したのはNBLの最終年度にレギュラーシーズン8位だった千葉ジェッツふなばしだ。旧bjリーグ勢もBリーグの8強に2つ残っている(編注:三遠ネオフェニックス、琉球ゴールデンキングス)。とはいえBリーグ開幕前の秩序が、大枠で崩れることはなかった。

 29日から開幕する今シーズンはその構図が間違いなく崩れるだろう。その前提として昨季はB1とB2の間で2チームの入れ替えがあった。東地区の秋田ノーザンハピネッツ、仙台89ERSが降格して西日本の2クラブが昇格したことにより、昨年の中地区1位川崎、3位サンロッカーズ渋谷が東へスライドすることになった。

 栃木、A東京、千葉、川崎、SR渋谷という昨季の8強チームが同地区に固まったことで、CS進出の難易度は劇的に上がった。

CS進出すら容易でなくなった王者栃木

北海道以外の5チームは昨季8強入りをした強豪がひしめく東地区。王者栃木を含め、CS進出はどこにとっても簡単ではない 【(C)B.LEAGUE】

 昨季の東地区、B1のCSを制した栃木だが、今季は開幕前の「コート外の戦い」で苦戦した。最大のサプライズは古川孝敏の琉球移籍で、何しろ彼はCSのMVPだ。栃木の強さを支えていたセカンドユニットからも須田侑太郎、熊谷尚也が他クラブへ移籍。また田臥勇太と伍するプレータイムを得ていたポイントガード(PG)渡邉裕規も6月末に現役引退を発表している。ジェフ・ギブスも故障者リストに入っており、復帰はおそらくシーズン終盤だ。

 加えて名将トーマス・ウイスマンヘッドコーチ(HC)も退任した。他の主力は残留したものの、この激戦区でCS進出すら容易ではないだろう。

 A東京は昨季の東地区2位で、昨季CSは準決勝で敗れた。今季は日本代表の馬場雄大が筑波大4年の最終シーズンを待たずにプロ入りを選択。安藤誓哉、小島元基と有望な若手ガードも獲得した。

 昨季の東地区3位でCSは栃木に敗れた千葉も富樫勇樹、小野龍猛の両日本代表を筆頭に、強力な陣容を維持している。新たに加入した外国籍選手のパフォーマンスは不確定要素のため、チームの「ケミストリー」が生まれるまでには時間がかかることも事実。とはいえ戦力を「足し算」すれば、A東京と千葉は栃木以上にも思える。

 東地区に移った川崎も昨季のリーグ得点王ニック・ファジーカスが残留。永吉佑也の移籍はあったが野本建吾、鎌田裕也といった「動ける2メートル級」が残っている。昨季の天皇杯とCSをいずれも準優勝で終えた悔しさも、今季に向けたいいモチベーションになるだろう。

 東地区の優勝争いは間違いなくシビアで、逆の見方をすれば「同格」のチームが無くなったレバンガ北海道は、非常に厳しい状況に追い込まれている。他地区との交流戦が30試合あるとはいえ、レギュラーシーズンの半分を昨季の8強と戦わなければならないからだ。

補強成功クラブがしのぎを削る中地区

昨季西地区を制した三河がスライドしてきた中地区。オフに充実した補強を見せたクラブが目立つ 【(C)B.LEAGUE】

 中地区は川崎、SR渋谷が抜けたものの、西地区王者の三河がスライドしてきた。今季の三河は村上直、西川貴之、松井啓十郎とガード、フォワードを手厚く補強している。比江島慎、金丸晃輔の両エースは健在だが、負荷の大きな高速バスケを目指す上で彼らのプレータイムをコントロールする必要がある。そういう狙いの感じ取れる補強だ。

 昨季は西地区4位でCS出場を逃した名古屋ダイヤモンドドルフィンズも、今季クレイグ・ブラッキンズを獲得。昨季は途中加入で滋賀レイクスターズのB1残留に貢献した元NBA戦士が加わり、ジャスティン・バーレルへの負担が減る。日本代表の張本天傑、ダンカー中東泰斗といった若手の注目株もおり、ここも優勝に絡むポテンシャルを持っている。

 また昨季は中地区2位に入った三遠がこのプレシーズンは好調。カルティエ・マーティン、ロバート・ドジャーの両外国籍選手を「小さなけが」(藤田弘輝HC)で欠きつつ、大阪エヴェッサとA東京に連勝している。日本代表センター太田敦也を筆頭にした昨季の主力を引き継ぎつつ、京都ハンナリーズから大型PGの川嶋勇人が加入したことでチームは今までと違うオプションを手に入れた。

 加えて昨季はB2降格の瀬戸際に追い込まれた横浜ビー・コルセアーズが、今季は良い補強を見せている。新人の田渡凌は京北中時代に富樫勇樹(新発田市立本丸中)とライバル関係で、高校時代も驚異的な得点力で鳴らしたPG。米国の大学で経験を積み、リーダーシップや周りを生かせる司令塔に脱皮している。彼は馬場とともに今季の新人王候補だろう。

 横浜はまた開幕直前に2009年のNBAドラフトで全体2位だったという221センチのビッグマン、ハシーム・サビートを獲得。2シーズンのブランクはやや気がかりだが、インサイドの弱さというチームの穴を埋めるには十分すぎる補強だ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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