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戦術理解は早いが、状況解決能力が低い
エスナイデルが感じた日本の特徴<後編>
エスナイデル監督が感じた日本人選手の優れた点、足りない資質とは
エスナイデル監督が感じた日本人選手の優れた点、足りない資質とは【(C)J.LEAGUE】

 今季からジェフユナイテッド市原・千葉を率いるフアン・エスナイデル監督にとって、日本人選手は従順で、戦術理解が早いと感じたという。一方で、かつてレアル・マドリーやユベントス、リーベル・プレートなど各国のビッググラブでプレーしたアルゼンチン人監督にしてみれば、予想と異なる状況に陥ったときの判断力に物足りなさを感じている。


 インタビュー後編では、エスナイデル監督が感じた日本の選手たちに足りない資質。そして日本のサッカーが発展するために必要なことを聞いた。(取材日:2017年9月6日)

サッカーでは、時に選手自身が決断する必要がある

戦術理解力が高く、従順な日本人。サッカー的には悪いこともあるという
戦術理解力が高く、従順な日本人。サッカー的には悪いこともあるという【(C)J.LEAGUE】

――シーズン始動初期の選手の戦術レベルはいかがでしたか? あなたの戦術に素早くフィットできましたか?


 はい、日本の選手は本当に理解するスピードが早いと感じました。監督の指示をよく聞きますし、基本的には従順な選手が多いです。監督としてそういうパーソナリティーを持った選手が多いことは喜ばしいことなのですが、サッカー的には悪いこともあります。サッカーというスポーツにおいては、時に選手自身がイニシアチブを握ってプレーを決断していく必要があります。戦術というのはある一定のラインまでは有効ですが、サッカーで大切なことは相手が何をしてくるかであり、相手に合わせて柔軟にプレーを変えていくことです。


 いくら事前に戦術を準備し、相手のプレーを分析していても、いざプレーした時には相手が予想と異なるプレーをしてくることがあります。そうした時に、選手は監督が試合前に指示した戦術を忘れ、状況を解決するプレーを選択しなければいけません。その点に関して言うと、私の選手もまだ苦労しています。とはいえ、戦術面については理解が早いですし、何も問題はないと思います。議論すべきテーマは、監督が話したこと以外の状況が発生した時に解決する手段を持つことです。


――従順な日本人選手を指導することは欧州、特にスペイン人を指導するよりも簡単なことですか?


 考え方によりますね。ある一定のことに関して言うと、そうかもしれません。日本で指導する方がやりやすい面はあるでしょう。ただ、私がプレーをしたスペインやアルゼンチン、イタリアといった国では選手自身の状況解決能力が高く、それは日本人選手に足りないところですので、その面では物足りない部分もあります。


――日本人選手の状況解決能力の低さは育成年代における戦術指導不足によるものだとお考えですか?


 戦術ではなく教育の問題です。日常生活からも感じますが、日本人はとても模範的で教育された民族です。そうした国で生活することはとても心地良いもので、私は日本という国をとても気に入っています。私自身も日本人に近い性格を持っていますし、ルールや規則を遵守する社会は素晴らしいと考えています。


 ただし、サッカーはそうではありません。ルールはありますが、オーガナイズされていないカオスな状況が多々発生するスポーツです。時に選手というのはイマジネーションを発揮しなければいけませんし、自分1人の力で困難な状況を解決しなければいけません。ですので、日本人がサッカーに適応するのは簡単なことではないと思います。

コンセプトの融合で、日本サッカーは発展する

コンセプトを融合することで日本のサッカーは発展する。国内でプレーする優秀な外国人選手も必要だという
コンセプトを融合することで日本のサッカーは発展する。国内でプレーする優秀な外国人選手も必要だという【(C)J.LEAGUE】

――ということは、日本の社会から欧州で通用するコンペティティブな選手を輩出することは難しいことなのでしょうか?


 近年、海外でプレーする日本人選手が増加しているので、その点については彼らが大いに貢献してくれるでしょう。海外に行って異なるコンセプトのサッカーに出会った時、日本人選手は素早くそれを理解し、習得します。そうした選手たちが代表で他の選手に異なるコンセプトを伝え、さまざまなコンセプトが融合することで日本のサッカーは発展していく。それはとても重要なことです。


――できる限り若い年齢で海外挑戦した方がいいという考えはお持ちですか?


 確かにそうなのですが、一方で日本で成長するチャンスを捨てて無謀に海外へ行く必要はないと思います。世界のサッカーを見渡した時に、強国というのは必ず多くの選手が海外でプレーし、異なるコンセプトを持ち帰り、内外のコンセプトを融合させています。


 今、日本代表でプレーする選手の多くが海外でプレーしていることは、日本のサッカーにとってとても重要なことです。その国のサッカーを成長させていくためには外に出ていって学び、異なるコンセプトを持ち帰ってくる選手が必要ですし、同時にそうしたコンセプトを持ち込むことのできる優秀な外国人選手も必要です。

サッカーから全てを与えてもらっている人生

――あなたの人生にとってサッカーとはどういう意味を持ちますか?


 全てです。私からサッカーを取ったら何が残るか分かりません。4歳でサッカーを始め、そこからずっとサッカーとともに生きています。サッカーと関わりを持たない人生を想像できません。


 また、サッカーをしてきたことでいい教育を受けることもできました。サッカーのような団体スポーツには、特に教育的効果があります。サッカーによって成長できたし、サッカーから全てを与えてもらっている恵まれた人生です。


――加えて、あなたは選手として複数の国でプレー、生活をしています。それもあなたの人生を豊かにしてくれたのではないですか?


 本当にその通りです。私はサッカーに限らず、人間というのは自分の生まれ育った国以外の土地で生活できる機会があるのであれば、積極的に行くべきだという考えを持っています。異なる文化、言語に出会うことで、人として成長できます。

小澤一郎
小澤一郎
1977年、京都府生まれ。サッカージャーナリスト。早稲田大学卒業後、社会人経験を経て渡西。バレンシアで5年間活動し、2010年 に帰国。日本とスペインで育成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論やインタビューを得意とする。多数の媒体に執筆する傍ら、サッカー関連のイベントやラジオ、テレビ番組への出演も。主な著書に『サッカー日本代表の育て方』(朝日新聞出版)、『サッカー選手の正しい売り方』(カンゼン)、『スペインサッカーの神髄』 (ガイドワークス)、主な訳書に『ルイス・エンリケ』(カンゼン)、『ネイマール 若き英雄』(実業之日本社)など。2月20日に発売となった大儀見優季『結果を出すための「合わせる」技術』では構成を担当。(株)アレナトーレ所属

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