安定感取り戻した前田健太に再び試練!? プレーオフで先発ローテに入れるか

丹羽政善

7月中旬から先発復帰

7月下旬から先発ローテに復帰し、安定感を取り戻しているドジャース前田。今回の原稿では、今後プレーオフでどのような役割を求められているのかを探る 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 登板前日の8月30日(現地時間)の試合前、ドジャースのクラブハウスで地元記者と話していると、前田健太が戻ってきた。地元記者がすれ違いざま、「明日投げるんだよな」と英語で話しかけると前田は、人差し指を唇にあてた。

「アァ〜ヒミツネ」

 地元記者が、今度は片言の日本語で答えると、前田は苦笑で応じる。先発予定日を探る日本人記者の前では、ということのようだが、そういうことがニュースになったのは過去の話。実際、翌日の先発が決まっていたが、ある時から、その地元記者と前田の間で、そんなやり取りが交わされるようになったそうだ。

 その前田だが、いまやすっかり先発陣の一員である。後半に入り、7月19日に先発すると、そのままローテーションに加わり、しかも結果を残してきた。

 8月31日のダイヤモンドバックス戦こそ、3回を投げて8安打、7失点でKOされたが、それまでの7試合では、39回1/3を投げて、5勝1敗、防御率2.52、被打率1割8分1厘とリーグでも屈指の安定感を誇った。

 先月25日、ブリュワーズとの試合後には、一時期は前田を先発ローテーションから外したドジャースのデーブ・ロバーツ監督もこう話している。

「マエダは慎重に行き過ぎるときもあったが、彼が積極的に攻めている時は、特別だ。それぞれの球、制球は素晴らしい。もし彼が、自分の球をこうして信じて投げ続けられれば、メジャーの打者をこれからも抑え続けるだろう」

首脳陣は負けず嫌いの性格を評価

 前田は、完全に監督の信頼を回復した。その過程では、メンタルの強さも証明している。

 序盤は結果が出ず、6月4日の試合を最後にリリーフに回った前田。その後、ケガ人などが出れば先発を任され、そこで結果を残しても、次が保証されないという状況が続いた。その間、起用が不定期のため、調整のリズムさえつかめない。それでも集中力を切らすことはなく、先発で起用されれば、前田は答えを出し続けた。

 その裏には期すところもあったのではないか。初めてリリーフ登板し、4回を3安打1失点に抑えると、初セーブをマークした6月9日の試合後、前田はそれを素直に喜ぶことを拒否した。

「そんなにうれしくない」

 8月25日のブルーワーズ戦後、NHKのインタビューでは、「リリーフに回って少し力強さが戻った」と答えたが、その前に「あんまり、こういうふうに言いたくないんですけど」と前置きしたあたりに、彼の意地が透けた。

 ただ、そうしたむこう気の強さ、負けず嫌いの性格を、いまやドジャースの首脳陣はプロ向きのメンタリティだと、評価しているのではないか。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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