W杯予選で招集された日本代表を振り返る コンディション重視、明確なハリルの基準

固定的な起用が目立つDF、森重にも復帰のチャンスはある

【データおよび画像提供:データスタジアム】

 センターバック(CB)は先にあげた吉田と森重真人のコンビがファーストセットであり、特に最終予選は第7戦目となるホームのタイ戦まで同じ組み合わせだった。そこからアウェーのイラク戦に向けたメンバーに森重は選ばれず、代わりに三浦弦太を初選出。スタメンには現体制で一度も出場のなかった昌子源を抜てきした。その昌子は親善試合のシリア戦で吉田との連係不足から大きなミスをしてしまったが、イラク戦では中東の厳しい環境においても明らかな改善が見られた。

 吉田と森重は持ち場で頑張ることはできても、周囲を機敏にカバーすることは難しい。その意味で計算の立ちやすい昌子に加えて三浦、植田直通といった身体能力の高い若手CBが選ばれるのも自然な流れではあるが、森重が戦力として見限られたとは言い切れない。特に吉田に何かあった時は最も頼りになる選手の1人であることに変わりはないからだ。

 現在は負傷で離脱しており、若い選手たちが順調に経験を積んで成長を示せば、本大会まで呼ばれなくなる可能性もある。ただし、かつて指揮を執ったアルジェリア代表においても予選中に一度外したベテランをのちに呼び戻したケースもあり、コンディションや構成上のニーズなどが合えば、森重にも復帰のチャンスは十分にあるだろう。

 サイドバック(SB)は“ザックジャパン”から代表に定着してきた内田篤人、長友佑都、酒井宏樹、酒井高徳の4人から内田がけがで長期離脱し、指揮官も主にJリーグから多くの近縁種(きんえんしゅ)を呼んで試したが、なかなか定着しなかった。最終予選のラスト2試合では、CBが本職の槙野智章をSB枠に回している。基本線は右が酒井宏、左が長友で、彼らのどちらかに問題があれば酒井高が埋めるという関係だ。

 ただ、DFラインは左右SBをこなす酒井高が8試合、CBと左SBのマルチである槙野が4試合に使われているが、招集されても試合に使われなかった選手も多い。特に公式戦が続く最終予選期間は、固定的な起用が目立つ流れになっていることも確かだ。

シビアな決断を下したGKの人選

【データおよび画像提供:データスタジアム】

 GKは2次予選の初戦となったシンガポール戦を除き、西川周作がスタメンを張ってきた。だが、3月に行われた最終予選アウェーのUAE戦で経験豊富な川島永嗣に変更すると、6月のイラク戦からは、西川を招集メンバーからも外している。ハリルホジッチ監督がセットプレーからの失点を嫌う中、西川は最終予選ホームのUAE戦で直接FKをボールに触りながら止められなかったという問題がある。しかし、アウェーUAE戦前のサウジアラビア戦で大きなミスをしたわけではなく、むしろ終盤に日本を救うビッグセーブもあった。

 西川がスタメンだけでなく代表メンバーからも外れるようになった理由は、Jリーグや合宿で見せたパフォーマンスによって評価が下がったとしか考えられない。もちろん、同時期に若い中村航輔が台頭してきたこともあるが、時には非常にシビアな決断を下せる監督であることの象徴的な事例だ。

すべては所属クラブでのパフォーマンスにかかっている

アルジェリア代表でも予選突破後に新たな選手を発掘した。今後も所属クラブでのパフォーマンスが重要となる 【写真:高須力】

 予選全体を振り返ると16年10月のイラク戦で後半アディショナルタイムに山口蛍が起死回生のゴールを決めて勝利したことが非常に大きかった。あの試合で勝ち点3を拾えなかったら、その後の戦いはさらに苦しいものになっていただろう。さらにはキャプテンの長谷部誠を欠いた今年3月のアウェーUAE戦も大きかった。今野泰幸と川島の活躍がなければ勝利は難しかったが、彼らの起用法を含め、イラク戦に比べるとロジカルな勝利でもあった。

 選手起用に関しては16年11月に行われたホームのサウジアラビア戦も印象的だった。ここまで継続的に先発で起用してきた香川と本田をベンチスタートさせ、親善試合のオマーン戦で結果を出した大迫と久保をスタメンに抜てき。まさしく彼らの活躍が勝利につながった。

 予選の中でもタイミングを見ながら、時に大胆な選手起用をしてきたハリルホジッチ監督。アルジェリア代表ではアフリカ予選を突破した後に新たな選手を発掘し、当時19歳のナビル・ベンタレブやイングランドのチャンピオンシップ(実質2部)所属だったレスターからリヤド・マフレズを大抜てきし、そのまま本大会に連れていっている。

 W杯出場を決め、ここから指揮官が本大会に向けてどういう選手起用をしていくのか興味深いが、選出されるかどうかは各選手の所属クラブでのパフォーマンスにかかっていることは間違いない。

(テキスト:河治良幸、グラフィックデザイン:安川裕三)

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