問題がぶり返したレアル、改善しないバルサ 開幕直後に浮かび上がった両チームの課題

パウリーニョ獲得も、変わらないバルサの問題

今季バルセロナに加入し活躍が期待されるパウリーニョ 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 一方のバルセロナは開幕2連勝と好スタートを切ったものの、議論されているテーマは変わっていない。

 もはや今のバルセロナはかつてわれわれを魅了したチームではなくなった。リオネル・メッシが持つ天分の才能、セルヒオ・ブスケツの品格、ルイス・スアレスの得点能力といった他にはない武器は今も健在だ。ただベテランの域に達したアンドレス・イニエスタは、当然ながら全盛期ほどの活躍はできなくなってきている。さらにネイマールが去り、イバン・ラキティッチも長らく本来のパフォーマンスを取り戻せずにいる現状、チームは新たな刺激を必要としていた。

 いずれにせよ、例えばパウリーニョの獲得は何年も前から少しずつ変化してきたバルセロナのプレースタイルに大きな影響を与えることはないだろう。メッシ、スアレス、ネイマールの3人が前線に並ぶようになって以降、バルセロナは彼らの破壊力を最大限に生かすべく、より縦に速く攻める展開を重視するようになってきた。その点、快速ドリブラーであるウスマン・デンベレには、早くもパリ・サンジェルマンでリーグ1でのプレーを楽しんでいるネイマールを失ったショックを忘れさせるような活躍が期待されている。

 バルセロナはテクニックに優れ、攻撃の組み立てにも貢献できる選手も獲るべきだった。イニエスタの動きが遅くなり、不安定なパフォーマンスを見せるようになっている現状、中盤でのボール支配から遅攻を繰り出していくかつてのプレースタイルを取り戻すためには、フィリペ・コウチーニョのような選手が必要だった。だが残念ながら、彼の移籍は所属するリバプールが許さなかった。

 バルセロナはチームの総合力も問題視されている。これまで何度も本稿で訴えてきたとおり、バルセロナは先発組に匹敵するレベルのバックアッパーをレアル・マドリーほど多く擁していない。今夏はジェラール・デウロフェウ、ネルソン・セメド、パウリーニョ、デンベレが新たに加わったものの、全てのポジションに先発組と同等のプレーレベルを保証する選手がいるわけではない。

 その点についてはバルベルデ監督が効率的なチームマネジメントを見いだし、国内外のタイトルレースから脱落せぬよう、そして何よりチームの絶対的リーダーであるメッシを消耗させぬよう、現有戦力をフル活用していくことが重要になる。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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