問題がぶり返したレアル、改善しないバルサ 開幕直後に浮かび上がった両チームの課題

早々に勝ち点2を失ったレアルとアトレティコ

開幕2連勝でライバルの2クラブに勝ち点2差をつけているバルセロナ 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 早くもリーガ・エスパニョーラでサプライズが生じている。

 第2節終了時点で、早くもレアル・マドリーとアトレティコ・マドリーが勝ち点2を失った。もちろんあと2、3節も消化すれば、順位表の上部には近年のそれとよく似た名前が並ぶことになるかもしれない。だがこれが多くの人々にとって予想外の幕開けとなったことは確かだろう。

 現時点では危機的状況にあるはずのバルセロナが2連勝し、ライバルの2クラブに勝ち点2差をつけている。だがここまでの結果以上に、最終的に今季のバルセロナとレアル・マドリーのどちらがより優れたチームとなるのかを見極めるためには、議論すべき要素がいくつか出てきている。

 両チームを率いるジネディーヌ・ジダンとエルネスト・バルベルデにとって、ちょうど世界各地でワールドカップ予選が行われるリーグ戦の中断期間を迎え、夏の移籍市場が終わりを迎えたこのタイミングは、2017−18シーズンの立ち上がりを評価する良い機会だと言える。

 ジダンが世界中を見渡してもまれなほど潤沢な戦力を擁していることは確かだ。ただ、だからといって全てがうまくいくとは限らない。それはバレンシアに足元をすくわれたホームの第2節(2−2)が物語っている。内容的には十分勝利に値する試合だったが、クリスティアーノ・ロナウドとセルヒオ・ラモス、ラファエル・バランらの欠場で先発メンバーの大幅な入れ替えを強いられたこともあり、不安要素を露呈する時間帯もあった。

 すでにペペがチームを去り、ファーストチョイスのラモスとバラン、さらに若いヘスス・バジェホもけがで欠いたこの日、ジダンはナチョとカゼミロをセンターバックに起用した。だがカゼミロのポジションを下げる決断は、意図せずしてラファエル・ベニテス前監督時代に抱えていた問題をぶり返すことになってしまう。

悩ましい先発メンバーのチョイス

引き分けとなったバレンシア戦で、ジダン監督は大幅なメンバー変更を強いられた 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 当時はトニ・クロースがアンカーを務め、その前でイスコやハメス・ロドリゲスが攻守のつなぎ役を担っていた。だがそれがクロースのベストポジションでないことは、カゼミロに中盤の底を任せて守備の負担から解放され、1つ前のポジションで持ち前のテクニックとゲームメーク能力を発揮するようになったことからも明らかだった。

 バレンシア戦の大幅なメンバー変更はけがや出場停止によるところが大きく、ジダンは昨季までのベースに手を加えようとしているわけではないと考えるのが自然だろう。とはいえ機能していた中盤は維持し、他の選手で補う方法もあったと思う。この日の中盤はクロースが本職ではないポジションでのプレーを強いられただけでなく、体調不良によりハーフタイムに交代したイスコも他の試合で見せてきた輝きを発することができなかった。

 マルコ・アセンシオを先発起用すべきとの意見も急速に高まっている。彼が目覚ましい活躍を見せるたび、厳しい目にさらされているのがギャレス・ベイルだ。ベイルほどの選手をベンチに置き続けることは難しい。ゆえにジダンがローテーション起用を繰り返しながらプレー時間のバランスをパーフェクトに保たない限り、彼が主要リーグの移籍市場が閉まる8月31日以降に異なるユニホームを着ることになっても不思議ではなかった。

 アルバロ・モラタをチェルシーに放出したことも良い決断だったとは思えない。バレンシア戦でゴールチャンスを逃し続けていたカリム・ベンゼマは、ポジション争いにおける直接の競争相手がいなくなったことで、良い意味での刺激を失ってしまったように思える。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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