清宮幸太郎に見た心地いいリーダーの姿 日本代表主将としての自覚十分

清水岳志

地方大会後1カ月弱で進化

日本代表でもいつもと変わらぬ姿でチームを引っ張る清宮(写真右) 【写真は共同】

 8月下旬、スポーツ紙の1面で清宮幸太郎(早稲田実)の扱いが増えていた。9月1日にカナダで開幕する「第28回WBSC U−18 ベースボールワールドカップ」に出場する高校日本代表の合宿が行われていたからだ。
 夏の甲子園はホームランの最多本数が話題になった。広陵・中村奨成の新記録に沸いたが、その陰で1カ月弱、清宮も進化していた。「早稲田実の練習にお邪魔させてもらってました」。ずっと木製バットで打ち込んでいたという。

 合宿初日の練習は22日午後。日本大のグラウンドで行われた。ストレッチやリズム感を養う体操をした後に打撃練習が始まる。清宮は60スイングで11発のスタンドイン。安田尚憲(履正社)らほかのバッターがほとんどフェンス越えをしない中、違いを見せつけた印象だ。

 順番を待つ間には、ほかの選手とバット談義をしたり、笑顔が見られた。ここで小枝守監督が寄ってきてアドバイスをするシーンも。監督は「木製は金属と違って交通事故(たまたまのヒット)はないよ、と。また、バランス、手首の返しなどの話をした」という。「彼は聞く耳を持っているのでコーチの話もきいて咀嚼(そしゃく)してやってる」。清宮も2日後、「バットの返しでこねちゃうところがあるので(参考になった)。アドバイスをもらって新鮮だった」とこの時のことを振り返っている。

代表合宿でもいつもと変わらぬ姿

 それからシートノック。ファーストに入った清宮は早くもナインをリードする。内野ゴロの一塁送球で、サードゴロには、「はい、安田っ」。ショートゴロには「はい、小園(海斗/報徳学園2年)っ」。セカンドゴロには「はい、鯨井(祥敬/東海大市原望洋)っ」というように名前を呼んで送球を受けていた。

 清宮以外の選手は緊張していたのかもしれない。フリーバッティングが活発ではなかったり、掛け声も控えめだった。それを思うと、清宮にいつもと変わらない物おじしない存在感が漂っていた。

 この翌日、すぐに主将に任命された。清宮は初日から言っている。

「2年前のこの大会に呼ばれたのは1年生で自分だけ。2年後にこの経験を伝えてくれと、西谷(浩一)監督(大阪桐蔭/2年前の代表監督)にも言われていました。そんな役割をできるようにしたい」

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著者プロフィール

1963年、長野県生まれ。ベースボール・マガジン社を退社後、週刊誌の記者を経てフリーに。「ホームラン」「読む野球」などに寄稿。野球を中心にスポーツの取材に携わる。

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