【ボクシング】絶頂期にいるクロフォードが王座防衛 “パッキャオ戦”実現はアラム氏の手腕に
WBC、WBO世界スーパーライト級王者のクロフォード(右)は、ディアスの挑戦を振り切り、王座防衛に成功した 【Getty Images】
現地時間5月20日(日本時間21日)、米国ニューヨークのマディソン・スクウェア・ガーデン(MSG)で行われたプロボクシングのWBC、WBO世界スーパーライト級タイトル戦で、王者テレンス・クロフォード(米国)はフェリックス・ディアス(ドミニカ共和国)に10ラウンド終了TKO勝ち。いつも通り、序盤に挑戦者の動きや距離を見切り、中盤以降に料理するというクロフォードらしい試合運びだった。
機が熟したクロフォード 次戦の相手を自ら指名
試合後にははっきりと対戦希望する選手の名前を挙げていった 【Getty Images】
「(ディアス戦の出来は)素晴らしかった。『HBO』(米国のケーブルテレビ局)の興行に初めて起用したときから、彼は最高の選手の一人になると分かっていた。今夜もタフな選手と対戦したのに、簡単に勝ってしまった。クロフォードは向上している。今夜の彼のパフォーマンスを誇りに思うよ」
クロフォードを傘下に収めるトップランク社のプロモーター、ボブ・アラム氏もこの日の出来には満足したようだった。
クロフォード自身も機は熟したという思いがあったのだろうか。普段はビッグマウスにはほど遠い29歳の王者が、リング上で珍しくはっきりと対戦希望する選手の名前を挙げていった。
「(マニー・)パッキャオ戦が難しかったら、(ジュリアス・)インドンゴがここに来てくれている。インドンゴと(統一戦を)やろうじゃないか。(パッキャオが対戦希望かどうかは)分からない。僕はファイターであり、対戦交渉はプロモーターのボブ・アラム次第だ」
ナミビア出身のインドンゴは先月にWBA、IBFスーパーライト級王座を統一し、まったくの無名から一気にトップ戦線に浮上した22戦全勝(11KO)のサウスポー。クロフォードとの4団体統一戦が実現すれば、注目のファイトになりそうである(指名戦の関係でIBFタイトルは早々に返上、剥奪の噂もあるが……)。
パッキャオ、インドンゴ以外では、ウェルター級に昇級してキース・サーマン(米国)と戦いたいとの意向も話していた。このどれが成立しても、ファン垂涎のカードではある。ただ、その中でもやはりパッキャオ戦が実現するかどうかがクロフォードのキャリアの鍵になることは間違いない。
全国区の知名度を得るにはビッグネームとの対戦が必須
アンソニー・ジョシュア(イギリス)、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)、サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)らがトップ候補。実力だけで言えば、クロフォードもその中に含まれてしかるべきだろう。
「僕は経験を積み重ね、プロとしてリングでやるべきことが分かってきている。試合前には今戦は僕にとって最も難しいファイトになると言われた。ただ、自分ではそれは分からなかった」
ディアス戦でのそんなコメントからは、今まさに“ピークにいる者”の自信が感じられた。無敗のままライト、スーパーライト級の2階級を制した万能派スピードスターは、ロマチェンコとともに、近未来のパウンド・フォー・パウンド1位に最も近い位置にいるのではないか。
ただ……そんなクロフォードも、人気、知名度の面ではまだ最高級とはとても言えない。職人気質の派手さに欠けるスタイル、メディア嫌い、話し下手といった要素がその原因。地元のネブラスカ州オマハ以外にファンベースは乏しく、比較的地味な存在に甘んじてきた。
米最大のメガケーブル局「HBO」の後押しを受け、ディアス戦では“聖地”と呼ばれるMSGの大アリーナに初登場を飾った。この日は8026人のファンを動員し、また大きな一歩を踏み出したことは間違いない。しかし、全国区の存在になるには、さらに大きなアピールが必要。具体的には、ビッグネームを相手にした大イベントの主役となることが不可欠である。