【ボクシング】階級最強決定戦に勝利したクロフォード ウェルター級昇級で新たな強敵探しへ

杉浦大介

「パウンド・フォー・パウンド」トップ争い3強の1人に

「トレーニングキャンプを通じてボディ打ちの練習をしてきた。キャンプは厳しいものだったけど、今夜、そこでやってきたことがすべて出せた」

 終了後のリングでそう語ったクロフォードは、実際にこの試合で底力と多彩な能力を改めて印象づけたと言える。

 スイッチヒッターのクロフォードは、今戦を通じてサウスポーを選択。やや流れ気味の相手のパンチに、初回から軽々と左右のパンチでカウンターを取っていた。敵地のビッグファイトゆえにインドンゴに硬さがあったことを考慮しても、クロフォードのスキル、スピード、適応能力は見事だった。

 統一王者とのファイトを、まるで“ミスマッチ”に見せた強さは脅威。戦績を32戦全勝(23KO)に伸ばした2階級制覇の行く手には、極めて明るい未来が広がっていることは間違いない。

「アンドレ・ウォード(米国)は僕のフェイバリット・ファイターの一人。しかし、僕は彼をも乗り越えなければならない」

 ESPNのアナウンサーからパウンド・フォー・パウンド(※階級の枠を超えて最強を決めるランキング)のトップ争いについて聞かれた際、クロフォードはそう答えていた。

 実際に“全階級を通じてベスト”の称号は、今後はWBA、IBF、WBO世界ライトヘビー級王者のウォード、WBO世界スーパーフェザー級王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)、そしてクロフォードが争うことになるのではないか。そんな地点まで辿り着いたからこそ、オマハのスナイパーの近未来が余計に気にかかる。

早期昇級で中量級の主役に

ウェルター級昇級となれば、ホーン(左)、パッキャオといった強敵が対戦相手として待つことになる 【Getty Images】

 せっかく4団体を統一したが、クロフォードは“スーパーライト級唯一無二の男”の称号を長く保持はしないだろう。

 この階級にはもう稼げる相手がいないこともあり、ウェルター級への早期昇級が予想される。ボブ・アラム・プロモーターは、11月にも予定されるWBO世界ウェルター級王者ジェフ・ホーン(オーストラリア)対マニー・パッキャオ(フィリピン)による再戦のリングサイドにクロフォードを連れて行きたい意向だという。パッキャオ対クロフォードの“世代交代戦”はしばらく待望され、アラムが最も望んでいるのもこの一戦に違いない。

 しかし、例えホーンへのリベンジを果たした後でも、現時点では惨敗のリスクが大きいクロフォード戦を38歳のパッキャオが受けるかどうか。パッキャオ、ホーンとの対戦が難しかった場合、クロフォードはWBAスーパー王者でWBC王者のキース・サーマン、IBF王者エロール・スペンス・ジュニア(ともに米国)とのプロモーターの垣根を超えたビッグファイトを目指すのか。

 これまでやや地味なイメージがついて回ったが、ESPNで全米中継されたインドンゴ戦で圧勝したことのインパクトは大きいはず。このクロフォードの参戦で、ウェルター級はさらに活気付く。WBCライト級王者ミゲル・アンヘル・ガルシア(米国)とのスーパーライト級での激突でも実現しない限り、より役者が豊富な1階級上に進んだ方がクロフォード本人、業界の両方にとってベターだろう。

 インドンゴとの4団体統一戦はゴールではなく、次なるチャプターへの通過点。実力的には今まさにピークにいるクロフォードが、今後しばらく中量級の主役であり続けることは間違いなさそうだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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