ブロックを知れば、バレーはさらに面白い 「コミット」「リード」って、知ってる?

田中夕子

ブロック決定本数の少ないチームがリーグで1、2位の不思議

「どれだけボールを多く触っているかは、いいブロッカーの1つの指標」と小林監督 【スポーツナビ】

 昨シーズンのVリーグの公式記録を見て、ブロックの決定本数に順位との相関関係があるのかを調べていくと、実はそうではない (昨季優勝の東レは、ブロック決定本数で全8チーム中7位、準優勝の豊田合成トレフェルサは同6位) 。特に、ここ2シーズンはブロックの決定本数と勝利数は全く相関がないことが分かりました。そこで、チームで独自に集計しているデータを見ていくと、勝利と相関するブロックの数字はブロックタッチの本数でした。ブロックの決定本数よりも接触を数多くしているチームが上位に食い込んでいるということは、リードブロックの技術が非常に大切だという裏付けでもあります。

 派手に見えるキルブロックだけではなく、どれだけ触っているか、相手のアタッカーはブロックを避けようとどれだけミスをしているのか、そしてブロックを嫌がって抜けて来たボールをどれだけつないでいるか。ブロックで点を取った、という直接的な見方だけでなく、そこまで広げていくと、面白い見方ができると思います。

 今のVリーグでリードブロックにこだわって鍛え続けているのがクリスティアンソン・アンディッシュ監督率いる豊田合成です。ミドルブロッカーの近裕崇選手、傳田亮太選手はそれほど身長が高いわけではありませんが、ブロックタッチの本数はリーグでもトップ3に入る優れたブロッカーです。

 つまりリードブロックは身長がなくてもできるものなのですが、「リードブロック=高身長の選手がやる技術」、という間違った認識がまん延していることで、リードブロックの技術を得ずに成長する選手があまりにも多過ぎます。日本のブロックレベルが上がらない一因として、リードブロックをきちんと理解した上でのトレーニングを幼少期からやっていないというのも1つでしょう。特にアンダーカテゴリーではコミットブロックを重要視する傾向もあり、止めることが一番だという思い込みも強いのではないでしょうか。トップカテゴリーも含め、今もまだ日本はリードブロックを育成している最中と言っても過言ではありません。

ブロックとデータの関係

 戦略、戦術を立てる上でデータは不可欠で試合中もたくさんのデータを蓄積していますが、データだけに惑わされるとブロックは失敗します。なぜならデータは、多く取れば取るほど傾向が出ますが、将来を確実に約束するものではないからです。

 例えば、攻撃が3カ所あったとします。データではAが60%、Bが30%、Cが10%という傾向が出ているので、まずは当然ながら「一番多く上がる60%のところを中心に守ろう」と考えます。ところがAに上がる確率が60%であっても残り2カ所に上がる確率40%を無視してもよいのでしょうか。試合の序盤や中盤でデータを元にしたコミットブロックなどを仕掛けていくことも戦術的には効果的ですが、コミットブロックは相手の状況には関係なくヤマを張って跳ぶわけですから、成功し続けるということはあり得ません。

 ですから、基本的にデータはリードブロックを行う際の判断スピードを速めるためのツールとして利用するのが適当と考えています。

 全日本でもデータを元にオプションブロックといって、攻撃本数の少ない箇所を消し、攻撃してくる可能性が高い場所を重点的に守るシステムも取り入れていますが、相手がこれまでと全く違う特徴を現したときはあっという間に機能不全に陥ります。それならばまず、サーブで攻めて攻撃枚数を2枚にしよう、1枚にしようと考え実践したのが昨年の東レであり、近年のバレー界全体の傾向でもあります。

 試合の中で状況は目まぐるしく変化します。ですから戦術はなるべく簡単にしていかなければならない。やりやすい状況を選手に与えて、戦術の成功率、精度を高めていくことが大切であり、データが大量にあるからこそ与える情報はシンプルにしていく方がうまくいくと思っています。

Vリーグでブロックがうまい選手は……?

日本を代表するブロッカー、東レの富松 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 ブロックは相手がアタックを打ってくる位置に、きれいな形でいればいいのですが、そのためには判断力、スピードやジャンプ力、形が正確であるためのボディバランスの良さも必要です。これらが組み合わさってブロックが完成するので、そのすべてを兼ね備えているのがいいブロッカーといわれる選手です。

 日本人の中でブロック技術が高いのは富松崇彰(東レ)選手です。ゲスブロックの数を最小限に減らし、なおかつブロック接触の本数が多い。富松選手はどちらの技術も備えています。特に昨シーズンは必ず富松選手のサーブから始まるローテーションだったので、前衛でプレーする回数は対角の李博(東レ)選手に比べると絶対的に少ないのですが、それでも一番触っているのは富松選手。ブロック技術は飛び抜けて高いですね。

 オポジットでは清水邦広選手(パナソニックパンサーズ)。特にBクイックに対するリードの技術、クイックがないと思えばそこを見切ってサイドに上がったボールをブロックする技術はオポジットの中でナンバーワンです。サイドの選手は(ミハウ・)クビアク選手(パナソニック)がダントツ。昨季限りで引退した高橋和人選手(元ジェイテクトSTINGSほか)も身長はそれほど高くありませんが、技術に長けた素晴らしいブロッカーでした。セッターでは深津旭弘選手(JTサンダーズ)がブロック接触もキルブロックもどちらも多い。ポジション取り、形のつくり方もとても優れています。

 試合を見ながら「この選手はよく触っているな」という選手はゲスブロックが少ない。うちの李選手のようにゲスブロックが多い選手と比べると、違いがよく分かるはずです(笑)。触る本数が多いほどブロック技術が優れていると思っていただいて間違いない。ミドルに限らず、ブロックタッチの技術を高めていくのは強いチームになるために必須だと思います。

観戦で着目したいポイント

縦から見るとアタッカーやブロッカーの動きが分かりやすい 【写真:ロイター/アフロ】

 横からではなく縦で見て下さい、ということですね。ブロックの動きや、相手のスパイクがどこを抜けたのかなど、戦術的な考えがよく分かるはずです。これはテレビ中継ではなかなか難しいかもしれませんが、テレビ局の方にも声を大にして言いたいですね。ブロックやバレーボールの面白さを知るためにもぜひ縦から見てみて下さい。

(グラフィックデザイン:藤井由佳)

小林敦(こばやし・あつし)

2012年6月より東レアローズ男子バレーボール部監督。16−17シーズンはチームを8年ぶりのV・プレミアリーグ優勝に導き、優勝監督賞に輝く。現役時代は東レに所属し、チーム、全日本男子でもキャプテンを務めた。当時のポジションはミドルブロッカー。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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