ネイマールの移籍がバブル崩壊の転機に? 止まらない移籍金の高騰と「ドミノ現象」

ネイマールの移籍が「ドミノ現象」を生む

ネイマールの移籍が新たな移籍を生み出す可能性が高い。写真はバルセロナの獲得候補とうわさされるコウチーニョ(右) 【写真:ロイター/アフロ】

 ネイマールのPSG移籍がもたらしたもう1つの影響は「ドミノ現象」だ。彼の移籍が新たな移籍を生み出し、それがまた新たな移籍を生み出していく。ひとたび動き出した連鎖には終わりが見えない。ネイマールの売却によって多額の補強資金を得たバルセロナが他のスター選手を獲りにいく。そしてバルセロナにスター選手を引き抜かれたクラブがまた、手にした多額の補強資金をもって新たなスター選手を獲りにいく。一度生じてしまった流れを止めることは不可能なのだ。

 例えばバルセロナがネイマールを失ったファンのフラストレーションを穴埋めし、またクラブの権力が失われていないことを証明するために1億ユーロ(約129億円)以上を投じてコウチーニョを獲得したとする。そうなれば今度はリバプールがその資金を使ってコウチーニョの代役を獲得し、他のクラブの財政を潤わせることになるわけだ。

 81年、ボカ・ジュニオルスは400万ドル(約4億4000万円)の移籍金に加えて数選手の期限付き移籍まで含め、アルヘンティノス・ジュニオルスからディエゴ・マラドーナを買い取った。当時監督として活躍していた故ホセ・パストリサは、支払われた移籍金について「猥褻な額」と表現していた。92年、ローマ教皇庁の半公式新聞である『オッセルバトーレ・ロマーノ』は、トリノからミランに移籍したジャンルイジ・レンティーニの移籍金1300万ポンド(約18億5000万円)について同じように形容していた。それが現在、これらの数字はフットボール界の移籍金としては冗談のような金額となってしまった。

 そんな現状で生じたネイマールのPSG移籍は、フットボール界の移籍金バブルを崩壊に導くターニングポイントとなりそうだ。

※移籍金は推定で、日本円は17年8月13日現在のレートで換算

(翻訳:工藤拓)

2/2ページ

著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント