期待の星・遠藤翼の前に立ちはだかる壁 層の厚いトロントで出場機会を得られず

杉浦大介

フォーメーションの変更から徐々に役割を失う

壁にぶつかる中で、米国のレジェンドであるブラッドリー(左)からのアドバイスは印象に残ったようだ 【Getty Images】

 本人も言うように、遠藤のプレー時間の減少は16シーズンから始まっていた。昨季はルーキーながら21試合に出場し、うち15試合でスタメンだった。開幕戦のニューヨーク・レッドブルズ戦ではPKを奪う活躍を見せた。その後も2得点を挙げるなど、スタートは上々だった。しかし、フォーメーションの変更から徐々に役割を失い、9月以降は途中出場が3試合のみ。チームはMLSカップに進む躍進を見せたが、プレーオフでの出場はかなわなかった。

 こうして早々とプロの壁にぶつかったことが、20代前半でプロ生活を始めた若者にとって厳しい経験だったことは想像に難くない。その一方で、自分を見つめ直す機会にもなったのだろう。

 チーム内には多くのベテラン選手がそろっている。思い通りにならない日々の中で、実績ある選手からアドバイスを受けることも多く、なかでも主将のブラッドリー、エースのジョビンコとのやりとりは印象に残ったようだ。

「(ブラッドリーは)米国のレジェンド。そんな彼でも、ASローマ時代はダニエレ・デ・ロッシがいたおかげで試合に出れない時期があった。ベンチにいても信念を失わないことが大事で、自分がうまいんだという気持ちを持ち続けることの重要さを話してくれました。

『ツバサはネガティブな態度を表に出さないのがいい』と言ってくれました。セバ(ジョビンコ)ともよく話すんですけれど、ジムで何かやるよりも、ボールを人よりも多く触ることが絶対に大事だとずっと言われています。彼らのようなキャリアを築いている人からアドバイスがもらえるのは大きいです」

プロとしての人生は、まだ始まったばかり

まだ23歳、遠藤翼のプロサッカー選手としての人生は始まったばかりだ 【杉浦大介】

 もちろんプロサッカー選手である以上、フィールドで良いパフォーマンスが見せられないことは口惜しいに違いない。遠藤のように加入時の期待が大きかった選手であれば、なおさらだ。

 それでも、まだ23歳。MLSイースタン・カンファレンスで首位を争い、今年こそ初優勝を狙うチームの中で、得られるものも少なからずある。プロ入り直後だった1年前と比べ、遠藤の姿勢、口調から成長が感じられたのは気のせいではないだろう。

「ここがサッカー人生の終わりではない。今は監督に求められたことをやるのが大事。プロフェッショナルの仕事は、なりたいというだけでなれるものではない。毎日、ポジションに関係なく、自分に求められているものをどれだけやれるかを考えています。先を見据えて、やっていきたいです」

 その言葉どおり、遠藤のプロサッカー選手としての人生はまだ始まったばかりだ。今の厳しい時期を将来につなげられるかどうかは自分次第。選手層の厚いトロントFCで、苦しみ、悩み、学び、歓喜し、そして前に進み続けていることが、いつか貴重な経験として役に立つ日が必ず来るはずである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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