期待の星・遠藤翼の前に立ちはだかる壁 層の厚いトロントで出場機会を得られず

杉浦大介

ウイングバックとしてスタメンに抜てきされるも……

リーグ戦21試合を終えて、出場はわずか4試合と、遠藤(右)はなかなか出場機会を得られていない 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 2016年のMLS(メジャーリーグサッカー)スーパードラフトで、日本人史上初の1巡目指名(全体9位)を受けた期待の星――。そんな肩書き、加入当初の話題性を考えれば、今のトロントFCの遠藤翼は“苦しんでいる”と言うべきなのだろう。

 2年目の17年シーズンは、ここまでリーグ戦21試合中4試合(スタメンは3試合)に出場したのみで、1アシスト、0ゴール。“イタリアの至宝”と呼ばれたセバスチャン・ジョビンコ、米国代表のマイケル・ブラッドリー、ジョジー・アルティドールといった著名選手を擁するチーム内で、なかなか出場機会を得られていない。

 CONCACAFゴールドカップ(北中米カリブ海選手権)と重なったことで、アルティドールを含む一部の主力選手が不在だった7月19日(現地時間、以下同)。アウェーでのニューヨークシティFC戦は存在感を示すチャンスに思えた。しかし、2−2のドローで終わったこのゲームでも、結局は23歳の日本人プレーヤーの出番はなかった。

「プレシーズン中はずっとけがをしていて、いい状態が作れませんでした。それでもけが人が出たため、開幕して2戦目でウイングバックとしてスタメンに抜てきされたんです。ただ、僕のプレーが悪くて、うまくいきませんでした。以降はなかなかチャンスがなく、かなり苦労しています」

 19日の試合後、会場となったヤンキー・スタジアムのロッカールームで遠藤はここまでをそう振り返った。本人の言葉どおり、もともと攻撃的なプレイヤーである遠藤は今季からウイングバックに転向。オフェンスのタレントがそろったチーム内で役割を見いだすための措置だが、それは順調に進んでいるとは言えない。

「攻撃時は良いんですけれど、守備ではやはりディフェンスラインに入ることが多い。このレベルではまだ適応能力が足りていません。空中戦の面でも、監督の信頼が得られていないと感じます」

「毎日、前向きにやることを心掛けている」

得意のポジションでプレーすることができない状況にも遠藤は「前向きにやることを心掛けている」と言う(写真は16年シーズンのもの) 【Getty Images】

 そんな遠藤が本領を発揮したのは、5月31日に行われたカナダ選手権・準決勝セカンドレグのオタワFC戦だった。先発出場を果たしたこの日、前半終了間際に左サイドからのセンタリングに頭で合わせて鮮やかなゴールを奪うと、その後も随所に優れたプレーを見せ、4−0での勝利に大きく貢献した。

 トロントFCは決勝にも勝利し、カナダ選手権2連覇を達成。その栄誉に貴重なアクセントを添えられたのは、遠藤にとって今年最大の収穫だった。

「あの時は前半の途中からフォーメーションを変えて、右MFでやらせてもらいました。そこから自由になり、攻撃的にいくことができた。精神的にも開放されて、結果を残すことができました」

 その言葉からはプロ選手として、なじみのないポジションでプレーすることの難しさが伝わってくる。メリーランド大学時代に続き、クラブでも昨季はトップ下、ウイングだったアタッカーが、守備重視のポジションへコンバートされた。遠藤本人は口にしないが、得意とする位置で力を発揮できない悔しさはあるだろう。オタワ戦で力を見せたにもかかわらず、以降もプレー時間が増えないことにフラストレーションを感じていたとしても不思議はない。

 ただ、ニューヨークでの遠藤の姿を見る限り、精神的に追い詰められているようには見えなかった。現時点ではプレー時間が限られていても、言葉、姿勢は常に前向き。ハーフタイムには真っ先にフィールドに出て練習する姿からは、何とか前に進んでいきたいというポジティブな姿勢が見て取れた。

「練習ではかなりがむしゃらにやっています。若い選手は試合に出れていないとネガティブになって、悪循環に陥ってしまう。去年の終盤に出れなかった時には、自分も良い方向にいっていなかった。それを教訓にではないですけれど、今年は毎日ポジティブに。何が起きるか分からないので、毎日、前向きにやることを心掛けています」

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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