際が語るドルトレヒトでの充実のシーズン 2020年に向け、オランダと日本の架け橋に
「ホストタウン事業」に関する際の思い
2020年の東京五輪に向け、「ホストタウン事業」に関わる際の思いとは? 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
ずっと昔からやりたかったです。親が「国際的な人間になってほしい」ということで、名前に「際」という字をあてがってくれたので、昔から意識していました。やっとそういうことができる機会をもらえたので、素直にうれしいですね。ハーフの人はたくさんいると思うんですが、そういう機会がある人はそんなにたくさんいるわけではないと思うので、本当に良かったです。
――自分は五輪には出られなかったが、こういう形で貢献できる。
そうですね。五輪に選手として出ることはもうオーバーエージ以外ないわけじゃないですか。そういうことを考えると素直にうれしいです。小さい頃からオランダと日本の架け橋になって、間をつなげていく存在になりたいと思ってました。その第1弾として、やっと活動できるので、本当にうれしいですし、そういう機会を下さった郡山市には本当に感謝しかないです。
――どういうことをやっていきたいですか?
オランダがどういう国かを伝えるのが僕の役割だと思います。オランダがどういうところで、どういう人たちがいて、その人たちの性格だったり、場所だったり、そういったものを伝えることがベースになると思います。
いざオランダ人の選手が五輪で東京に来た時に、今日本にいる人たちが何ができるか、どういった接し方をすればいいのか――そこが僕が伝えられることだと思います。五輪というスポーツの祭典を前に、ネットに載っていないようなことを伝えることが、僕の役割だと思っています。
クラブはオプションを行使し、契約を延長
クラブとの契約延長を果たした際。夏の移籍市場ではさらなるステップアップを狙う 【中田徹】
確かにそうですね。一緒に住んでいるとヨリス(・クラマー)みたいに落ち着いている人もいますし、去年にいた(ユルーン・)ルム、今いるセレゾ(・ヒルゲン)みたいな、いつも陽気に音楽をかけて踊ったり楽しんでいる選手もいる。
それは別に人に迷惑をかけようとしているのではなく、単純に昔からの文化だったり血に流れているもの。たくさんの人種がオランダにはいるので、そこを伝えるのは面白いかもしれないです。オランダ人は陽気ですし、そこは日本の人にも受け入れてほしいと思います。
――ウィリアム・トロースト=エコングとも一緒に住んでいましたよね。彼は今、ベルギーのゲントで久保裕也選手とチームメートです。
そうそう! そういうこともありますよね。サッカーはつながっているので、そこが面白い。でも、まさか裕也くんとチームメートになるとは思いませんでした。うれしいことです。
――エコングはハールレム生まれのナイジェリア人ですよね?(編注:ナイジェリア人の父とオランダ人の母を持つハーフで、父の国籍であるナイジェリア代表を選択した)
はい。僕は14−15シーズンの最終戦、トゥエンテ戦でトップチームデビューを果たしたのですが、その何試合か前から「何で際がトップチームの試合に出ないのか」とチーム内で言われていました。やっとトゥエンテ戦で試合に出られると思って、僕は過緊張した状態でプレーしたのですが、右SBの僕の横でセンターバックとしてプレーしたのがエコングでした。
彼は試合前に「やっとトップチームだね。普通にやれば大丈夫だよ」と落ち着かせてくれて、試合後には「今日は良かったよ」と言ってくれた思い出があります。エコングはリオ五輪のナイジェリア代表にも選ばれていて「もしかしたら会うかもね」と話していたんですが、俺が選ばれなくて(苦笑)。(リオ五輪のグループステージ第1戦で)日本とナイジェリアが戦ったのを見て「ああ、もったいなかったな」と思いました。
――ドルトレヒトはオプションを行使し、際選手との契約を18年夏までに延長しました。
クラブがオプションを使いたいほど評価をしてくれているということで、選手として率直にうれしいです。そこ(契約延長)を目指して戦っている選手はたくさんいます。実際、僕も18歳でオランダにきた時の目標はそこでした。
――それでも夏の移籍市場ではステップアップを狙っていますか。
はい、もちろん。シーズン終盤、監督が「この時期に活躍すれば上にいけるぞ。君はここで終わっちゃいけない選手だ。もし良いチームから話があるんだったら移籍して、そこからちゃんとキャリアを作っていってほしい。もちろん、私は監督だから、君にはチームに残ってほしいんだけれどね」という話を僕にしてくれました。そこまで選手のキャリアを考えてくれる監督はそう多くないと思うんです。だから、ありがたいですね。