「まだ完成形ではない」13歳が世界に衝撃 張本智和、世界卓球ベスト8は通過点

月刊『卓球王国』

初の世界選手権はベスト8

今大会で台風の目となった張本智和。ベスト4進出はならなかったものの張本らしいプレーも見せた 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 6月4日に大会7日目を迎えた卓球の世界選手権・デュッセルドルフ大会。張本智和(JOCエリートアカデミー)、丹羽孝希(スヴェンソン)の2人が男子シングルス準々決勝に登場。今大会でセンセーショナルな世界戦デビューを果たし、台風の目となった張本は世界ランキング3位の許キン(中国)と対戦した。

 ベスト8入りを決め、「次の試合もフォアでもバックでも攻めて、カウンターも使い、自分らしい試合をしたい」と語った張本。この7日間ですっかり観客を魅了し、場内には「ハリモ〜ト!」の声援も響く。

 対戦する許キンは、4回戦(ベスト8決定戦)で林高遠との同士討ちを、最終ゲーム5−10から7本連取で逆転勝利と九死に一生を得る勝ち上がり。昨夏のリオデジャネイロ五輪で水谷隼(木下グループ)、4月のアジア選手権では丹羽と、日本選手に敗れるケースが目立っており、このまま敗戦が続けば、代表での地位も危うい。張本戦も、序盤から気合が入っていた。

 試合は、前陣でカウンターを狙う張本に対し、許キンは無理に強打せず、回転量を重視したドライブを打ち分けて張本のミスを誘う展開。サービスも回転を使い分けながらコースを散らし、張本に狙いを絞らせず、得意のチキータからの連打を封じた。一方の張本は1ゲームこそ奪い返したが、終始許キンの回転量のあるドライブに押される場面が目立ち、1−4で敗戦。初の世界選手権はベスト8で幕を閉じた。

 しかし、許キンを振り回してフォアドライブを打ち込むなど、張本らしいプレーも見せた。ゲームカウント2−1と許キンがリードして迎えた4ゲーム目、終盤に追い上げられた場面で許キンがタイムアウトを取り、きっちりゲームを奪うなど、中国は万全を期して張本を下しにかかってきたことは確か。許キンの気合いの入れようを見ても、中国の張本への警戒と、本気度が感じられた。

「記録より一枚のメダルがほしかった」

「勝つチャンスはあった」と悔しさをにじませた張本だが、史上最年少でのベスト8進出は世界を驚かせた 【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】

 初出場で史上最年少でのベスト8と強烈なインパクトを残した張本だが、敗戦後に口をついて出たのは「記録より一枚のメダルがほしかった」という悔恨の念。 

「勝つチャンスがあったので悔しいです。水谷さんに勝って、世界ランク3位の許キンに1ゲーム取ったので、あと2、3年したら勝てないことはない。中国に勝てる選手になりたいし、中国に届かないことは絶対ない。相手がどこの国でもひとりの選手として勝ちたい。
 今日は自分の80パーセントは出せた。ベスト8はうれしいけど、メダルとそれ以下じゃ全然違うので、やはり悔しい。(最年少)記録はうれしいけど、ここまで来たのでメダルを取りたかった。記録よりも一枚のメダルがほしかった」

 ベンチに入った倉嶋洋介・日本男子監督も、ベスト8という結果には満足していない。

「もっと良い勝負ができると思っていた。中国選手が相手だと何かやられるんじゃないかという思いを持って戦いすぎて、イージーミスがあった。それがなかったらリードできる展開になったかもしれない。
 僕の中で驚いているのは張本は完成形ではなく、40、50パーセントくらいなのに、これだけ世界に衝撃を与えるプレーができたこと。でも、まだ道半ば。チャンピオンに近づくにはまだ足りないことがいっぱいある」

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