ついに豪脚炸裂!アラジン一気差し安田V ハマれば強い個性派マイル王が誕生

スポーツナビ

ラスト50mの大逆転劇「届くと信じていました」

最内を逃げ粘るロゴタイプ(右)目掛けて、外からサトノアラジン(左から3頭目)が一気の追い込み! 【写真:中原義史】

 レースは昨年覇者ロゴタイプが、サトノアラジンよりさらに2つ外の16番ゲートから好発。そのまま先手を主張して、前半3ハロン33秒9のペースでレースは進んだ。この速い流れも、末脚にかけるサトノアラジンにとっては待ってましたと言わんばかりの展開。川田は道中をこう振り返っている。

「何よりもリズムを大事にして、サトノアラジンが能力を一番発揮できることを重きに考えていました。スムーズにいつでも外に出せる道を作ることもできましたし、4コーナーでは手応え抜群。本当に良いリズムで運ぶことができました」

 行く手をさえぎるものはなく、あとはパンパンに硬い緑のターフの上で、真一文字に自慢の末脚を爆発させるだけ。一方、最内では田辺ロゴタイプが粘りに粘り、ゴールまでもう100mを残すだけとなっていた。連覇達成だと、多くのファンは思ったに違いない。それでも川田は「届く」のだと、相棒の力を信じきっていたという。

「直線に入ってもスムーズに加速することができましたね。ロゴタイプをすぐに捕まえることはできなかったんですけど、届く、捕まえられると信じていました。だから、直線は気持ち良く乗せてもらうことができました」

「届くと信じていました」と川田 【写真:中原義史】

 ラスト50mを切ってからの大逆転劇。差し切った手応えはあったものの、内・外で離れていたためターフビジョンで確認したという川田。大きく映し出された自身と相棒の姿を目にし、「本当に、やっと勝つことができたんだと、ホッとしました」。ジョッキーにとってもコンビ結成1年にして、ついに成し遂げることができた最高の仕事。川田はこんな言葉でサトノアラジンをねぎらった。

「能力は高いんですが、難しいところがある馬。でも、今回はすべてが噛み合って、やっと届いてくれました。それもサトノアラジンがここまで頑張ってきた証だと思います」

今後も晴れの良馬場、枠順と注文がつくが……

秋のマイル路線も主役として 【写真:中原義史】

 つい先日、安田記念とヴィクトリアマイルの1〜3着馬には、1998年にタイキシャトルが制したことでも知られているフランス競馬の最高峰マイルレースの1つ、ジャックルマロワ賞(今年は8月13日開催)への優先出走権が付与され、レース登録料も免除されることが発表された。また、今年は香港からも2頭、マイル路線の主力が参戦したことで、海外メディアの目もいっそう安田記念に注がれたことだろう。

 この日取材に来ていた海外メディアからも、今後のレースプランに海外レースは入っているか、そんな質問が当然のように池江調教師に飛んだ。それに対するトレーナーの答えはこうだ。

「日本にもマイルチャンピオンシップという素晴らしいレースがありますからね。色んな選択肢を消さずに、じっくりと馬を観察して、オーナーと相談しながら決めていきたいですね。なので、ここではちょっと明言できません」

 サトノダイヤモンドの凱旋門賞挑戦はハッキリと明言している池江調教師だが、サトノアラジンについては夏から秋にかけてのローテーションは未定であることを強調。それはやはり調教師も騎手も認めているように、好走の条件が限られているからなのだろう。天気、馬場、枠順、展開と、いくつかの注文がついて全能力が発揮されるタイプだけに、確かにモーリスのような絶対的な強さを求めることはできないのかもしれない。しかし、だからこそ個性的であり、ツボにハマったときの強さは見ている者をこれ以上なくワクワクさせてくれる。この安田記念は、そんな個性派マイル王者が誕生した瞬間だった。

 インタビューの最後に、川田はこんなことをファンに向けてお願いしている。「ファンの皆さん、今後もサトノアラジンが出走するときは晴れることを願っていただければ」と。サトノアラジンのファンの皆さん、サトノアラジンの馬券で儲けたい皆さん、どうか、サトノアラジンのレース出走週には、てるてる坊主をお忘れなく!

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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