ついに豪脚炸裂!アラジン一気差し安田V ハマれば強い個性派マイル王が誕生
ラスト50mの大逆転劇「届くと信じていました」
最内を逃げ粘るロゴタイプ(右)目掛けて、外からサトノアラジン(左から3頭目)が一気の追い込み! 【写真:中原義史】
「何よりもリズムを大事にして、サトノアラジンが能力を一番発揮できることを重きに考えていました。スムーズにいつでも外に出せる道を作ることもできましたし、4コーナーでは手応え抜群。本当に良いリズムで運ぶことができました」
行く手をさえぎるものはなく、あとはパンパンに硬い緑のターフの上で、真一文字に自慢の末脚を爆発させるだけ。一方、最内では田辺ロゴタイプが粘りに粘り、ゴールまでもう100mを残すだけとなっていた。連覇達成だと、多くのファンは思ったに違いない。それでも川田は「届く」のだと、相棒の力を信じきっていたという。
「直線に入ってもスムーズに加速することができましたね。ロゴタイプをすぐに捕まえることはできなかったんですけど、届く、捕まえられると信じていました。だから、直線は気持ち良く乗せてもらうことができました」
「届くと信じていました」と川田 【写真:中原義史】
「能力は高いんですが、難しいところがある馬。でも、今回はすべてが噛み合って、やっと届いてくれました。それもサトノアラジンがここまで頑張ってきた証だと思います」
今後も晴れの良馬場、枠順と注文がつくが……
秋のマイル路線も主役として 【写真:中原義史】
この日取材に来ていた海外メディアからも、今後のレースプランに海外レースは入っているか、そんな質問が当然のように池江調教師に飛んだ。それに対するトレーナーの答えはこうだ。
「日本にもマイルチャンピオンシップという素晴らしいレースがありますからね。色んな選択肢を消さずに、じっくりと馬を観察して、オーナーと相談しながら決めていきたいですね。なので、ここではちょっと明言できません」
サトノダイヤモンドの凱旋門賞挑戦はハッキリと明言している池江調教師だが、サトノアラジンについては夏から秋にかけてのローテーションは未定であることを強調。それはやはり調教師も騎手も認めているように、好走の条件が限られているからなのだろう。天気、馬場、枠順、展開と、いくつかの注文がついて全能力が発揮されるタイプだけに、確かにモーリスのような絶対的な強さを求めることはできないのかもしれない。しかし、だからこそ個性的であり、ツボにハマったときの強さは見ている者をこれ以上なくワクワクさせてくれる。この安田記念は、そんな個性派マイル王者が誕生した瞬間だった。
インタビューの最後に、川田はこんなことをファンに向けてお願いしている。「ファンの皆さん、今後もサトノアラジンが出走するときは晴れることを願っていただければ」と。サトノアラジンのファンの皆さん、サトノアラジンの馬券で儲けたい皆さん、どうか、サトノアラジンのレース出走週には、てるてる坊主をお忘れなく!
(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)