日本のバスケに変化はあったのか Bリーグ初年度を振り返る 競技力編
競技力のバロメーターである日本代表
試合終了の直前まで勝負のゆくえが分からなかった決勝戦。今シーズン、日本バスケの競技力にはどのような変化があったのだろうか 【加藤よしお】
たとえばサッカー。1993年の「Jリーグ」の発足により、日本のサッカーを取り巻く環境は急激に変化した。チームを支える企業・クラブのあり方、選手たちのパフォーマンス(ピッチの外も含め)、見る側(ファン・サポーター)の高揚感など、それまで存在したプロ野球とはまた違ったインパクトがあった。サッカーには五輪と並ぶ、いやそれ以上ともいえる価値や権威がある「ワールドカップ(W杯)」というとてつもないビッグイベントがある。かつてはまさに「夢の大舞台」であり、何とか出場したいとサッカー関係者や多くのファン・サポーターが願ったものだ。
そのJリーグが開幕して5年、98年にサッカー日本代表はW杯フランス大会への出場を果たした。以降、連続出場を続け、ベスト16という快挙を二度達成。間違いなく「競技力」が上がったと、誰もが確信している。
だとすれば、バスケットボールもBリーグ発足から5年、2021年にはW杯や五輪出場を……と言いたいところだが、それでは間に合わない。20年に東京五輪が控え、開催国でありながら特権ともいえる出場枠は約束されておらず、もし予選からの出場となれば、その道はなお厳しいのが現実だ。出場国枠を付与されるためには、19年のFIBA W杯(世界選手権から変更)に出場しなければならず、できればそこで決勝トーナメントに勝ち上がりたいところだ。
Bリーグ閉幕直後に開催される「東アジア選手権大会(兼FIBA ASIAカップ2017 東アジア地区予選)」(6/3〜7@長野市・ホワイトリング)から、FIBA W杯2019のアジア地区予選がスタートする。男子日本代表は新たなチャレンジに挑むことになる。
試合数増加がもたらしたもの
Bリーグはレギュラーシーズンが全60試合と、以前のNBLやbjリーグと比べて増加した 【加藤よしお】
まずBリーグは、レギュラーシーズンの試合数が60試合に増えた。以前のNBLやbjリーグと比べて、シーズンを戦い抜く体力が要求される。それぞれ違いはあるだろうが、夏場あるいは春先から体づくりを始め、開幕後はほぼ毎週2試合を消化していく。タフな試合をこなしながら好コンディションを維持しなければならならず、クラブによっては手厚くスタッフを配し、選手の体力強化や体調管理に注意を払っていた。選手たちも、最高のパフォーマンスでファン・ブースターに応えようとフィジカルの強化に取り組んだ。これはBリーグとなり、選手もクラブも、これまで以上にコートでの成果に集中すべき態勢が整ったからだと言えそうだ。
次に「技(テクニック、スキルと読み替えて)」はどうだろうか? 年々、選手のスキルは向上していると耳にすることが多い。これはBリーグに限らず、アンダーカテゴリーの方がより顕著なのかもしれない。運動能力の高い選手が増え、NBAやヨーロッパなど、超一流のプレーヤーのパフォーマンスを目にすることも容易だ。最先端の戦術もすぐに取り入れられ、1on1の能力やピック&ロールのバリエーションなど、成長の度合いは以前と比べればケタ違い。千葉ジェッツの富樫勇樹に代表されるように、たとえ身長が低くても自分の持ち味や強みを理解し、存分にその力を発揮できる選手が増えた。
チームプレーもシーズンが進むにつれて精度が増した。長丁場を戦う中で適応力が備わっていないチームは上位進出できない、というのがBリーグだった。これは個人のスキルのみではなく、チームとしていかに戦うかを、コーチ・スタッフと選手たちが共有したからこそで、その点でもBリーグ全体の競技力は上がったという証しになるだろう。