レアル、5年ぶりリーグ制覇の3つの要因 全試合得点の歴史的快挙も達成

質の高いバックアッパーがいなかったバルセロナ

セルジ・ロベルト(20)を右SBにコンバートしてしのいできたバルセロナ。アウベスの穴は埋められず 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 レアル・マドリーは主力の誰が欠けても同レベル、もしくはそれに近いレベルの代役で補うことができたが、バルセロナには質の高いバックアッパーがいなかった。それは経済的な問題ではなく、それぞれのクラブの補強方針が生み出した違いだと言える。

 例えばSBだ。カルバハルとマルセロが両サイドを制したレアル・マドリーとは対照的に、バルセロナは16年夏に去ったダニエウ・アウベスの代役を見つけることができなかった。ドグラス・ペレイラ(16年シーズンからスポルティング・ヒホンに在籍)は言うまでもなく、アレイクス・ビダルの獲得も的中したとは言い難い。

 にもかかわらず、アウベスと同時期にアドリアーノとモントーヤを放出し、セルジ・ロベルトをコンバートすることで急場をしのぎながら、時にマスチェラーノを起用したり、3バックにシステムを変えたりしながら右SBの不在を補ってきた。それはレアル・マドリーとはあまりにも違いすぎる状況である。

ロッカールームをコントロールしたジダン

ジダンは扱い難いロッカールームをシンプルなやり方でコントロール。その落ち着き払った佇まいは大きな役割を果たした 【写真:ロイター/アフロ】

 両チームの差を生み出したもう1つの要因は監督だ。ジダンは扱い難いロッカールームをシンプルなやり方でコントロールしつつ、昨季に良い結果をもたらしたシステムを継続しながら戦ってきた。

 一方、27日の国王杯決勝を最後に退任するルイス・エンリケは、質の高いプレーを維持することができず、前線の南米トリオ(リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマール)任せの縦に速い攻撃ばかりを繰り返すことで中盤の構成力を失ってきた。そのためアンドレス・イニエスタをはじめ多くの選手たちが不安定なプレーを繰り返すようになり、特に右サイドは本職のSBが不在の上、イバン・ラキティッチも不安定なプレーに終始したことでウイークポイントとなっていた。

 バルセロナは終了直前に決めた決勝点によりサンティアゴ・ベルナベウの“エル・クラシコ”(伝統の一戦)を制し、勝ち点差を縮めるだけでなく直接対決の戦績でもレアル・マドリーを上回り、最終節まで逆転優勝への望みをつないだ。それでも“ロス・ブランコス”(レアル・マドリーの愛称)がライバルを蹴散らしていくさまはバルセロナのそれよりも力強さに満ち、ついには全試合得点という歴史的快挙まで成し遂げた。その恐るべき破壊力を武器に、レアル・マドリーは前人未到のCL連覇にまで手をかけている。

 アトレティコ・マドリーについても振り返りたい。タイトル争いには食い込めなかったものの、5年前から維持してきたリーガ・エスパニョーラ第3のクラブとしての地位を保ったことは大いに評価すべきだ。何より近年チームが右肩上がりに成長してきた最大の立役者であるディエゴ・シメオネが続投を明言したことは、来季から新スタジアムに本拠地を移行するクラブにとって最大の朗報となった。

 セビージャの健闘にも触れておくべきだろう。タイトルを獲得することはできなかったが、アルゼンチン代表監督への就任がほぼ決まったホルヘ・サンパオリは流動的に形を変える複雑怪奇なシステムを用い、大胆なプレースタイルを貫きながら首位争いに割って入った。とりわけシーズン前半は素晴らしいスペクタクルを提供してくれた。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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