【ボクシング】不幸なジャッジに栄冠を逃がした村田 不明瞭な判定基準は不信の原因に

宮崎正博

明白なパワーの違いはあったが……

WBA世界ミドル級王座決定戦は村田諒太(右)が圧倒したようにも見えたが、判定はエンダム(左)勝利と下された 【写真:アフロスポーツ】

「プロボクシング黄金時代を旗手に」と大きな期待をかけられた村田諒太(帝拳)が初の世界タイトル挑戦で敗れた。5月20日、東京・有明コロシアムで行われたWBA(世界ボクシング協会)世界ミドル級王座決定戦12回戦は、ランク2位の村田がダウンを奪うなど、1位のアッサン・エンダム(フランス/カメルーン出身)を圧倒したかに見えた。しかし、12ラウンズ終了後に出された判定は1−2というジャッジ。エンダム本人とその陣営を除くなら、呆然とするしかない結末だった。

 村田は「しっかりと圧力をかけ、右のパンチを重点的に使う作戦どおりに戦えた」という。パンチの数こそ少なかったが、堅実な足取りで前進しながらエンダムを追い詰めていく。村田のプレッシャーの強さには定評がある。軽々と飛翔するフットワークが持ち味のエンダムもなかなか動けない。真正面から村田とやり合うはめになる。こうなればパワーの違いが明白だ。

 3ラウンド以降、エンダムは懸命に手数を出すのだが、村田の腕の上に化粧パフをたたくような代物に過ぎない。一方、村田のパンチは同じガードの上をとらえても、上体までねじ切るように強烈だ。たとえ、単発であっても、効果という点では大違いである。

2者が9ラウンド以降すべてエンダム有利とジャッジ

村田の右ストレートは何度もエンダムをのけぞらせたが…… 【赤坂直人/スポーツナビ】

 ハイライトは4ラウンド。右を強振したエンダムに、村田は思いきり右を合わせる。アフリカ系フランス人は前向きに崩れ、頭頂部をマットにこすりつける痛烈なダウン。この日の前までの37戦で喫した2敗(35勝21KO)は4度倒され、さらに6度倒されても粘り抜いての判定によるもの。そんなエンダムはすぐに立ち上がったが、ダメージの色はありありだった。その後も村田が風を巻いて飛ばす右、あるいは激しくたたくボディブローに、何度もはじき飛ばされ、ふらつき、体をへし折られた。

 9ラウンド以降、エンダムは力のないジャブで距離をとり、ときおり左右のパンチをまとめるが、それもむなしく村田のガードに阻まれた。相手の攻め終わりを待って打ち込む村田の強打ばかりが目を引いたもの。それでもエンダムの勝利が結果として導き出される。ジャッジのうち2者はなんとこの9ラウンド以降、全ラウンドをエンダムの有利としていた。

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著者プロフィール

山口県出身。少年期から熱烈なボクシングファンとなる。日本エディタースクールに学んだ後、1984年にベースボール・マガジン社入社、待望のボクシング・マガジン編集部に配属される。1996年にフリーに転じ、ボクシングはもとより、バドミントン、ボウリング、アイスホッケー、柔道などで人物中心の連載を持ったほか、野球、サッカー、格闘技、夏冬のオリンピック競技とさまざまスポーツ・ジャンルで取材、執筆。2005年、嘱託としてボクシング・マガジンに復帰。07年、編集長を経て再びフリーになる

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