牝馬戦線に新星アドマイヤリード現る 独壇場ルメール600勝からとどめ1日9連対
最後の爆発力を生んだ名手の我慢
ルメールはこの日、1日9連対のJRAタイ記録に加えて通算600勝も達成した 【スポーツナビ】
「アドマイヤリードは最後のスピードがとても素晴らしいけど、それはとても短い距離しか出ません。だから、我慢して我慢して、残り200メートルを切るまで我慢したんです」
使える末脚が短い分、追い出しが早すぎてはもちろんダメだし、遅すぎてもダメ。あのゴチャついた馬群の中をさばきつつ、冷静にドンピシャの追い出しタイミングを計っていたルメールの手綱さばきは、さすがとしか言いようがない。
そんな名手の手綱が冴え渡ったのは何もヴィクトリアマイルだけではなかった。この日、ルメールは東京競馬場で合計11レースに騎乗し、朝イチの第1レースでJRA通算600勝達成からスタートし、とどめとばかりに最終12Rも勝って4勝2着5回の1日9連対。これは武豊、横山典弘、藤田伸二、岩田康誠にならぶJRA最多タイ記録になる。まさに今日は“ルメール・デー”だったというわけだ。
牝馬戦線さらに熱く
アドマイヤリードが新女王としてこのまま牝馬戦線の先頭を走るのか、それとも―― 【スポーツナビ】
「この後は馬の状態を見てからになると思いますが、オーナーサイドとも相談しながら、次の目標を決めたい」
須貝調教師は次走に関して具体的なレースは挙げなかったものの、「女の子たちとの戦いには顔を出していこうと思いますので」と付け加えているあたり、秋は距離を伸ばしてエリザベス女王杯が目標になりそうだ。
改めてヴィクトリアマイルの全着順を見ると、1着から3着まで4歳馬が独占し、5着もまた4歳馬だった。逆に上位人気を独占したミッキークイーン、ルージュバック、レッツゴードンキの5歳馬勢が大敗したわけだが、あまりに走らなさすぎた印象もあるため、この1戦だけでは世代交代とは言いづらい。だが、もしかしたらこのヴィクトリアマイルが牝馬戦線の流れを大きく変える分岐点になるかもしれない。それだけに今後は世代間闘争の意味合いも大きくなるだろうから、決着戦となる秋は一層の楽しみが増えそうだ。
名前どおりアドマイヤリードがこのまま先頭を走り続けるのか、それとも5歳馬の逆襲があるのか、はたまたレベルが高いと評判の3歳馬がさらにもうひとつ世代交代を進めてしまうのか――古馬王道路線だけではなく、2017年は牝馬の戦いも熱い。
(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)